第一部 第四章 小さな成長
翌朝。
体が、悲鳴を上げていた。
筋肉痛。
全身が、重い。
だが。
起き上がる。
昨日、ダンジョンへ行った。
生きて帰ってきた。
それだけで、昨日の俺より前にいる。
顔を洗い、深呼吸。
「今日も、行くか」
呟く。
誰に聞かせるでもない。
自分に言い聞かせる。
ギルド。
掲示板の前。
昨日と同じ依頼。
【初心者向けダンジョン:ラド地下洞】
紙を剥がす。
マリンさんが、微笑む。
「慣れてきましたか?」
「……少しだけ」
「無理は、しないでくださいね」
その言葉が、ありがたい。
ラド地下洞。
昨日より、怖くない。
松明に火をつける手も、震えない。
スライム。
倒す。
二体。
三体。
問題ない。
ゴブリン。
距離を取る。
誘い出す。
一体ずつ。
冷静。
昨日より、明らかに落ち着いている。
戦いが終わる。
息は荒い。
だが。
パニックにはならない。
「……いける」
小さく、呟く。
奥。
分かれ道。
昨日は、怖くて行かなかった。
今日は。
行く。
左。
通路が、狭い。
物音。
コボルト。
犬のような魔物。
ゴブリンより、少し強い。
二体。
「……多い」
逃げるか。
迷う。
だが。
逃げ癖は、つけたくない。
《マルチ》起動。
【職種:見習い剣士】
構える。
一体目が、飛びかかる。
横に転がる。
背中を斬る。
二体目。
距離を取る。
石を投げる。
注意を逸らす。
近づいた瞬間、斬る。
倒れる。
膝に手をつく。
息が、苦しい。
でも。
勝った。
一対一じゃない。
二対一で。
俺が。
洞窟奥。
小部屋。
宝箱。
中身。
鉄の短剣。
俺のナイフより、ずっといい。
握る。
バランスがいい。
胸が、熱くなる。
帰還。
ギルド。
素材を提出。
マリンさんが、目を見開く。
「コボルト素材……?」
「……はい」
「すごいですね」
すごい。
その言葉が、胸に刺さる。
悪い意味じゃない。
いい意味で。
安宿。
短剣を、何度も眺める。
布で拭く。
大事にする。
「……強くなってる」
ほんの少し。
でも。
確実に。
夜。
裏通り。
素振り。
昨日より、速い。
安定している。
汗が流れる。
だが、止めない。
止まる理由が、ない。
ベッドに倒れ込む。
天井を見る。
「……もっと、強くなる」
小さな成長。
だが。
積み重ねれば。
きっと。




