表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【水曜・土曜21時更新】傷ついた僕と、風変わりな公爵令嬢のしあわせな家族の記録  作者: 紅緒
第4章『目覚めの時』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/69

61話・【提案】─テオドールの場合─


「そんなことさせないわ。貴方が私をターゲットにしたこと。これはきっと何かの巡り合わせね。ノア様もそう思いませんか?」


 ここで初めて、サフィールが黒髪の少年の名を呼んだ。


 ノアは「そうだね」と人好きのする笑みを浮かべ、テオドール達を見渡した。


「街の散策も兼ねて、先日出来たばかりの孤児院へ顔を出す予定だったんだ」

「こじいん……?」


 テオドールを始め、他の子供達も【孤児院】というものが何なのかピンと来ず、頭にハテナを浮かべている。


 そんな子供達を他所にノアは朗らかに笑い、まるで歌うように軽やかに続けた。


「そんな日に出会うなんて、本当に運命的だ。私達の日頃の行いがいいからかな」

「日頃の行いはともかく、この出会いは確かに運命的ですわ」


 そう言って、サフィールが子供達に説明すべくその小さな口を開いた。


「孤児院というのは、身寄りの無い子供達を保護して、そこでみんなで一緒に暮らしてもらう施設のことよ」

「そ、そんな場所があるのか?」

「ええ。まだ出来たばかりだけどね」


 驚いて聞き返すテオドールに、サフィールは力強く頷いて見せる。


 テオドールも他の子供達も、急に差し出された救いの手にただポカンとするばかりだった。


「その、こじいんてとこに……オレ達も……」

「ええ。今から一緒に行きましょう。管理しているシスターには私から話をするわ」

「シスター?」

「お隣に教会があってね。そこのシスターが孤児院も経営してくれているのよ」


 ちゃんと良い子に言うことを聞くのよ?

 そう言って、サフィールが微笑む。

 嘘の無いその笑みに、今まで希望を失っていた子供達の瞳に光が戻った。


「みんな一緒に暮らせるの!?」

「こわくないかな?」

「ごはん、出るのかな?」


 口々に騒ぎ始めた子供達を背に、マッシュがサフィールへと一歩近付いた。


「あの……ッ!」


 緊張と恐怖の入り交じる声で、それでも懸命に声を振り絞る。

 そうしてマッシュはサフィールへ向かい、深々と頭を下げた。


「申し訳ございませんでした!」


 大きな声ではっきりと謝罪の言葉を口にしたマッシュに、テオドールも、そして他の子供達も驚き目を見開いた。


「無礼を働いて、虫のいいことを言うのは承知です……! でも、どうかみんなを……、コイツらをよろしくお願いします!」

「マッシュ……」


 年長者の責任感からか頭を下げたまま懇願するマッシュを目の当たりにして、テオドールはのろのろと立ち上がる。

 それから、サフィールに向けて自分も大きく頭を下げた。


「危ないマネをしようとして、本当にすみませんでした。オレはどうなってもいいから……、コイツらをその、【こじいん】っていう所に連れて行ってください!」


 二人の少年に頭を下げられサフィールは一瞬きょとんとしたが、すぐに肩を竦め眉尻を下げて苦笑する。


「ふふ。だから、今回は不問にすると言ったでしょう? 二人とも、頭を上げてちょうだい」


 サフィールの声に、そろりとテオドールとマッシュが顔を上げた。

 その二人に優しく言い含めるよう、サフィールが続ける。


「【ノブレス・オブリージュ】って知ってるかしら?」


 その問いに、テオドールとマッシュが同時に首を横に振る。

 それを見届けて、サフィールは更に続けた。


「貴族の義務というような意味でね、貴族はその地位や財力をもって、人々を助けないといけないのよ」

「最近では、そんな殊勝な貴族は珍しいけどね」


 サフィールの言葉にノアが横から合いの手を入れる。

 それに「悲しいけれど、確かにそうですわね」と、サフィールが表情を翳らせた。


「だから、私が貴方達に力を貸すのは貴族として当然の務めなの。……嫌味に感じるかもしれないけれど、どうか私の気持ちを受け取って欲しいわ」


 困ったように眉を下げて笑うサフィールに、マッシュは「いえ、そんなとんでもない……!」と恐縮し、またペコペコと頭を下げている。


「さあ、そうと決まったら早速孤児院へ行きましょう」

「そうだね。急なことだし、シスターにきちんと話をしないと」


 ノアの言葉にサフィールは「ええ」と頷いて、子供達全員の顔を見渡した。


「大丈夫よ。必ず話をつけるから、安心して付いてきて」


 にっこりと陽光のように暖かく微笑むサフィールに、子供達のある者は目を輝かせ、ある者は頬を紅潮させ、一斉に「はい!」と返事をする。


「テオドールも、さあ行きましょう」

「……え、あの、」


 名指しされ、手を差し出されたテオドールは戸惑いその手とサフィールの顔を交互に見る。


「貴方は、優しくて勇気のある子ね。そういう子、とても好きよ」

「……」


 ふふ、と悪戯っぽく笑って、サフィールがテオドールの小さな手を取った。


 手を引かれるテオドールは、気恥しさで顔を下に向けたまま歩いてしまう。……それでも、繋がれた華奢な手を振り解こうとはしなかった。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


こうして子供達は孤児院で暮らすことになりました。

マッシュが孤児院にいるのもこれがキッカケです。


☆やブックマークで応援頂けると、とても嬉しく励みになります。よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ