62話・似ているふたり
時は現在に戻り……────
「て、テオドールくん、サフィールさまからお金盗ろうとしたの……?」
「うッ……」
その怖いもの知らずな行動を聞き『信じられない』、と顔に書いてテオドールを見上げるアルヴィーに、気まずげに視線を逸らしながらテオドールが答える。
「し、しかた無いだろ。あの時は、どんな人か知らなかったんだし……」
「それに、」とテオドールが続ける。
「孤児院っていうところがあるのも知らなかったんだ。とにかく金を手に入れないとみんな生きていけないと思って、それで……」
自分の過去の過ちを打ち明けることが後ろめたくて、テオドールの声はどんどん小さくなっていく。
しかし、それを聞いたアルヴィーは真剣な眼差しでテオドールを見て口を開いた。
「僕も、わかるよ。テオドールくんの気持ち」
「えっ?」
「だって、僕も黙って船に乗ってここまで来たんだもん。悪いことだって知ってたけど、こうしなきゃ生きていけないと思った」
「アルヴィー……」
アルヴィーの言葉に、テオドールは改めて彼の境遇を思い返す。
テオドールと違ってアルヴィーには親がいたのに、彼を一番大切に扱うはずのその親にアルヴィーは虐げられていた。
友達もいなかったと聞くし、出会った頃の貧相で傷だらけの身体は、碌に食べていなかった過去の自分達より尚酷いと思った。
「そうだよな。アルヴィーも、生きるために必死だったんだな」
「おたがいさまだよ! テオドールくんも僕も、サフィールさまに出会えて良かったね!」
「ああ……、本当にそうだな」
隣で明るく笑うアルヴィーは、初対面の時の怯えようが嘘みたいだ。
あんな状態だったアルヴィーに、当初サフィールを取られたような気持ちになり、ヤキモチを妬いていた自分がテオドールは恥ずかしくなった。
「サフィール様はオレ達が孤児院で暮らせるようシスターに話をしてくれて、しかもそれで終わりじゃなくて……こないだアルヴィーも一緒に行った時みたいに、頻繁に食べ物や絵本とかを差し入れてくれたんだ」
大きな荷物を抱えて孤児院にやって来ては、料理やお菓子、そして絵本などを差し入れてくれたり、日によっては孤児院のキッチンで作ったものを振舞ってくれたり……。
最初は反発心を抱いていたテオドールも、次第にサフィールに素直に感謝するようになったし、マッシュに至っては崇拝に近い思慕を抱き、恩義に報いたいと積極的に読み書きを学んで、年下の子供達の面倒を見るようになっていた。
「でもどうして、テオドールくんだけサフィールさまの家に?」
「ああ、それはオレの髪と瞳の色が原因だ」
「髪と瞳?」
ぱちくりと大きな瞳を瞬かせるアルヴィーに、テオドールは「そうだ」と頷いて見せた。
「髪と瞳の色で、魔法の素養があるかどうかが分かるらしい」
「えっ、そんな見分け方ができるの?」
テオドールの答えに驚いたアルヴィーだが、同時に確かに、とも思う。
これまで会った魔法を使える人物は、全て特徴的な髪や瞳の色を持っていた。
アルヴィーのような一般的な栗色の髪や瞳では無い。皆、目を引くような美しい色彩だった。
「丁度、サフィール様が街で一人暮らしを始めるタイミングで声をかけられたんだ。サフィール様の元で勉強して、十歳になったら魔道士協会に入って本格的に魔法を学ばないかって」
「サフィールさまが街で暮らすようになったのって、最近なの?」
「ああ。一年前くらいかな。それで、魔道士協会に入れたらお給料ももらえるし、そしたら孤児院の奴らの助けになれるし……」
「そっか……」
テオドールの話を聞き、アルヴィーは少し下を向いて逡巡する様子を見せると、すぐにテオドールの目を真っ直ぐ見上げて瞳を輝かせた。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
過去から現在に戻り、テオの過去を知ったアル。
そして、魔法の素養についても明かされました。
生きる為に形振り構うことが出来なかった二人。その二人を救ったサフィール。共通項の多いアルとテオだからこそ、分かり合えることがたくさんあると思います。
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