第二部 第三章 聖女と管理者の影
研修二日目。
朝。
訓練場に行くと。
すでに、ミレーヌがいた。
一人で。
祈るように、目を閉じている。
近寄りがたい空気。
だが。
彼女が、目を開ける。
俺と、目が合う。
少し、驚いた顔。
そして。
微笑む。
「おはようございます」
「……おはよう」
声が、少し震える。
聖女と、挨拶。
現実感がない。
バルトが来る。
「今日は、チーム訓練だ」
「五人一組」
組み分け。
俺。
トム。
リナ。
ランド。
そして。
ミレーヌ。
……豪華すぎる。
課題。
模擬ダンジョン攻略。
人工ダンジョン。
中で、魔物が湧く仕組み。
危険度は、D相当。
開始。
先頭。
ランド。
後方。
リナとミレーヌ。
俺は、中央。
指示役。
トムは、前衛補助。
進む。
ゴブリン。
問題なし。
ミレーヌが、小声で祈る。
淡い光。
傷が、消える。
回復が、速い。
異常。
奥。
魔物の気配。
嫌な感じ。
部屋に入る。
黒い霧。
影が、形を取る。
見たことがない。
「……何だ、これ」
ランドが、舌打ち。
バルトの想定外だ。
戦闘。
影は、実体が薄い。
剣が、通りにくい。
魔法は、効く。
《マルチ》。
魔術師。
火球。
当たる。
ダメージあり。
「魔法主体で!」
叫ぶ。
ランドも、魔法剣。
トム、後退。
ミレーヌが祈る。
光が、影に当たる。
影が、悲鳴を上げる。
聖属性。
特効。
倒す。
静寂。
ミレーヌが、青ざめる。
「……今のは」
「普通の魔物では、ありません」
「管理者に近い存在が、関わっています」
空気が、凍る。
管理者。
ロンドの言葉を思い出す。
その夜。
ミレーヌが、俺を呼ぶ。
人のいない廊下。
「カインさん」
「あなた」
「似た匂いがします」
背筋が、冷える。
「私と」
「影と」
「そして……管理者と」
言葉が、出ない。
「怖がらせたいわけでは、ありません」
「でも」
「あなたは、普通の冒険者では、終わりません」
胸が、苦しい。
「……冒険者で、いたいです」
ミレーヌは、微笑む。
「だからこそ、ですよ」
俺は。
空を見る。
星が、遠い。
だが。
逃げない。




