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【4章開始!】傷ついた僕と、風変わりな公爵令嬢のしあわせな家族の記録  作者: 紅緒
第3章『はじめてのお城、新しい出会い』

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39 話・王国騎士団副団長・ナタリー


「あ! サフィール様、来てくれたんすね!」


 騎士団の訓練所に着くなり、元気な声がアルヴィー達を迎えた。


 薄青色のボブヘアの青年が駆けて来て、サフィールに「お疲れ様っす!」と頭を下げる。

 それにサフィールも「ローガンもお疲れ様」と返し、笑みを浮かべる。


「ゾーイと二人で朝から頑張っているんですって?」


 サフィールの言葉にローガンは「はいっす!」と背筋を伸ばした。


「昨夜の戦闘を騎士の人達とシミュレートしてるっす」


 額に汗を光らせ、ローガンが後ろを振り返って見せる。

 そこでは立ち込める土埃と、騎士数名とゾーイの姿があった。

 どうやらゾーイが魔法で土煙を起こし、騎士の動きを牽制しているようだ。昨夜の孤児院で、ローガンと対峙した魔道士のように。


 土煙を起こしながら、同時に炎の球を別の騎士に放つ。

 相手をしている騎士達も昨夜と同じ面子のようだった。


「同じ場所で動くと土煙で全員撹乱される! 連携を取って動け! 火球の軌道をよく見ろ! 恐れずに前へ進め!」


 彼らに檄を飛ばしているのはオリバーだった。

 指示されるたびに「はい!」と返事をし、騎士達は剣を構え直し走る。


「す、すごい……!」


 その光景にアルヴィーが口を大きく開けて見惚れる。

 テオドールも魔法と剣撃を同時に見ることができて興奮に目を見開いている。


「ローガン! さっさと戻れ!」

「は、はいっす!」


 オリバーに怒鳴られ、ローガンはサフィールに一礼すると訓練所の中に戻って行った。


「お、おい、サフィール様だ……」

「サフィール様がいらしてるぞ」


 オリバーとローガンの声でこちらを見た騎士達から静かなざわめきが起きる。

 ローガンやゾーイ達のグループだけでなく、訓練所にいた騎士全員の視線がサフィールに集まった。


「サフィール様、素敵……」

「いつ見ても隙のない立ち姿、お美しいわ……」


 男性の騎士だけでなく、女性の騎士までも頬を染めてサフィールを見詰めている。だが、サフィールはその熱視線には気付いていなかった。


「ほら、お前ら集中しろ!」


 オリバーの言葉に各々訓練に戻るが、サフィールが見ていると気付いた前と後ではまるで覇気が違う。

 サフィールに良いところを見せようと、全員が躍起になって訓練に励み始めた。


「騎士団の方達は、いつもすごい気迫で訓練をされてますわね」

「か、かっこいい……!」

「だろ!? めちゃくちゃカッコいいだろ!?」

「うん! テオドールくんの言ったとおりだね!」


 何も知らないサフィールが鬼気迫る訓練を皆で見学していると、訓練所からオリバーがこちらに向かってやって来た。


「はあ……、いつもこのくらいやる気出してくれりゃあなあ」


 短髪をガシガシと掻き混ぜながら、オリバーが溜息を吐く。


「オリバー様、お疲れ様です」

「ようこそ、サフィール嬢」


 サフィールの隣に並んだオリバーが訓練所の方を見る。

 今いる場所は少し高い位置にあり、訓練をしている様子をよく見渡すことが出来た。


「昨夜はウチのヤツらが役に立たなかったみたいで、申し訳ありません。サフィール嬢がカタを付けてくれたと聞いてます」

「いえ、あれは相手が悪かったんです」


 頭を下げるオリバーにサフィールが否定するが、オリバーは「いや、」と食い下がった。


「完全にこちらの落ち度です。ただのゴロツキ相手だろうと考え、相手を見くびり過ぎていた」


 今回、敵の戦力を甘く見たのと、潜入に大袈裟な装備を持って入れないと考えた上で、騎士団側は必要最低限の装備しか持ち込まなかった。


「剣士はどうしても接近戦を得意とする。距離を取られちまうとどうしようもない」

「それは魔道士側も言えますわ。魔道士は逆に接近戦に弱い部分があります」


 オリバーは「そうですなあ」と返し、その逞しい腕を組み顎を引いた。


「剣以外の得物を使うヤツもいるが、相手がこちらに合わせてくれることなんてない。どんな不利な状況でも立ち回れるのが理想ですな」


 そう言ってオリバーが肩を竦める。


「装備が不十分だったのもありますが、今回の件で、騎士と魔道士……、更なる連携が必要だと感じました」

「ええ、私もオリバー様と同意見です。弱点を補い合えば、今回のようなことは防げるかと」


 訓練所へ目を向けると、ローガンとゾーイが敵味方に別れて模擬戦をしている。

 そこには騎士達も混ざり、装備を駆使し連携を取りながら敵役であるゾーイを追い詰めようとしていた。


「サフィール嬢が訓練に付き合ってくれれば百人力なんですが……、そんなことさせたらノア殿下からドヤされそうだ」


 オリバーがおどけて笑う。

 歯を見せて快活に笑うその顔は、サフィールが幼い頃ここで剣術を教わっていた頃から変わらない。

 サフィールにとってオリバーはとても親しみのある、親戚の叔父さんのような存在だった。


「私はかまいませんよ?」

「ダメですよ、ドレスが汚れちまいます」


 くすっ、と笑うサフィールにオリバーが首を振る。


「じゃあ、ドレスが汚れない程度にやりましょう」

「……本気ですか?」

「本気ですわ。ローガンたちの勉強にもなりますし」

「ふうむ……」


 オリバーは少し逡巡すると、やがて「わかりました」と口の端を上げた。


「サフィール嬢との模擬戦となれば、ウチの連中も士気が上がるでしょう」

「ふふ、久しぶりですわね」

「くれぐれも、やり過ぎないようお願いしますよ?」

「ええ」


 この少女がもっと幼い頃、何度も訓練所を破壊しては修理し……というのを繰り返していたのを思い出す。地面に巨大な穴を開けて、サフィール本人が慌てていたのも今となっては良い思い出だ。

 今では加減することを覚えてくれたので、あんな大惨事にはならないだろう。


 ふ、と一瞬遠い目になってしまったオリバーだが、気を取り直して訓練所へ声を張り上げた。


「ナタリー! 模擬戦だ、来い」

「はっ!」


 オリバーに呼ばれ、一人の女性騎士が訓練所の中央に歩み出る。

 ナタリーは王国騎士団の副団長……、つまり、オリバーに次ぐ実力者ということになる。

 ショートカットの中性的な顔立ちで、男性だけでなく、後輩の女性騎士にもファンが多い。


「サフィール様にお相手頂けるとは光栄の至りです」

「こちらこそ、胸をお借りいたします」


 ふわりとナタリーの元へ飛んでいくサフィールは、『汚すとアンナが口うるさいから』、という理由で一応ドレスを汚さないよう気を付けているようだ。

 地面から十センチほど浮いたまま、サフィールがナタリーと距離を置いた場所で留まる。

 ローガンにゾーイ、騎士数名もサフィールを取り囲むように少し離れた場所で構えを取った。


「サフィール様が模擬戦をされるぞ……!」

「しかも相手はナタリー副団長だ。こんな試合、そう見られるモンじゃない」


 サフィールが訓練所へ舞い降りたことで、周りからどよめきが聞こえる。

 アルヴィーとテオドールはオリバーの側で、その様子を固唾を飲んで見守っていた。


「さ、サフィールさまひとりだよ? それなのにあんなにたくさん……。サフィールさま、大丈夫かな?」

「大丈夫だ。サフィール様は強い」


 一対多数の状況にアルヴィーが非難めいた声を上げる。だがテオドールは落ち着いた声でアルヴィーを宥めた。


「ローガンを相手した魔道士は土魔法と炎魔法、ゾーイは風魔法、でしたわね?」

「はい」


 昨夜の戦闘の確認をするサフィールに双子が肯定を示す。

 サフィールは思案するように下唇を人差し指でふに、と押さえるとすぐに頷いて見せた。


「わかりました。皆様は私を捕縛するのを目標に動いてください」


 騎士団全員の視線が集中する中、オリバーが片手を上げる。


「それでは……、」


 ナタリーが愛剣を握り上段に構える。

 ローガンやゾーイも手を胸の前で組み合わせる。

 そして──……。


「はじめっ!」


 オリバーの声を切っ掛けに、サフィールを囲む全員が駆け出した。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


今回は、騎士団副団長のナタリーが登場しました。

一見クールで冷静な雰囲気の彼女ですが実は……?

次回のサフィールとの模擬戦、楽しみにして頂ければと思います!


☆やブックマークで応援頂けると、とても嬉しく励みになります。よろしくお願いいたします!

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