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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

飲み怪談

作者: ぴかり

茹だる様な暑さの中。大学の友人達と集まって恒例の飲み会を開く事になった。が、毎度の事で飽きもきていた為に今回は百物語とまではいかないが怪談を話しながらの飲み会を開催する運びとなった。


「創作でも、聞いた話でも、ネットから拾ってきた話でも良いけど実体験という体で話す事」

「おーけー」

「話のプロでも無いんだから詰まったりしても周りは茶化さない事」

「ういー」

「早く飲ませろー」

「分かった、分かった。それでは真夏の怪談大会開催だー」

「「「「「かんぱーい」」」」」


と、ゆるいのかしっかりしているのか判断に苦しむ絶妙なラインで怪談飲み会が始まった。


どこかで聞いたかネットで読んだ様な話が続く。

正直、霊体験とか普通に生きていて早々経験する事でも無いのだから。結局は皆似た様なサイトから話を拾って来ているはずだ。


「その後、その女性の姿を見かける事は無かったらしい。おしまい」

「「「「いぇーい」」」」

「次はケンジ」

「おう」


次は僕の番だ。

怪談飲み会の話は一週間程前から聞かされていて。ネットで話を拾う気でいたがバイトが忙しくてすっかり忘れていた。

その所為で実体験から話をするハメになってしまった事を既に悔やんでいた。


「これは僕がまだ小学生だった頃まで話が戻るんだけど・・・」


悔みながらも話始めてしまい。もう後戻りは出来なくなった。



僕の地元にはちょっとした森があり、その中に小さな池があった。

その池には絶対に近づかない様にと親から度々言い聞かされていた。

理由は年に数度その池で自殺をする人が出るからだった。


森と言ってもそんな大きな森では無いし、池と言っても本当に小さくて地図にも載らない様な池で他所の人間が存在を知っているはずも無い様な地味な池だった。


小学生の頃には学校の友達達とその池を見に行った事もあったが何の変哲も無い池で拍子抜けしたのを覚えている。


そんな池の存在を思い出したのは高校の時だった。


中学の時の同級生の女の子があの池で自殺したとテレビのニュースで知った。

その女の子とは会話した記憶は無いが印象には残っている。


授業の合間の五分休みの度に手を洗いに行くのだ。

教室に戻って来る時も戸は手で開けずに足で開ける。ヤンチャな子ならそれも分かるが大人しい子だったので何度見ても違和感があった。

極度の潔癖症で日に何度も手を洗っていて・・・強迫性障害というやつらしい。


そんな子があの池で自殺をした。


最初は心の病気があったんだからそういう事だったんだろうと思ったが・・・ふと思い直した。

潔癖症で毎日毎日数え切れない程手を洗っている程の人が森に囲まれ藻が浮かび水の淀んだ匂いが立ち込めている様な池で自殺をするだろうか?

こう言っては難だが、もっと綺麗な終わり方があったのではないだろうか?

死を選ぶ精神状態で常識もクソも無いかもしれないがあの子は絶対にそんな最期を選ばない。根拠は無いがそんな謎の確信があった。


ただ、もしかしたらそんな子でさえも引き寄せてしまう様な何かがある。


「そんな池が僕の地元にはあります。終わりっ」

「「「「いぇーい」」」」

「リアルでそこそこ怖かったけど詰めが甘い」

「え?」

「俺も思った。そんな頻繁に自殺者出てるなら小さい池なら埋め立てそうじゃない?」

「確かにー」



言われるまで気付かなかった。

普通に考えればそんな自殺の名所なんて不名誉な場所は完全に封鎖するか池を埋め立てるか水を抜いてしまえば良い。


それが出来無い理由があの池にはあるのかもしれない。


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