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【4章開始!】傷ついた僕と、風変わりな公爵令嬢のしあわせな家族の記録  作者: 紅緒
第2章『明日への希望と迫る影』

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28 話・劣勢と、その終わりを告げる声

 依頼されたのは、王都の教会と孤児院を経営出来ない程度に損壊させろという簡単なものだった。

 立ち退きを成功させられるなら、破壊の度合いは問わないと言われた。


 破格の報酬に釣られ依頼を受けたが、それでも念には念を入れるに越したことはない。


 この五日、警備や見廻りがどのように行われるのか、渡された施設の見取り図を手にずっと観察していた。

 すると、ほんの少しの間だが見廻りが手薄になる場所を見付けた。

 焦らずに五日間じっくり偵察し、自分と同じく雇われた男とも相談し、遂に今日実行に移すことになった。


 孤児院には自分が、教会にはもう一人の同業の男が。

 同時に侵入し、施設を破壊しさっさと立ち去る手筈だ。時間はそう掛からない。


はずだった。


『ビーーッ! ビーーッ!』


 敷地に一歩足を踏み入れた瞬間、けたたましい警告音が鳴り響いた。


 男はチッ、と舌打ちをする。


 やはり罠だったか。

 恐らく教会側も同じ状態に違いない。

 ずらかった方が良いかとも思ったが、どうやら結界が張られていて出ることが出来なくなっている。


(結界を破ることは出来るが……、それには少し時間がかかっちまうな)


 男は冷静に思考を巡らせた。

 あれだけの報酬だったのだ、最初からそう簡単にいくとは思っていない。


 どう動くか……、男が考えていると辺り一帯が急に明るく照らされた。

 まるで昼間のような明るさに、光魔法によるものだと理解する。


 孤児院の庭に侵入した男自身の姿も照らし出され、騎士達の視線が一斉に自分に集中する。


「お前の雇い主は分かっている!」


 騎士の一人が声を張り上げた。


「今頃、雇い主の元にも捜索が入っている。抵抗はやめて投降しろ!」

「へっ……、何のことやら分かりませんね」


 騎士の言葉に男は不敵に笑ってシラを切った。


「ちょっと酔っ払って迷い込んじまっただけでさあ」


 両手を挙げて降参のポーズを取りながら、男は相手を観察していた。

 騎士が二人に、黒いローブを纏った男が一人。あのローブの男は魔道士だろう。

 ……ということは、この結界もあの男の手によるものか。


 雇い主がどうなろうと知ったことではないが、ここで自分まで捕まるわけにはいかない。

 何とか結界を抜けて逃げ仰せなくては。


 ならば、とる行動はひとつだ。


 じり、と距離を詰めてくる騎士に両手を挙げたままだった男が、自分の間合いに騎士が入ったのを見計らい片手を大きく薙ぎ払うように振り上げた。


「な、なんだ!?」


 騎士二人の足元の土が抉れ、大きな砂埃が起こる。

 視界を遮られた騎士の戸惑いの声と共に男は駆け出した。


「えっ! ちょ、こっち来たあ!」


 ローガン目掛けて男は真っ直ぐ走って来る。

 それにローガンがぎょっとした声を上げた。


 騎士達もすぐに男を追うが、強い風で土煙を巻き起されることによってなかなか近づくことが出来ない。


「その威力……、魔道具!?」

「当然!」


 詰め寄られたローガンの言葉に、男はにやりと笑って今度は掌に炎を灯す。


「お前をどうにかすりゃあ、結界を抜けられるんだろう」


 男が火の玉を撃ち込んでくるのを、ローガンは氷魔法で中和することで何とか躱した。


(威力も魔力量も普通の魔道士のモンじゃない……、魔道具でカサ増しされてる!)


 ローガンは同じ魔道士として、忌々しい思いで男を睨みつけた。


「魔道具はお前みたいなのが使って良いモンじゃないっすよ!」


 ローガンも氷魔法で応戦するが、男は騎士二人を躱しながらローガンの相手をしている。

 魔道具ありきといえ、ローガンに比べて男の方が戦い慣れているのは一目瞭然だった。


『ローガン、こっちに手練の魔道士がいる』

「こっちもだよ!」


 ペンダントからのゾーイの声に、ローガンが氷の剣を手に応答する。


「おらあ!」


 男から放たれる火球を氷の剣で打ち返すが、難なく躱され火球は燃え尽きて消えた。


「向こうも同じような状況なのかねえ」


 教会へ侵入した仲間が応援に来ないということは、向こうも同じく魔道士とやり合って時間が掛かっているんだろう。


「役人や騎士が来るのは予想してたが、魔道士までいるなんて聞いてねえぜ」


 ぼやきながらも、男は徐々にローガンとの間合を詰めつつある。

 ローガンも健闘しているが、経験値の差が明らかだった。


「結界を解け、坊主。そうすりゃ俺は何もせずトンズラするだけだ」


 火球を氷の剣で打ち落とし続けていたローガンに、男が告げる。

 騎士相手には間合に入らなければ怖くも何ともない。足止めさえ出来れば良い。そう思えるくらい男は自分の腕に自信があった。


 そして残るはこのケツの青い魔道士一人だ。

 手間ではあるが、逃げ仰せられるだろう。


 そう考えていた。


「……んな真似、するワケねえっしょ!」


 ローガンが氷の礫を男に浴びせ、同時に地面を蹴り斬り掛かる。


「退く気はねえか」


 男は素早く掌の炎を剣の形に集約し、ローガンの氷の剣の一撃を受け止めた。


「なら、それどころじゃなくなりゃ良いんだろ!」

「はっ!?」


 ローガンを正面から倒すことを諦めた男が手っ取り早いととった方法……、孤児院の施設に直接火球を撃ち込むこと……。

 これで意識は孤児院に向き、その隙に結界を破って外に出る。


 そう考えていた。


 だが、男は知らなかった。

 男も、その仲間の男も。


 その場に【もうひとり】いたことを。


 自分達のはるか上空から戦況をずっと傍観している者がいたことを。


 そして直接施設を攻撃することが、その時間の終わりを意味するということを。


「やばっ……!」


 ローガンが慌てて氷魔法を施設に向かい放つが一瞬遅い。

 火球は施設の壁に直撃し、炎上する……はずだった。


「そこまで」


 凛とした声が上空から響く。


 炎は施設へ当たることはなく、その前に火の粉も残さず掻き消えていた。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


とうとうバトル回まで来ました!!書くの楽しかった~~。

そして次回はいよいよサフィールが動きます!

次回はサフィール活躍回なので、楽しんで頂きたいです!


☆やブックマークで応援頂けると、とても嬉しく励みになります。よろしくお願いいたします!

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