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皆で確認する

 私もサロモンも、声を掛けてきた人をとりあえず全力の愛想笑いで躱し、神殿を出た。

 ちなみにイヴォンの聖獣は神殿を出たところでやっと絶叫を止めていた。


「サロモンの聖獣はクロヒョウね」


 神殿の敷地内にある庭園の隅っこに置いてあったベンチに四人で座ってクリスタル板を見せ合う。

 家に帰っても四人なのだから家でもいいのでは? と思わなくもなかったけれど、この後冒険者登録をしに行くので、とりあえずここで見ようということになった。皆早く全員分の聖獣データが見たかったのだ。


「クロヒョウのウォルク。活動適性区域は陸上、樹上。ウォルク、この人はリゼット。俺の姉さんだ。リゼット姉さんに近付く危ない奴がいたら俺に教えてほしい」

「ぐるる」


 ウォルクはとても賢いようで、サロモンの言葉に頷くようなそぶりを見せていた。かわいい。大きいけどかわいい。

 性別はオスで、体長は150cm超。真っ黒で艶のある毛並みに瞳の色は青みがかった紫色。

 聖獣の瞳の色は、召喚主の瞳の色とリンクするので、サロモンも同じく青みがかった紫色の瞳をしている。

 ちなみに私とサロモンは姉弟だけれど先祖から受け継いだ色は被らなかったようで、私の瞳の色は深いエメラルドグリーン。サロモンは髪の色がエメラルドグリーン。私の髪の色はミルクティーベージュだ。

 だから遠目に見たら姉弟だとは分かりづらい。しかし近くで見ると二人とも母親似なので顔は似ている。


「リゼット姉さんの聖獣はカピバラだね」

「ええ、世界一かわいい生き物で有名なカピバラのモルンよ。活動適性区域は陸上、水中だと書いてあるわ」

「ついさっきまでカピバラの存在知らなかったよね?」


 サロモンの言葉を聞かなかったことにして、モルンの頭を撫でる。するとモルンは小さく「ククク」という鳴き声を発した。きゅるきゅるもかわいいけれど、くくくもかわいい。

 そんなモルンの体長は100センチほどで、ずっしりしている。泳ぎが得意だということで、足には水かきがある。

 モルンは私を見るとき、だいたい目を細めているので分かりづらいが、瞳の色は私と同じ深いエメラルドグリーン……なんだと思う。

 よく見せてもらえれば……「きゅるるるる」見えないかぁ。


「ティーモの聖獣はオコジョか」


 私にちらっと呆れた視線を送った後、サロモンがティーモに声を掛けた。


「はい。オコジョのネポスです。活動適性区域は陸上、樹上。泳ぐことは可能のようですが水中での活動適性はそれほどでもない、とのことですね。あと今の季節は真っ白ですが暖かくなると茶色になるそうです」

「かわいらしい顔をしているわね」

「はいっ!」


 ティーモの風貌もどちらかというと小動物のような愛らしさがあるので、主従そろってかわいらしい。

 ティーモの瞳は明るい茶色。だからネポスの瞳の色も茶色だ。

 真っ白で小さなネポスがティーモの明るいオレンジ色の髪の毛の間からひょっこり出て来ている様子なんかはもうとんでもなくかわいい。


「それで、イヴォンの聖獣が」

「キィィィ!」

「頼むから静かにしてくれ。えっと、俺の聖獣はクルマサカオウムです。名前はアブル。活動適性区域は上空。夜明け頃や日没頃に絶叫しがちだというデータがあるそうなので……今から謝っておきますうるさかったらごめんなさい」


 夜明けでも日没でもない現時点で叫びがちなんだけど大丈夫かしら?


「まぁ防音魔法とかもあるし大丈夫じゃないかな」


 じゃあ大丈夫でしょう。かわいいし。ピンクで。

 瞳の色は……何色だろう? ちょっと見えない。そもそもイヴォンとはそれほど接点がなかったので、彼の瞳が何色なのかを知らない。

 サロモンの隣にいるのを見ることは多かったから茶髪であるということは知っていたけれど。

 ちらりと彼の顔面に視線を送ると、青……いや、藍色の瞳と目が合った。


「イアァァァァ!!」


 めちゃくちゃ叫ぶじゃないのアブル。


「ふふっ」

「すみません」


 私の小さく漏れてしまった笑いを聞いたイヴォンが申し訳なさそうに眉尻を下げた。


「活動適性区域が陸上、樹上、水中、上空でバランスもいい感じだな。神殿の別館に冒険者ギルド直通の移動用魔法陣があるからそれ使って行こうか」


 サロモンの一声で、私たちは立ち上がる。

 冒険者ギルドで冒険者登録を済ませ、完全移住の手続きまで済ませれば、この国でゆったり冒険者生活を送ることが出来る、とサロモンが言っていた。

 やれ茶会だ、やれ夜会だ、金だ地位だ名声だ、そんなあちらの貴族社会と違ってこちらではゆったりのんびり生きようと四人で約束したのだ。

 かわいい聖獣に囲まれてゆったりのんびり生活が出来るだなんて、夢のような話じゃないか。


「きゅるるる」

「ああかわいい」


 モルンとちらっと目が合ったと思ったら「きゅるきゅる」言って目を細めてくれている。かわいい。

 撫でまわしたい気持ちしかないけれど、神殿の別館に辿り着いていたので我慢するしかない。かなしい。


「さっきポロス学園の学生がワイバーンを召喚したらしいぞ」


 私たちが神殿の別館に足を踏み入れたところで、そんな噂話が聞こえてきた。

 サロモンもそれが聞こえていたらしく、少し驚いた顔をしている。

 そして自分たちの聖獣を見て言うのだ。


「せっかく買った家を買い替えなきゃいけない大きさの聖獣を引かなくて良かった」


 と。

 ……確かに。

 ワイバーンの召喚はすごいことなのだろうけれど、さっき見たあの家にワイバーンは……きっとちょっと無理。


「こちらでは学生さんでも聖獣を召喚するのね」

「たしかポロス学園は生徒全員聖獣召喚が義務付けられてたんじゃなかったかな」


 そんな私の呟きに、サロモンが答える。

 生徒全員聖獣召喚が義務……ということは学園内には聖獣がたくさん……!


「私、この国に産まれたかったわ」

「確かに」





 

読んでくださってありがとうございます。

ブクマ、評価、いいね等もありがとうございます。


作中に出てきたポロス学園に関するお話は今後別の作品として出現します。

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