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第一部 第五章 最初の壁


ラド地下洞に通い始めて、十日。


スライム。


ゴブリン。


コボルト。


もう、珍しくない。


倒せる。


勝てる。


だが。


――楽ではない。


毎回、命懸けだ。


傷も、増えた。


浅いものばかりだが、体中にある。


それでも、通う。


なぜなら。


それしか、道がないからだ。



今日も、ラド地下洞。


いつもより、奥へ。


松明の光が、届かない場所。


空気が、重い。


嫌な予感。


足音。


低い唸り声。


見えた。


オーク。


大きい。


ゴブリンの倍以上。


筋肉の塊。


手には、棍棒。


「……無理だろ」


頭が、そう言う。


今の俺じゃ、勝てない。


逃げる。


それが、正解。


だが。


体が、動かない。


理由は、単純だ。


逃げたら。


また、最底辺に戻る気がした。


《マルチ》起動。


【職種:見習い剣士】


構える。


オークが、突進。


地面が、揺れる。


横へ跳ぶ。


風圧。


棍棒が、壁を砕く。


破片が、飛ぶ。


怖い。


足が、震える。


「くそっ!」


背中を斬る。


刃が、止まる。


硬い。


斬れていない。


オークが、振り向く。


殴られる。


吹き飛ぶ。


壁に、叩きつけられる。


息が、詰まる。


視界が、暗くなる。


死ぬ。


本気で、そう思った。



床に転がる。


体が、動かない。


オークが、近づく。


棍棒を、振り上げる。


そのとき。


頭の奥が、熱くなる。


――条件達成。


――サブ職種解放。


――【見習い魔術師】取得。


「……え?」


同時に。


手のひらに、熱。


無意識に、突き出す。


「……火球!」


小さな火の塊。


オークの顔に、当たる。


燃える。


オークが、叫ぶ。


ひるむ。


「……今だ!」


立ち上がる。


背後へ回る。


全力で、首を斬る。


刃が、通る。


オークが、倒れる。


動かない。



その場に、座り込む。


息が、できない。


心臓が、うるさい。


生きてる。


ギリギリだ。


震える手を見る。


《マルチ》。


剣だけじゃない。


魔法も、使える。


つまり。


可能性は、一つじゃない。



帰還。


ギルド。


マリンさんが、心配そうに見る。


「大丈夫ですか?」


「……はい」


オーク素材を出す。


周囲が、ざわつく。


「Fランクが?」


「嘘だろ」


聞こえる。


だが。


気にならない。


今は。


生きているだけで、十分だ。



夜。


ベッド。


体中が、痛い。


でも。


笑う。


「……壁、越えたな」


小さな声。


最初の壁。


だが。


確かに。


俺は、進んでいる。



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