第二部 第八章 カインの覚醒
異常進化ダンジョン発見から、二日。
拠点は、緊張状態が続いていた。
応援要請は、すでに王都へ送られている。
だが。
来るまでに、時間がかかる。
その間。
ダンジョンは、成長する。
悪い予感しかしない。
俺は。
一人で、森にいた。
無謀なのは、分かっている。
だが。
何もしないで待つ方が、怖い。
ロンドの言葉。
「逃げるな」
頭に、焼き付いている。
魔物。
昨日見た、黒い四足獣。
三体。
深呼吸。
《マルチ》起動。
剣士。
魔術師。
同時。
突っ込む。
一体目。
首。
落とす。
二体目。
火球。
怯む。
斬る。
三体目。
突進。
避けきれない。
肩に、牙。
血。
痛い。
それでも。
止まらない。
斬る。
倒す。
膝をつく。
血が、流れる。
視界が、揺れる。
「……くそ」
そのとき。
頭の奥で、音。
――条件達成。
――スキル進化。
――《マルチ》が、変質。
――【マルチ:統合型】へ移行。
息が、止まる。
何だ、それ。
情報が、流れ込む。
複数職種のスキルを。
同時使用。
切り替え不要。
制限あり。
だが。
今までとは、次元が違う。
無意識。
剣に、炎。
体に、強化。
視界が、鮮明。
「……これが」
一歩。
地面が、砕ける。
速い。
自分じゃないみたいだ。
別の魔物が、来る。
五体。
問題ない。
剣。
魔法。
一体ずつ。
確実。
短時間で、殲滅。
息も、乱れない。
終わる。
静か。
俺は、手を見る。
震えている。
怖い。
だが。
嬉しい。
拠点へ戻る。
ランドが、目を見開く。
「お前……何した」
分からない。
正直に言う。
「……少し、変わりました」
バルトが、俺を見る。
無言。
だが。
空気が、違う。
ミレーヌ。
近づく。
「……深く、なりましたね」
「管理者との距離が」
胸が、締め付けられる。
「それでも」
「あなたは、あなたです」
そう言ってくれた。
俺は、拳を握る。
この力。
使う。
守るために。




