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深紅の飢餓

変化を遂げた今、レイモンドは心身ともに最高の状態にあると感じていた。下顎を失い、舌の一部をだらりと垂らしながら巨獣が左右に身を悶える様を観察していると、彼の腕には一層の力が漲ってくるのを感じた。獣がよろめくたび、無差別に水を撒き散らすホースのように血が床や壁に飛び散った。


やがて、その狂乱の動きは鈍り、静けさを取り戻し始めた。レイモンドがその分厚い首をいかにして断ち切るか、次の一手を練っている間に、獣はぴたりと動きを止めた。そして、その姿はどこか変貌していた。以前に彼が見た、ゴリラを彷彿とさせる前傾姿勢と、攻撃を予測させる特徴的な肩の動きはもうない。今やその肩は力を抜き、完全に直立していた。そして、レイモンドが待ち構えていた予備動作の兆候もなく、突如として一撃が放たれた。


「おい!」その声にレイモンドが振り返ると、入り口の一部がゾンビの死体の山で塞がれているのが見えた。後続のゾンビたちがわざわざその山を乗り越えようと時間を浪費し、格好の的となっている。カルビンが、彼とレイモンドと共に生き残ったもう一人のクルーメンバーに向かって叫ぶと、その男はゾンビたちに銃弾を浴びせていた。「なぜ奴の口を狙ってとどめを刺さなかった!」


「すまない」とレイモンドは応じた。「いつ動きが速くなるか、見極めが難しいんだ」


レイモンドがそう口にした瞬間、背後からの一撃が彼を壁へと叩きつけた。その衝撃は、彼を硬い鉄の表面に打ち付けただけでなく、まるで紙のように壁を突き破らせた。鋭利な金属片がもたらした深い切り傷と、衝突による激痛が今も記憶に新しい。しかし、それに浸っている暇はなかった。脅威的な形相で、獣が一直線に突進してくる。レイモンドは咄嗟に立ち上がると、物音を立てずに死角へと滑り込んだ。獣が壁に激突する隙を突き、彼は部屋の中へと駆け戻る。一人では手に負えないことが明白な今、彼は武器を探して辺りを見回した。


部屋に戻ったレイモンドは、選択肢を吟味した。数丁の拳銃、手榴弾、ライフルと共に、部屋の中央にぽつんと置かれた携行式のバズーカが目に留まった。


彼はそれに向かって走り出したが、途中で最も近くにあった武器を掴み、振り返りざまに発砲した。銃弾は獣の舌に命中し、傷をさらに抉った。その苦痛に獣の体は制御を失い、後ずさりながら平衡を崩して壁に激突した。その衝撃で建造物の一部が崩れ落ち、獣の体は瓦礫の下敷きになり、両脚だけが覗いていた。


レイモンドはこの好機を逃さず、バズーカを手に取り、手際よく装填してベルトに固定した。すると、獣は瓦礫をベンチプレスのように持ち上げ、再び立ち上がった。天井が崩落するほどのダメージを受けてもなお、その素早く執拗な猛攻は止まらない。レイモンドは直接攻撃を試みたが、無駄だった。


獣が繰り出す拳を避け、レイモンドは以前と同じように、刃と化した腕を突き出してその体に食らいついた。獣の腕がひるんだのを見て、作戦が再び成功したかに思えた。しかし、獣はまるで蚊を払うかのように、もう片方の腕で彼をいともたやすく弾き飛ばした。レイモンドの刃が深い傷を刻みつけたにもかかわらず、獣の傷は彼自身のものより速く治癒しているように見えた。


もっと強く、もっと速くならなければ。彼が考えられたのはそれだけだった。その時、暗闇の中の一筋の光のように、床に光沢のある赤いスライム状の物質が落ちているのが目に入った。なぜかは説明できなかったが、まるで声が聞こえるかのように、それを喰らえばより強くなれるという感覚に襲われた。彼は考える間もなくそれに駆け寄り、獲物に食らいつく狼のように、その深紅のスライムを貪った。


彼が食べ終えた直後、獣の一撃がレイモンドを捉え、壁に叩きつけた。彼の腕の刃が獣の体を切り裂いたが、それは獣にとって紙で指を切った程度の感覚だったに違いない。彼は超人的な力で刃をその掌に深く突き立て、片腕で獣の手を押し返した。刃が肉を貫く感触はあったが、獣は傷をものともせず、再び彼を投げ飛ばした。


しかし今度は、レイモンドは空中で体勢を立て直し、獣に向かって突進した。最高の状態にあったにもかかわらず、獣は依然としてあまりにも強大だった。両手を打ち合わせるようにして放たれた一撃は、彼の意表を突き、その動きを封じた。力を得たはずの体でも、その拘束は破れない。必死にもがくレイモンドを、獣はゆっくりと持ち上げ、大きく裂けた、唸りを上げる口元へと運んでいく。


希望が薄れかけたその時、カルビンが獣の舌を撃ち抜いた。それは先ほどレイモンドが撃ったのと全く同じ場所だった。苦痛にひるんだ獣は、彼を解放した。レイモンドが刃を獣の上顎に突き立ててしがみつくと、獣は激痛に舌を押さえた。


「今すぐ終わらせろ!」カルビンが必死に叫んだ。


レイモンドはバズーカを獣の大きく開かれた口に向けた。引き金を引くと同時に、彼の刃が獣の上顎の歯を真ん中から断ち切り、ミサイルは最短経路を狙って喉の奥深くへと突き刺さった。その反動で彼の体は後方へと押しやられた。


それは致命的な一撃だった。獣は耐え難い苦痛に身をよじり、燃え盛る自らの首を必死にかきむしった。しかし、その巨大な腕では、火が広がる首の後ろ側には届かない。火は弱点である脊髄を焼き切ったのだろう、とレイモンドは思った。やがて、静かな森で巨木が倒れるように、その巨体は重く響き渡る音を立てて崩れ落ちた。


彼らを殺そうとしていた巨人を、自分が倒した。レイモンドはそれが信じられなかった。高揚感が押し寄せ、喜びの雄叫びを上げたい衝動に駆られた。獣が絶命して数秒も経たないうちに、その体は紫色の液体へと溶け始めた。液体は床を伝いながら泡立ち、まるで蒸発していくかのようだった。振り返ると、ドアに山積みになっていたゾンビたちもまた、同じように崩壊していた。


それは彼の人生で最も幸福な瞬間だった。いずれにせよ、自分はやり遂げたのだ。この建物の人々をゾンビと恐怖から守ったのだと、彼は信じていた。――胸に銃弾が撃ち込まれるまでは。彼は辺りを見回し、銃撃犯を視界に捉えた。カルビンと共に生き残った、あのクルーメンバーだった。


「何をする!」レイモンドは腕で急所を庇いながら叫んだ。


男は叫んだ。「黙れ、この化け物――!」その言葉は、カルビンが男の頭を撃ち抜いたことで途切れた。


「今度はお前か?一体どうなっているんだ?」


「気づいていないのか…」カルビンの声は低く、ほとんど囁きに近かった。「自分が何をしたか、分かっていないのか?」


「何だと?俺はあの巨大な脅威を排除したんだぞ!お前の命を救ってやったんだから、感謝されるべきだろう!」


「そうじゃない、その前のことだ」カルビンは、まるで口に出すのをためらうかのように言った。「お前が何を喰ったか、分かっているのか?」


「何のことだか分からない」レイモンドは呟いた。自分が何を食べたのか思い出せず、不安が忍び寄り始めていた。


「お前が喰ったのは、我々の倒れた仲間の亡骸だ。パニックの中で、味方の誤射によって死んだ…」


「何?信じられるか!そんなはずはない」レイモンドは、自分が深紅のスライムを食べた場所を指さして反論した。そこには銃が散乱しているのが見えた。「あり得ない」


カルビンは続けた。「そして、それを喰ったお前の力が増すのを、俺は見た。汚染されていない、手つかずの死んだ人間の肉は、お前の力を…」


「黙れ!」レイミングは、真実を無視できるかのように両耳を塞ぎ、絶叫した。彼は目を見開き、カルビンに向き直った。「どうしてお前は、俺が…」


彼の言葉は、カルビンの近くから静かに放たれる、冷たい赤い輝きによって遮られた。レイモンドは、自らの意志に反して、ゆっくりと振り返った。そこには、カルビンが撃った男が、自分が食べたのと同じ深紅のスライムへと変貌していく姿があった。彼の心の中では嵐が吹き荒れ、起こったことの多くが曖昧になった。ただ、それまで一度もしたことのなかった嘔吐を繰り返し、地面に意識を失って倒れたことだけを覚えていた。

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