65話・手折られた花
テオドールが背後から追ってきている気配がする。
何か叫んでいるが、内容まではアルヴィーには聞こえない。
きっと勝手に結界から出たことを咎める言葉だろうと、アルヴィーは想像した。
それよりもさっきの男達に出くわさないか、そればかり気にして視線を忙しく動かしながら元来た道をひた走る。
(あそこだ……!)
やがて、あの青い花が咲いていた山の傾斜へ辿り着いた。
「ん、しょ……ッ! ……ダメだ、届かない」
思い切り手を伸ばしてみるが、アルヴィーの背丈よりも高い位置に咲いた花にはあと一歩というところで届かない。
そこでアルヴィーは手や衣服が汚れるのも構わず、山の傾斜にしがみつくようにして上へとよじ登った。
(あとちょっとで、手が届く……!)
震える指先が青い花の茎に触れる寸前、アルヴィーの身体は勢い良く弾かれ傾斜から転げ落ちた。
「ダメだ、アルヴィー!」
「テオドールくん!?」
アルヴィーは自分を突き飛ばしたのが意外にもテオドールだったこと、そして、何故彼がそんなことをしたのか分からなかったことで、当然当惑の表情を浮かべる。
しかし、青い花は目の前にあるのだ。
どうしてテオドールが邪魔をするのか分からないが、アルヴィーはどうしてもこの花を手に入れなければいけない。
「このお花、どうしても持って帰りたいんだ!」
そう叫んで、アルヴィーが再び傾斜に飛び付いて青い花へ手を伸ばす。
「ダメだって!」
「なんで!」
「この花は……──!」
言葉の応酬の間にも、アルヴィーは無理矢理花を手折ろうと足掻く。そしてテオドールの答えを聞かない内にその手がようやく茎に触れそうになった。
「ッダメだ!!」
それを見たテオドールは説明しようとした言葉を飲み込み、アルヴィーより一瞬早く花を茎ごと毟り取った。そして地面に叩きつけると……──、
ぐしゃり!
足で乱暴に踏み潰した。
「な、なんで……」
原型を留めない、無惨な姿になった花に、何より、テオドールが【ソレ】をしたという事実に、アルヴィーは大きなショックを受けた。
斜面から降りて、ぐしゃぐしゃになった花を見る。
これではとても贈り物になんて出来ない。
「テオドールくん、なんで!」
テオドールに裏切られたような気持ちになったアルヴィーが声を荒げる。
しかし、テオドールからの返答は無く、俯いたまま手を押さえている様子にアルヴィーは異変を感じ取った。
「テ、テオドールくん?」
「……ッ、いってぇ……」
「な……!」
テオドールに近付いたアルヴィーは愕然と目を見開いた。
テオドールの右手が、花に触れた手が、赤黒く変色している。良く見ると、湿疹のようなものが無数に右手全体を覆っていた。
「テオドールく、」
「触るな!」
「!」
心配で、でも訳が分からなくて、とりあえずテオドールの手の具合を見ようとしたアルヴィーに、テオドールが鋭く叫んだ。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
やっと花が手に入る…と思ったら、何故かテオがめちゃくちゃにしてしまいました、、。
一体どういう事なのか?次回もお楽しみに(*^^*)
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