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第一部 第七章 三人の怪物


ロンドとの修行が始まって、二週間。


地獄だった。


毎日。


走る。


振る。


殴られる。


倒れる。


起きる。


また殴られる。


正直、ダンジョンの方が楽だと思う日もある。


だが。


確実に。


体が、変わってきている。


剣が、重くない。


足が、速い。


息が、続く。


「……成長、してるな」


自分で、分かる。



ある日。


ロンドが言った。


「今日は、他の連中にも会わせる」


「他?」


「俺と同じ、死に損ないどもだ」


嫌な予感しかしない。



街外れの、古い屋敷。


半壊。


壁に穴。


屋根が落ちている。


こんな場所に、人が?


中に入る。


まず。


ばあさん。


小柄。


背筋は、まっすぐ。


穏やかな目。


その奥に、底知れぬ闇。


次。


でかい老人。


上半身裸。


筋肉の塊。


岩みたい。


最後。


酒瓶を抱えた、よぼよぼ爺さん。


……全員、やばそう。


ロンドが言う。


「紹介する」


「元魔導王、ユーリ」


ばあさんが、軽く手を振る。


「よろしくね」


「元拳聖、バックス」


でかい爺さんが、歯をむき出して笑う。


「殴るのは、得意だぞ」


「俺は、ロンド」


「元剣帝だ」


心臓が、限界。


三人とも。


伝説。


頭が、追いつかない。



ユーリが、俺を見る。


「あなた、面白い匂いがするわ」


「匂い……?」


「スキル構造が、普通じゃない」


ロンドが言う。


「《マルチ》だ」


ユーリの目が、細くなる。


「やっぱり」


「厄介なスキルね」


胸が、ざわつく。


「厄介、ですか?」


「世界に嫌われやすい、って意味」


笑えない。



バックスが、俺の前に立つ。


「殴り合おう」


「え?」


次の瞬間。


腹に、拳。


空気が、抜ける。


地面に、転がる。


「……いきなりですか!」


「実戦だ」


鬼。


この人も、鬼。



殴られる。


避ける。


当たる。


転ぶ。


立つ。


繰り返し。


途中から、記憶があいまい。


気づくと。


夕方。


体中、痣。


ユーリが言う。


「死んでないわね」


「合格」


何が。


何の。



ロンドが、腕を組む。


「今日から」


「三人で、お前を見る」


「光栄だろ」


光栄すぎて、泣きたい。



夜。


一人。


震える。


怖い。


だが。


同時に。


胸が、熱い。


こんなチャンス。


二度とない。



ユーリの言葉。


「あなた」


「普通に強くなったら、途中で止まる」


「でも」


「管理者級に、近づく」


意味が、分からない。


だが。


覚えておく。



俺は、拳を握る。


「……怪物になるつもりはない」


「冒険者になります」


ロンドが笑う。


「上等だ」


三人の怪物。


俺の地獄は。


さらに、深くなる。



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