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【水曜・土曜21時更新】傷ついた僕と、風変わりな公爵令嬢のしあわせな家族の記録  作者: 紅緒
第4章『目覚めの時』

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56話・お守りのチカラ


「あの光の効果はそんなに長くない。走ってたら追いつかれる……」

「どうするの?」

「隠れる。こっちだ」


 テオドールは迷うことなく民家が密集している場所まで走ると、細く、昼間だというのに薄暗い路地を幾つか超え、一軒の古びた家の軒先で立ち止まった。


「ここなら入り組んでるから見つかりにくいハズだ」


 そう言って、テオドールが地面に落ちていた石ころを拾い上げる。

 その石はテオドールの拳よりやや大きいくらいのもので、アルヴィーはテオドールの行動の真意が読めず、ただ「そこでじっとしてろ」と言われるまま立ち尽くしていた。


 ガリ、ガリ、ガリリ……。


 テオドールが石で土の地面に線を引き始めた。

 地面に引かれた線は立っているアルヴィーを囲い、そしてテオドールも一緒に囲い、終にぐるりと一周したそれは、二人を中に入れた少々歪な円となる。


「これでよし……」

「テオドールくん、何してたの?」


 円を完成させたテオドールが、ふう、と息を吐く。

 アルヴィーの質問に、テオドールはまず「これは結界だ」と教えた。


「結界?」

「そうだ。簡単な結界だけど、この円の中にいればやつらにはオレ達が見えなくなる」

「すごい……! それはテオドールくんの魔法なの?」

「まさか」


 テオドールは苦笑して、アルヴィーの言葉を否定した。


「これは、このお守りの力だ」

「お守りの?」

「そう。サフィール様の魔力が込められてるからな。アルヴィーだってお守りを身に付けていればできるハズだぞ?」

「そうなんだ、知らなかった……」


 改めて凄い物なんだな、とアルヴィーは自分の右手をしげしげと見遣る。そんなアルヴィーに、テオドールは何故か申し訳なさそうに眉尻を下げた。


「もっと早くお守りの効果や使い方を教えれば良かった。ごめん……」

「えっ! なんでテオドールくんが謝るの!? 僕こそ、何も言わず勝手に外に出てごめんなさい……」


 同じようにしゅんとした子供達は、順番に謝罪をして自分の非を詫びた。それから、二人は視線を交わし照れ臭そうに笑い合う。


「……ところで、テオドールくんはどうして僕がここにいるってわかったの?」


 王都は広い。しかも、アルヴィーが迷い込んでいたのは街の外れで普段行かない場所だ。

 当てずっぽうで辿り着けるものではない。


「ああ、それもお守りのおかげだ。同じように造られた魔石同士、共鳴するようになってる」

「すごいね……!」

「サフィール様がオレ達を守るために工夫してくれてるんだ」

「サフィールさまが……」


 実際に自分を守ってくれたお守りをもう一度見てみる。

 それは一見すると紅く綺麗な宝石だが、そこには魔力だけじゃない……、サフィールの想いが込められているのだ。

 そう思うと、アルヴィーはくすぐったいような、鼻の奥がツンと痛くなるような心持ちになって、潤みそうになる目をしぱしぱと瞬きして誤魔化した。


「それにしても、こんな所に来てるなんてビックリしたぞ」


 感慨にふけっていたアルヴィーに、テオドールが腰に手を当て苦言を呈した。その立ち姿がどことなくサフィールに似ているのは気のせいでは無いだろう。


「? こんなところって?」

「ここ、貧民街だぞ。アルヴィーみたいな子供が来ていい場所じゃない」

「貧民街?」


 そう言われ改めて周囲を見渡してみると、なるほど確かにサフィールの家がある区画とはだいぶ趣が違った。


 さっきまで恐怖で頭がいっぱいでよく見ていなかったが、ここ周辺の家の造りはアルヴィーから見てもお世辞にも立派とは言えず……、むしろ、屋根が歪んでいたり木材で出来た家の壁には隙間があったりとかなり状態が悪い。

 地面も舗装されておらず、狭い路地は湿気ていて生ゴミのような臭いが漂っていた。

 アルヴィーの実家も決して裕福ではなかったが、ここまででは無かった。


「もうここには来ちゃダメだ。わかったか?」

「うん……」


 この区画が纏う嫌な空気に、アルヴィーは素直に頷き……、同時にある疑問が生まれる。


「ねえ」

「ん?」


 テオドールと視線が合ったのを確認して、アルヴィーが続ける。


「テオドールくんは、ここに来たことあるの?」

「え?」

「だって、道に詳しかったし……」

「……」


 この場所を【見付かりにくい場所】と言っていたし、ここへ辿り着くまでも迷いなく路地を曲がり進んで来た。

 土地勘があるに違いない。幼いアルヴィーにもそう想像できた。


「それは……」


 アルヴィーの純粋な疑問に、テオドールは少し気まずそうな顔になって目線を下にやる。

 自分で引いた線を見るでもなく見ながら、テオドールは「そうだな……」と小さな声で言った。


「オレはアルヴィーの事情を知ってるのに、オレがアルヴィーに話さないのはズルいな」


 そう言って、テオドールは顔を上げた。

 覚悟を決めたような強い視線に、アルヴィーの胸がどくんと鳴る。

 これから、テオドールは大事な話をしようとしている。そう、直感した。


「オレは……、元々ここの出身なんだ」


 そうして、テオドールは自分のこれまでについて、ぽつりぽつりと話し始めた。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


次回から、物語はテオの回想回へ。

テオとサフィールの出会いが明かされます。

お楽しみに!


☆やブックマークで応援頂けると、とても嬉しく励みになります。よろしくお願いいたします!

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