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【四章完結】居場所をくれたひと  作者: 紅緒
第4章『目覚めの時』

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69話・改心の第一歩


 それはこの【貧民街】と呼ばれる地に住む大人の大半に言えることだが、男はそのことにずっと後ろめたさを感じていた。

 けれど、相方に調子を合わせてずるずると怠惰に生きてきてしまった。

 死に物狂いで職を探そうとなんてしたことが無い。だって、小さな盗みをすれば、生きていくくらいは出来たから。


 そんなある日、子供達が保護されたと知って男は安心した。

 そして、では自分はこれからどうしようと考える機会が増えた。このまま、相方に流されて生きてくことが、自分にとって良くないことだけは分かった。


 変わらないといけない。

 子供に暴力を振るおうとした相方を見て、やはり【これではダメだ】と悟った。こんなことでは、いつか、近い未来に自分達は破滅してしまう。

 その巻き添えを喰らうのは御免だ。


「ねえ、貴方」

「!? は、はい?」


 ぐるぐると考えを巡らせていたところで、サフィールが癖毛の男に声をかけた。


「もうじき、大きな施策の為、大規模な求人があります」

「え?」

「若く体力のある男性は歓迎されるでしょう。働きによっては、待遇も良くなるし、賄いも出ます」

「え、あの、一体何の話を……?」


 一方的に話すサフィールに、男は何とか言葉の合間に質問を挟む。


「テオも言っていたでしょう? 貴方達には五体満足で健康な身体がある。この生活から、本気で抜け出そうとしてみたらどう?」

「……!」


 つまり。

 彼女は、自分達に職の紹介をしてくれているのだ。

 子供達を脅し、挙句、暴力を振るおうとした自分達に。


「俺達みたいなんでも、雇ってもらえますかね……」


 自信無さげに小さく呟く男に、サフィールは青い瞳を細め慈しむように笑った。


「貴方達が本気で望むならね。人手は多いに越したことは無いし、本当のところは、こちらからお願いしたいくらいなの」


 でも、サボるような悪いヒトは、すぐに解雇されるわよ?


 そう言ってサフィールは悪戯っぽく笑い、首を竦めて見せた。


「あ、ありがとうございます……!」


 癖毛の男はサフィールの温情に唇を震わせ、頭を下げた。そして、隣の相方の頭も鷲掴んで同じように下げさせる。


「い、痛ってえ! なにすんだよ!」

「いいからお前も頭下げろ! これから、俺達もマトモに働くんだ!」

「はあ!?」


 硬直したままだった長髪の男は話に付いていけず、裏返った声を上げる。

 しかし、今まで自分の言う通りに付いてきた相方の様子が明らかに変化していることに気付き、男は文句の言葉を飲み込んだ。


「俺は、ちゃんと働いて自分で良い暮らしを手に入れてみせる。嫌なら、お前は付いてこなくてもいい」

「な、なにを、」

「でも、出来ればお前にも一緒に来て、そんで、一緒に良い暮らしを手に入れて欲しい」

「お前……」


 鬱陶しい前髪の間から、真摯な瞳が長髪の男を射抜く。

 そんな顔を見たことが無かった男は暫しポカンと呆気に取られていたが、やがて……、


「……わあーったよ。お前がそこまで言うんなら付き合ってやんよ」


 そう言って、犬歯を見せて笑った。


「そんなに真剣なお前、初めて見るもんな」


 へへ、と笑う相方に、癖毛の男は照れ臭そうに笑い返した。


「どうやら、お話は纏まったようですわね?」


 そんな二人に、サフィールが声をかける。


「はい。きちんと働いて、これまで迷惑を掛けた人達に償おうと思います」

「良い心掛けだわ。数日中に求人の報せが出るから、頑張ってね」

「はい!」


 癖毛の男はどこか吹っ切れたように、サフィールへ再度深々と頭を下げると、長髪の男と共に去って行った。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


サフィールの提案で一件落着となりました。

施策というのは以前、ノアとサフィールパパが話していたものです。

四章もあと少しで完結です!


☆やブックマークで応援頂けると、とても嬉しく励みになります。よろしくお願いいたします!

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