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【四章完結】居場所をくれたひと  作者: 紅緒
第4章『目覚めの時』

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67話・開花


「アルヴィー……?」

「ダメだ……! 僕のせいで、テオドールくんがケガするなんて、絶対ダメだッ!!」


 アルヴィーのこんなに大きな声を聞くのは、初めて共に過ごしたあの日以来だ。

 驚きに瞳を大きく見開くテオドールだったが、すぐにそんなアルヴィーの周囲に異変が起こっていることに気付いた。


 ──……キラッ、……キラッ、


「な、なんだ?」


 それは金色の光の粒のような、光の砂のような……、小さな小さなもの。だけど、その一粒一粒の持つ輝きは大きい。

 そんな、清らかな気配を纏う金色の光がアルヴィーの身体の周りをキラキラと舞い、たちまちその小さな身体を覆うほどになった。


「…………」


 アルヴィーは動かない。話さない。ただぼんやりと空中を見詰めている。

 その間にも金色の光は、まるで意思を持つかのようにアルヴィーの両手へと移動してゆく。


「…………」

「!?」


 アルヴィーは無言のまま、まるでどうすれば良いのかを【知っていた】みたいに、光に包まれた自らの両の手をテオドールの右手に翳した。


「き、傷が……!」


 その光景を見て、テオドールは驚愕の声を上げた。

 右手の傷が、みるみる癒えていくのだ。


 アルヴィーの両手から、テオドールの右手へと金色の光が流れて来たかと思うと、ひときわ眩い光を放った。

 その光に包まれた右手は心地好い温かさこそ感じるが、全く不快では無い。


 瞬く間に、赤黒く爛れていた右手の腫れが綺麗に引いていく。

 自分の右手が、元の白く健康的な手に戻っていくのを、テオドールは何も言えず見ていることしか出来なかった。


「ア、アルヴィー! これって!」

「……? え? テオドールくん? 僕……」


 テオドールの呼び掛けに、アルヴィーは半分瞼を閉じた状態でぼんやりと返事をした。


「? おい、大丈夫かアルヴィー!」


 何が起こっているのかさっぱり分からない。分からないが、アルヴィーの尋常では無い様子にテオドールは慌ててその肩を掴み大きく揺さぶった。


「アルヴィー! ……ッアル!!」

「テオドールくん……、テオドールくん、傷が……」


 ようやく意識がはっきりとしてきたらしいアルヴィーが、自分のことよりもまず自分の肩を掴むテオドールの右手を見る。


「あ、あれ? テオドールくんケガは……」


 傷ひとつ無いテオドールの右手を見て、アルヴィーが困惑し大きな栗色の瞳を白黒させた。


「なんで、さっきまで真っ赤だったのに……」


 テオドールの右手を自分の両手で捧げ持ち、まじまじと見詰める。どうやらアルヴィーには、自分が今何をしたのか理解出来ていないようだった。


「アル、これはお前が……──」


 と、テオドールが真相を伝えようと口を開いた時、背後でじゃり、と舗装されていない砂利道を踏む音と男の声がした。


「ここにいやがったのか」


 先程、アルヴィーに絡んでいた二人組だ。花の一件ですっかり忘れていたが、アルヴィーとテオドールはこの二人から逃走している最中だった。


「やっと見付けたぜ。さあ、さっさとその腕輪寄越しな」

「おい……、後が怖いからもうやめようぜ」


 肩より少し長い髪を無造作に後ろで纏めた男がアルヴィーに凄む。

 それに対し、鬱陶しそうな癖毛が特徴の男は相方を止めようと声を掛け、そしてアルヴィー達を見て「あれ?」と呟く。


「お前、テオじゃないか?」

「…………」


 どうやら、テオドールがここで暮らしていた時の顔見知りのようだ。指摘されたテオドールは仏頂面をして、ふい、と顔を俯けた。


「あ? テオ?」


 長髪の男が反応し、テオドールを上から下まで睨め付けるように見る。そして、「マジだ、テオじゃねえか!」と指さした。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


突如発現したアルの力。

そして、そういやいたなあというモブくん達の再登場(笑)。


☆やブックマークで応援頂けると、とても嬉しく励みになります。よろしくお願いいたします!

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