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【4章開始!】傷ついた僕と、風変わりな公爵令嬢のしあわせな家族の記録  作者: 紅緒
第2章『明日への希望と迫る影』

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24 話・内緒の話(3)

「言っとくが、私もその作戦に参加するぞ」

「え?」

「当然だ。裏で糸を引いてた諸悪の根源はお前だが、その話に乗って悪どい真似するような奴は懲らしめないと気が済まない」

「諸悪の根源って……、まあ間違ってないけど」

「とにかく、私は教会と孤児院に万が一のことがないようそちらに行くからな」


 言い切るサフィールに、ノアは複雑な顔をする。


「別にサフィーが行く必要ないじゃない」

「いや、シスターには世話になっているし私も行く。そもそも、私が『孤児院を拡張する土地が欲しい』と言ったのが原因だしな」

「それはサフィーのせいじゃないよ!」


 それまで穏やかに話していたノアが急に声を荒らげた。だがすぐに隣の部屋に子供達がいることを思い出し声のボリュームを落とす。


「これは私が独断でしたことだから、サフィーがそんな風に捉える必要はないよ」


 確かにシスターからサフィールへ話がいくことは予測していたし、そのサフィールから役所などへ報告があるだろうことも予測していた。

 だけどサフィールを今回の現場に行かせようなんて、ノアは微塵も思っていなかった。

 そもそも、シスターから直接役所に訴えがある可能性だって十分あったのだ。どのみち、懺悔の話が役所に通ればそれで良かった。それだけだったのに。


 サフィールの為に動きたいのであって、サフィールを困らせたいわけでは決してないノアが形の良い眉を下げた。


「わかってるよ」


 途端にしおらしくなった婚約者が面白くて、サフィールは意地悪をする気もなくなり隣のノアに微笑みかける。

 そうだ。わかっている。

 サフィールが土地の話を出した時点で、この男がその望みを叶えようと動くのも、その為の手段を選ばないのも。

 ただ、サフィールが想定していたより行動が早過ぎたのと、予想以上にシスター達に迷惑を掛けることになったので面食らったのだ。


「こうなったものは仕方ない。でも私も出向くからな」

「……わかったよ。サフィーは言い出したら聞かないもんね」

「ふふ、そっちも良くわかってるじゃないか」


 諦めの溜息を吐いてノアが苦笑する。

 もう気持ちの踏ん切りが付いたのか、ノアはこれ以上サフィールを止めようとはしなかった。


「時間は深夜帯か?」

「うん。わざとその時間帯の一箇所だけ見廻りを手薄にする予定だよ」

「深夜ならテオもアルも寝ているし、少し外出するくらい大丈夫そうだな」


 アルに絵本を読み聞かせて寝かせる時間は十分ありそうだとサフィールは安堵し、その慈しみが表情にも表れる。

 それを見詰めるノアはその黒い瞳を眩しいものを見るように細め、(綺麗だなあ)と心の中で呟いた。


「あ、私も同行するからね」

「お前も?」

「うん、サフィーの言う通り、私が今回の諸悪の根源っていうか立案者だし」

「でも一応王子だろう。許可出てるのか?」

「一応って」


 サフィールが当然の質問をする。

 一国の王子が賊を取り押さえる為に深夜にのこのこ出掛けるなんて。しかも賊が来るのがいつなのかも未定なのに。

 それに対しノアは薄い胸板を張ってとん、と自分の胸を叩いて見せた。


「もちろん! 確かに私ってば一応王子だからね。各所から許可はもらってるよ」

「まあ……、周りは騎士や役人で固めるし、安全と言えば安全か」

「そうそう。それに、実は今回の作戦はちゃんとカメーリエ公爵……宰相殿に許可もらってるからね」

「お父様に?」


 ノアの言葉にサフィールが驚いた顔をする。

 青い瞳をぱちくりと開いてノアを見ると、その瞳に自分が映っている事実にノアはどうしようもなく幸福を感じていた。


「私は学園を卒業したばかりで、宰相殿のお手伝いを始めたばかりだから。彼にお伺いを立てるのが筋ってもんでしょ」

「お父様が許可を出したのなら、確かに何の問題もないな」


 現国王の側近である、宰相のカメーリエ公爵はサフィールの父親である。

 その宰相が許可を出したということは、国として今回の作戦を進めているということになる。


「元々、宰相殿もあの商会には目を付けてたみたいでね。潰す機会を窺っていたみたいだよ」

「そうだったのか」


 カメーリエ公爵は頭の切れる人物で、現国王からの信頼も厚く、国王が幼い頃からの良き友人でもある。

 ノアよりは慎重派だが、それでも国の為となるならば手段を選ばないところはよく似ている。と、サフィールは思っている。

 国の為か、サフィールの為かの違いだけだ。


「でもサフィーが参加することには良い顔しないと思うけどね」


 娘を溺愛している公爵を思い、ノアが「私、怒られるんだろうなあ」と苦笑するのに、サフィールも苦笑で返すしかなかった。


「とりあえず、今夜からで良いのか?」

「うん、配置図とか概要の書類を後で届けさせるよ」

「わかった。ウチからも人を連れてこよう」


 かなり壮大な捕物になりそうだと、ノアは実行犯となる人間と商会の人間に心から同情した。


 サフィールには出来るだけ安全な場所にいて欲しいが、それと同時にサフィールが力を振るうのを間近で見たいというのもノアの嘘偽りない願望である。

 相反する想いを抱く自分を我ながら身勝手だとノアは思うが、サフィールの圧倒的な力にノアは昔から魅了され続けている。


「そろそろあの子達の勉強を見に戻るよ」


 話が纏まったところで、ノアが残りのコーヒーを飲み干し腰を上げた。


「ああ、今日は夕飯も食べて帰れるんだろ?」

「うん。家庭教師頑張るから、美味しいご飯楽しみにしてるね」

「わかった」


 笑顔でダイニングへ戻るノアをサフィールも笑顔で見送り、『夕飯は何にしようかな』と献立を考え始めるのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


サフィールの父親について少し出てきましたね。

サフィール父は宰相をしていて、ノアは現在その補佐という立場です。

ノアは既に学園を卒業して、それから宰相のお手伝いを本格的に始めた、という感じですね。

サフィール父も今後登場予定です。

これから、孤児院や教会を狙ってくる相手に立ち向かいます!

サフィールも参加して戦います。

現在既に書き終えておりますが、自分的に好きなシーンになっていますのでぜひ読んで頂きたいです。


☆やブックマークで応援頂けると、とても嬉しく励みになります。よろしくお願いいたします!

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