64話・走り出す
「オレ達はサフィール様に救われた者同士、仲間だ。サフィール様へ恩返しできるよう、今は自分が出来ることをお互い頑張ろう」
「うん!」
テオドールの言葉の後半は、サフィールと暮らすことになって間も無く、ノアに掛けられた言葉の受け売りである。
何か恩返しがしたいとやきもきしていたテオドールに、『そんなに焦らなくてもいいでしょ』と、ノア独特の、あの飄々とした態度で諭された。
「何かあったら、オレになんでも相談しろよ? オレは、お前のお兄ちゃんなんだからな!」
「うん! ありがとう、テオドールくん」
照れ臭くなって語尾が強くなってしまったが、アルヴィーは嬉しそうに笑ってくれた。
少し頬を赤くして、テオドールが視線を逸らす。そして、そういえばと大事なことを思い出した。ここにアルヴィーを追って来た本来の目的を。
しかしテオドールが話を切り出す前に口を開いたのはアルヴィーだった。
「ねえ、もうさっきの場所からあの人たちいなくなったかな?」
「え? ……ああ、そうだな。多分、オレ達を追いかけたはずだから、あそこにはもういないんじゃないか?」
出鼻を挫かれたテオドールが答えると、アルヴィーはぎゅっと拳を握り「よし!」と呟く。
それに対しテオドールが何が『よし』なのか尋ねるよりも先に、アルヴィーは結界の円の外へと飛び出し勢いよく走り出してしまった。
「アルヴィー!? おい、結界から出るな!」
「ごめん! テオドールくんは結界の中にいて! 僕、大事な用事を済ませて戻るから!」
「は……? 大事な用事って……」
アルヴィーの言う【大事な用事】に考えを巡らせるが、すぐにその答えは出た。正に今さっき、テオドールがアルヴィーに話そうとしていた内容に違い無い。
「ああ、もう! 待て、アルヴィー!」
テオドールは地団駄を踏みたい気持ちで叫ぶと、自身も結界から出てアルヴィーのあとを追った。
「アルヴィー、待てってば! ……って、アイツ、あんなに脚速かったか!?」
今まで痩せて体力の無かったアルヴィーだが、サフィールの献身的な食事管理や健康管理のかいあって、今では同じ年頃の子供と大差無い体力が付きつつあった。
孤児院に遊びに行くと、同年代の子供達と外で鬼ごっこなどをして駆け回ることも出来るようになった。今までのアルヴィーの人生では出来なかったこと、一生出来ないと思っていたこと。
そうして意外にも、アルヴィーはなかなかの俊足の持ち主であることが分かった。
それは騎士を目指し、日々鍛錬をしているテオドールと比べても、こと足の速さだけでいえばアルヴィーに軍配が上がる程だ。
「くそっ、アルヴィー! 待て、あの花は……!」
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
アルがどんどん元気になっていく(笑)。
それに振り回されるテオを書くのは楽しいです(*^^*)
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