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第三話 侵入者

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称・事件等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

夜、神社には蓮と巫女の凪が近々行われる予定の神社の祭りの準備をしていた。


「蓮、何か、来るわ」


 巫女装束の凪が、神楽鈴を握りしめる。彼女の皮膚は、侵入者の邪悪な殺意を敏感に察知していた。

 闇の中から現れたのは、三人の男たちだった。彼らはタクティカルウェアに身を包み、手には特殊樹脂製の警棒を握っている。


「神代の若旦那。悪いが、奥にある『太刀掛秘伝書』を譲ってもらう。」


 先頭の男が、凄まじい踏み込みで間合いを詰めた。

 その動きには「天地人」の理が含まれていた。だが、それは神への敬意も和の精神もない、ただ物理的に最短距離を、最大出力でぶつけるための暴力の塊。


「……っ!」


 蓮の身体が反射的に動いた。

 脳が考えるよりも早く、細胞に刻まれた記憶が「四海九天」の構えを形作る。

 男の警棒が、蓮の側頭部を目がけて振り下ろされた。


 蓮は相手の腕に、自身の掌をそっと添えた。力で押し返すのではない。相手の振り下ろす慣性に、ほんの少しの回転を加える。タチカキの清流という技の一つだった。

 暴風のような一撃が、蓮の肌を滑り、そのまま地面へと吸い込まれていく。男は自分の放った力の行き場を失い、前のめりに崩れた。


「何っ!?」


 信じられないといった表情の男の懐に、蓮の身体が滑り込む。


 父の教えが頭をよぎる。だが、目の前の敵を止めなければ凪が、社が、日常が壊される。

 蓮の拳が、迷いながらも相手の胸元に吸い寄せられた。重心が大地から拳へと一気に突き抜ける。

 パシッ、と乾いた音がした。

 男の身体が木の葉のように舞い、背後の石灯籠に叩きつけられた。男は悲鳴すら上げられず、白目を剥いて崩れ落ちる。タチカキの雷鳴という技だった。


 静寂が戻った。

 自分の拳を見つめ、蓮は激しく震えた。

 

「……これが、タチカキなのか?」


 暗闇から、パチパチと乾いた拍手が聞こえ、鳥居に、一人の男が立っていた。月光を背に受けたその男、九条凱が、嘲笑を浮かべていた。


「いい一撃だ、蓮。だが今のは『雷鳴』じゃない。ただの、震える震動だ」


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