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【水曜・土曜21時更新】傷ついた僕と、風変わりな公爵令嬢のしあわせな家族の記録  作者: 紅緒
第4章『目覚めの時』

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55話・眩しい光


 花を探すことに夢中になり過ぎて、男達が自分の後ろを追って来ていたことにも気付かず、人気のない場所にのこのこと一人で来てしまった。


(僕は馬鹿だ……!)


 アルヴィーは自分の浅慮さを責めた。

 サフィール達が優しいので忘れていたが、この世界には【怖いひと】というのが確かに存在する。

 自分は嫌という程それを知っていたはずなのに、温かな毎日を送るうちに失念していた。


「その服、かなり上等なモンじゃねえか?」


 男が値踏みするようにアルヴィーを上から下まで見て、獲物を見付けた獣みたく瞳をギラつかせる。


「お小遣い持ってんじゃねーの? オレ達にちょっと恵んでくれよ」

「おい、やめとけって……」


 目の前に立ち塞がる男に、只アルヴィーは震えて首を横に振った。


「何も持ってねーの? 嘘吐いたらタダじゃおかねーぞ」

「ひッ……!」


 男が拳を振り上げて脅しをかけると、アルヴィーは咄嗟に両手で顔を庇った。

 その時、アルヴィーの細い腕にきらりと光る物があるのを、男は見逃さなかった。


「なんだよ、良いモン持ってんじゃん」

「えっ?」

「そのブレスレットだよ。でけえ宝石が付いてんじゃねーか!」


 どうやら男はサフィールからもらったお守りに目を付けたらしい。

 実際はこの石は宝石ではなく【魔石】なので価値はもっと上なのだが、この男にそんな目利きが出来るはずもなく。


「こ、これはダメです!」


 アルヴィーはサッと血の気を引かせ、お守りを付けた右手首を左手で隠した。


「あ? いいだろ、どうせお前らにとっちゃ石ころ同然だろうが」

「ちがいます! これは、とても大事なものなんです!」


 男に凄まれアルヴィーは内心泣き出したいくらい怖かったが、はっきりとその要求を拒絶した。


 これは、サフィールがアルヴィーのために魔力を込めて作ってくれた【魔石】だ。世界にふたつと無いものだ。

 アルヴィーを守るために、優しいあのひとが贈ってくれたものだ。


 これだけは、絶対に渡せない。


「いいからさっさと寄越せよ」

「嫌です!」

「このガキ……!」


 さっきまでと打って変わって毅然とした態度で拒否するアルヴィーの姿に、男がこめかみを引き攣らせる。


「お、おい、子供相手だぞ! 殴るなよ!?」


 男の苛立った様子に焦りを覚えたのか、連れの

男が慌てて宥めに入った。


「殴りやしねーよ。コレさえ手に入ればなあ!」

「!」


 男の手がアルヴィーの右腕に伸びる。


「だめ!!」


 殴られるかもしれない恐怖より、お守りを奪われるかもしれない恐怖が勝った。

 アルヴィーが咄嗟に両手を前に突き出したその時、誰もが予想し得なかったことが起こった。


────カッ!


「うわっ!?」

「なんだ……! 眩しい!」


 白く眩い光が、男達へ向けて放たれた。

 その光は間違いなくアルヴィーの右手のお守りから射出されていて、アルヴィー自身、驚きと戸惑いで目をぱちくりさせ固まってしまう。

 その時────。


「アルヴィー!」

「テオドールくん!?」


 背後から知った声が聞こえ振り返ると、何故かテオドールがいた。

 

「来い! 逃げるぞ!」

「えっ? う、うん!」


 肩で息をしているテオドールは、アルヴィーの手をしっかり掴むと、有無を言わさず元来た道へと走り出した。


「おい、逃げんじゃねえ!」


 背後からの怒号にアルヴィーの小さな身体がビクッと飛び跳ねる。またドキドキと心臓が跳ね始めて、アルヴィーは無意識にテオドールの手をぎゅっ、と強く握った。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


お守りの光と、駆け付けたテオによって逃げ出す事が出来たアル。

果たしてこのまま逃げおおせる事が出来るのでしょうか…?


☆やブックマークで応援頂けると、とても嬉しく励みになります。よろしくお願いいたします!

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