55話・眩しい光
花を探すことに夢中になり過ぎて、男達が自分の後ろを追って来ていたことにも気付かず、人気のない場所にのこのこと一人で来てしまった。
(僕は馬鹿だ……!)
アルヴィーは自分の浅慮さを責めた。
サフィール達が優しいので忘れていたが、この世界には【怖いひと】というのが確かに存在する。
自分は嫌という程それを知っていたはずなのに、温かな毎日を送るうちに失念していた。
「その服、かなり上等なモンじゃねえか?」
男が値踏みするようにアルヴィーを上から下まで見て、獲物を見付けた獣みたく瞳をギラつかせる。
「お小遣い持ってんじゃねーの? オレ達にちょっと恵んでくれよ」
「おい、やめとけって……」
目の前に立ち塞がる男に、只アルヴィーは震えて首を横に振った。
「何も持ってねーの? 嘘吐いたらタダじゃおかねーぞ」
「ひッ……!」
男が拳を振り上げて脅しをかけると、アルヴィーは咄嗟に両手で顔を庇った。
その時、アルヴィーの細い腕にきらりと光る物があるのを、男は見逃さなかった。
「なんだよ、良いモン持ってんじゃん」
「えっ?」
「そのブレスレットだよ。でけえ宝石が付いてんじゃねーか!」
どうやら男はサフィールからもらったお守りに目を付けたらしい。
実際はこの石は宝石ではなく【魔石】なので価値はもっと上なのだが、この男にそんな目利きが出来るはずもなく。
「こ、これはダメです!」
アルヴィーはサッと血の気を引かせ、お守りを付けた右手首を左手で隠した。
「あ? いいだろ、どうせお前らにとっちゃ石ころ同然だろうが」
「ちがいます! これは、とても大事なものなんです!」
男に凄まれアルヴィーは内心泣き出したいくらい怖かったが、はっきりとその要求を拒絶した。
これは、サフィールがアルヴィーのために魔力を込めて作ってくれた【魔石】だ。世界にふたつと無いものだ。
アルヴィーを守るために、優しいあのひとが贈ってくれたものだ。
これだけは、絶対に渡せない。
「いいからさっさと寄越せよ」
「嫌です!」
「このガキ……!」
さっきまでと打って変わって毅然とした態度で拒否するアルヴィーの姿に、男がこめかみを引き攣らせる。
「お、おい、子供相手だぞ! 殴るなよ!?」
男の苛立った様子に焦りを覚えたのか、連れの
男が慌てて宥めに入った。
「殴りやしねーよ。コレさえ手に入ればなあ!」
「!」
男の手がアルヴィーの右腕に伸びる。
「だめ!!」
殴られるかもしれない恐怖より、お守りを奪われるかもしれない恐怖が勝った。
アルヴィーが咄嗟に両手を前に突き出したその時、誰もが予想し得なかったことが起こった。
────カッ!
「うわっ!?」
「なんだ……! 眩しい!」
白く眩い光が、男達へ向けて放たれた。
その光は間違いなくアルヴィーの右手のお守りから射出されていて、アルヴィー自身、驚きと戸惑いで目をぱちくりさせ固まってしまう。
その時────。
「アルヴィー!」
「テオドールくん!?」
背後から知った声が聞こえ振り返ると、何故かテオドールがいた。
「来い! 逃げるぞ!」
「えっ? う、うん!」
肩で息をしているテオドールは、アルヴィーの手をしっかり掴むと、有無を言わさず元来た道へと走り出した。
「おい、逃げんじゃねえ!」
背後からの怒号にアルヴィーの小さな身体がビクッと飛び跳ねる。またドキドキと心臓が跳ね始めて、アルヴィーは無意識にテオドールの手をぎゅっ、と強く握った。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
お守りの光と、駆け付けたテオによって逃げ出す事が出来たアル。
果たしてこのまま逃げおおせる事が出来るのでしょうか…?
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