表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界リサイクル生活! 〜人魚と兎とエルフのドタバタシェアハウス〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/14

EP 1

期間工が終わってドアを開けたら、ジャージ姿の女神(?)にケツを蹴り飛ばされた件


「……よしっ。大台、突破だな」

某大手自動車工場。半年間の期間工(フルタイム・夜勤あり)の契約を満了した高木優也(25歳)は、寮のベッドでスマホの銀行アプリを見つめ、ニヤリと口角を上げた。

預金残高、1000万円。

極限まで無駄遣いを削り、ひたすらライン作業と筋トレに明け暮れた結晶だ。

「今度は中南米辺りを攻めるか。本場のブラジリアン柔術の道場に道場破り……いや、出稽古に行って手合わせしたいし。シュラスコも腹いっぱい食いてぇな。楽しみだ」

高校柔道で全国ベスト4。その後、地下格闘技やMMA(総合格闘技)を渡り歩き、稼いだ金で世界中を旅する。それが優也のライフスタイルだった。

荷物をまとめ、使い古した巨大なバックパックを背負う。

忘れ物はない。完璧な退寮だ。

「世話になったな、四畳半。じゃあ、次の国へ行くか」

ガチャリ、と。

優也は、寮の鉄扉を開けた。

パァァァァァァッ……!

「……は?」

視界を覆ったのは、廊下の蛍光灯ではなく、謎の眩い光。

そして光が収まった後、優也の目の前に広がっていたのは、南米の青空でも、見慣れた寮の廊下でもなかった。

六畳間の畳。そして、コタツである。

「渋いっての! どんだけ金溶かせばSSR出るのよぉぉっ! クソ運営がっ!」

コタツの上には、飲み散らかされた缶チューハイの空き缶と、吸い殻が山盛りになった灰皿ピアニッシモ・メンソール

そして、くたびれたえんじ色の「芋ジャージ」を着た女が、スマホの画面を鬼の形相でタップし続けていた。

「な……ここは何処だ? 俺は寮の部屋を出た筈だが」

「あ? あー……」

女は面倒くさそうにスマホから目を離し、優也をジロリと見た。そして、コタツからモソモソと這い出し、わざとらしい咳払いを一つ。

「よくぞ参りました、迷える魂よ。私の名は女神ルチアナ。私は見て居ました……貴方が、暴走するトラックに轢かれそうになった哀れな猫を、身を挺して助けるその勇姿を……!」

「はぁ!?」

優也はバックパックを床にドスッと降ろし、眉間を寄せて吠えた。

「猫なんか助けてねぇよ!? そもそも寮の3階だぞ!? てか、あんた今ずっとソシャゲしてて俺のこと全然見てなかっただろ!」

「チッ……」

女神(?)は、あからさまに舌打ちをした。

「面倒くさいわねぇ……『トラックと猫』はお約束なの! 異世界転生の絶対ルールなんだから、ガタガタ言わずに受け入れなさいよ!」

「異世界転生……? おい、ちょっと待て。俺は今から南米に行ってシュラスコを――」

「はいはい、時間が惜しいからサクサク行くわよ。じゃあこれ、回して」

ルチアナがコタツの下から取り出したのは、商店街の福引きでよく見る「ガラポン(抽選器)」だった。

「な、何なんだよこれは」

「あんたの初期スキルを決める神聖な儀式。ほら、早く」

状況は全く読めないが、この空間が明らかに日本の物理法則から外れていることだけは、歴戦の勘が告げている。優也はため息をつき、ガラポンの取っ手を回した。

カラカラカラ……ポトッ。

出てきたのは、くすんだ木色の玉。

「んー、どれどれ。……あ、ハズレね。『リサイクルマスター』」

「……リサイクルマスター?」

「地球のゴミをポイントで出せるスキル。超エコロジーじゃん、良かったわね。はい! じゃ、そういうことで!」

「え? いや、ちょっと待て、ゴミってどういう――」

ルチアナはズカズカと優也の背後に回り込んだ。

「はいはい、後ろ向いて。最後の大事な『門出の儀式』があるんだから」

「儀式? こうか?」

優也が素直に後ろを向いた、その瞬間。

格闘家の本能が、背後からの強烈な殺気(?)を感知した。

――が、避ける間もなかった。

ドゴォォォォンッ!!

「おッッッッッ!?」

凄まじい衝撃が、優也の臀部ケツを襲った。

ルチアナの履いていた「イボイボ付き健康サンダル」による、容赦のないフルスイングの前蹴りである。

「では高木優也さん。アナステシア世界に行ってらっしゃい。よい異世界ライフを~」

蹴り飛ばされた優也の目の前の空間が、ぐにゃりと歪み、巨大なブラックホールのような穴が開く。

「おいいいいいいいいっ! ふざけんな、俺の1000万円とシュラスコォォォォォッ!!」

穴に吸い込まれ、真っ逆さまに落ちていく優也。

最後に見たのは、再びコタツに潜り込み、スマホのガチャ画面に戻っていくジャージ姿の女神の、最高にだらしない後ろ姿だった。

「バイバ~イ。あーあ、また天井かぁ……」

こうして、各種国家資格とMMAの技術を併せ持つガテン系男子・高木優也は、地球のゴミ(チート)を武器に、剣と魔法と闘気の世界へと蹴り落とされたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ