53話・青い花
「このお花って……」
ふと思い出して図鑑のページを最初の方へ戻してみる。
するとそこに描かれた白い花を見付けてアルヴィーは「これだ」と声に出した。
その花は、先程の青い花と同じくラッパ型の花弁をしている。白だけでなく他の色の同種の花もあったが、何故かそのページに青い花は並べて描かれていなかった。
「リ、リリー……? そうだ! リリーだ」
ベッドでノアにこの花の名前を教えてもらったことを思い出す。
明くる日の朝、城の庭園を案内してもらった時に実物も見せてもらった。
庭園にはこの美しい「リリー」という花がたくさん咲いていて、白やオレンジ、ピンクに黄色、それに赤まで……、色とりどりのものがあった。
しかし城の庭園にも、この図鑑にあるような青いリリーは見かけなかった。
(珍しい種類なのかな?)
そう思うと更にこの青い花が気になってくる。
もう一度ページを捲って、青い花の項目に目をやる。するとそこには確かに「リリー」と書かれていた。他のリリーのページと見比べても同じ表記だから間違いない。
(名前以外は読めないけど、このお花が良い!)
サフィールの瞳の色と同じ、青く美しいリリーの花。
彼女に贈るならこれしかない。アルヴィーはそう確信した。
(どういうところに咲いてるんだろう)
贈る花は決まった。でも、それがどこに行けば手に入るのか分からない。文字もところどころしか読めなくて、アルヴィーはまたそこで行き詰まった。
何か手掛かりはないかと、青いリリーのイラストを見る。すると、生い茂った草やキノコが生えているのと同じ場所に花が咲いている小さなイラストを見付けた。
(草がいっぱいで、キノコが生えてるような場所に行けば……、このお花が咲いてるかもしれない!)
そう思うとアルヴィーは居ても立っても居られず椅子から勢いよく立ち上がった。
部屋を飛び出して階段を駆け下り、アルヴィーは何も言わず家を出る。
「ん?」
バタン! と音を立てて家の扉が閉まる音を聞き、自室にいたテオドールが自習していた教科書から顔を上げた。
「アルヴィー?」
部屋から出て声をかけるが返事はない。
アルヴィーの部屋へ行くと扉は開けっ放しになっていて、中には誰もいなかった。
「……一人で外に行ったのか?」
今までそんなことがなかったので、戸惑いながらテオドールはアルヴィーの部屋へ足を踏み入れる。
どこに行ったんだろう……。その手掛かりがないかと部屋を見回すと、アルヴィーの机の上に広げたまま放置された植物図鑑が目に入った。
「……これは、」
見開きのページの中で、強く目を引く青い花。
それを見てテオドールもまた(サフィール様みたいだ)という感想を抱く。
しかし。
「!」
その詳細が書かれた文字を目で追ううちに、テオドールの目が険しくなっていった。
(アルヴィーを見付けないと……!)
何となくアルヴィーがしようとしていることを察したテオドールは、慌ててアルヴィーを捜索すべく自身もまた家を飛び出したのだった。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
サフィールへのプレゼントにお花を贈ることにしたアルですが、なにやらテオの様子が……?
☆やブックマークで応援頂けると、とても嬉しく励みになります。よろしくお願いいたします!




