67話・開花
「アルヴィー……?」
「ダメだ……! 僕のせいで、テオドールくんがケガするなんて、絶対ダメだッ!!」
アルヴィーのこんなに大きな声を聞くのは、初めて共に過ごしたあの日以来だ。
驚きに瞳を大きく見開くテオドールだったが、すぐにそんなアルヴィーの周囲に異変が起こっていることに気付いた。
──……キラッ、……キラッ、
「な、なんだ?」
それは金色の光の粒のような、光の砂のような……、小さな小さなもの。だけど、その一粒一粒の持つ輝きは大きい。
そんな、清らかな気配を纏う金色の光がアルヴィーの身体の周りをキラキラと舞い、たちまちその小さな身体を覆うほどになった。
「…………」
アルヴィーは動かない。話さない。ただぼんやりと空中を見詰めている。
その間にも金色の光は、まるで意思を持つかのようにアルヴィーの両手へと移動してゆく。
「…………」
「!?」
アルヴィーは無言のまま、まるでどうすれば良いのかを【知っていた】みたいに、光に包まれた自らの両の手をテオドールの右手に翳した。
「き、傷が……!」
その光景を見て、テオドールは驚愕の声を上げた。
右手の傷が、みるみる癒えていくのだ。
アルヴィーの両手から、テオドールの右手へと金色の光が流れて来たかと思うと、ひときわ眩い光を放った。
その光に包まれた右手は心地好い温かさこそ感じるが、全く不快では無い。
瞬く間に、赤黒く爛れていた右手の腫れが綺麗に引いていく。
自分の右手が、元の白く健康的な手に戻っていくのを、テオドールは何も言えず見ていることしか出来なかった。
「ア、アルヴィー! これって!」
「……? え? テオドールくん? 僕……」
テオドールの呼び掛けに、アルヴィーは半分瞼を閉じた状態でぼんやりと返事をした。
「? おい、大丈夫かアルヴィー!」
何が起こっているのかさっぱり分からない。分からないが、アルヴィーの尋常では無い様子にテオドールは慌ててその肩を掴み大きく揺さぶった。
「アルヴィー! ……ッアル!!」
「テオドールくん……、テオドールくん、傷が……」
ようやく意識がはっきりとしてきたらしいアルヴィーが、自分のことよりもまず自分の肩を掴むテオドールの右手を見る。
「あ、あれ? テオドールくんケガは……」
傷ひとつ無いテオドールの右手を見て、アルヴィーが困惑し大きな栗色の瞳を白黒させた。
「なんで、さっきまで真っ赤だったのに……」
テオドールの右手を自分の両手で捧げ持ち、まじまじと見詰める。どうやらアルヴィーには、自分が今何をしたのか理解出来ていないようだった。
「アル、これはお前が……──」
と、テオドールが真相を伝えようと口を開いた時、背後でじゃり、と舗装されていない砂利道を踏む音と男の声がした。
「ここにいやがったのか」
先程、アルヴィーに絡んでいた二人組だ。花の一件ですっかり忘れていたが、アルヴィーとテオドールはこの二人から逃走している最中だった。
「やっと見付けたぜ。さあ、さっさとその腕輪寄越しな」
「おい……、後が怖いからもうやめようぜ」
肩より少し長い髪を無造作に後ろで纏めた男がアルヴィーに凄む。
それに対し、鬱陶しそうな癖毛が特徴の男は相方を止めようと声を掛け、そしてアルヴィー達を見て「あれ?」と呟く。
「お前、テオじゃないか?」
「…………」
どうやら、テオドールがここで暮らしていた時の顔見知りのようだ。指摘されたテオドールは仏頂面をして、ふい、と顔を俯けた。
「あ? テオ?」
長髪の男が反応し、テオドールを上から下まで睨め付けるように見る。そして、「マジだ、テオじゃねえか!」と指さした。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
突如発現したアルの力。
そして、そういやいたなあというモブくん達の再登場(笑)。
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