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誇りを胸に〜決闘へ

「よう!」

入学式はサクッと終わり、講堂から教室へ戻る途中にバベルは後ろから声をかけられた。

「うん?え〜と、確か・・・」

声の主は、金髪逆毛のクラスメイトだった。

「バットだろ?バット・ウェルズ」

「お、もう名前を覚えてくれたのか。嬉しいね」

バットは出会って間もないバベルに対し、馴れ馴れしく肩などを叩くがバベルは特段気にする様子はない。

「俺の前の席の奴じゃん。これからよろしくな」

「こちらこそ。よろしく〜」

二人は握手を交わす。

会話を交わしながら、教室に戻る二人。その途中でバットはある質問をする。

「ロクハラって、あまり聞かない名前だよな?お前、もしかして『転界人』だったりする?」

「・・・・・・」

バベルはバットの質問に一瞬口をつぐむ。


転界人。

はるか昔の時代より、この世界に度々訪れる特殊な力や知識を持った人々の総称である。

その力や知識は、この世界に似つかわしく、まるで『異なる世界』からやってきたのではないかとこの世界の人々は考えるようになった。

時には、風変わりな格好でフラッと唐突に現れることもあり、時には、その力や知識を持って生まれることもある。

転界人はその力や知識を与え、人々に幸福や技術の進化を与える一方で、混乱や争いを与えることも多々有った。


「俺は違うさ。知り合いにいるけどな」

「・・・ふ〜ん」

バットは遠い目をして歩くバベルを横目で見ながら相槌を打つ。

それ以降は無言で歩く二人。バットは観察するような目でバベルを見る。

「ん?なにか聞きたいことでもあるのか?」

「い、いや、別に」

なんて二人で歩いていると目の前に、何やら揉めている一団がいた。

レイニーとハンナが金髪の生徒たちに責められていた。

「お、あれはナジェータ伯爵家の三男坊だぜ。名前はユリウスって言ったか」

先頭に立って二人の女子に何やら激昂している少年を指してバットが言った。

「知ってるのか?」

「顔を知ってる程度だけどな。あの二人とはどんな関係かは知らないがな」

「じゃあ、聞いてみるか」

「は?」

端的に呟いたバベルの言葉にバットはギョッとした。


「やめろよ、ユリウス!レイニーが嫌がってるだろ!!」

「様をつけろ!リバーマン!お前も、事情を知っているなら、口を出すな!」

ユリウスとハンナが主に言い争っていた。

傍から聞いている分には、何を言い争っているのかわからなかった。

「!だから、あのことはレイニーを責めても・・・」

ハンナが苦々しい声で反論しようとしたとき、


「なんの話?」

脳天気な声が割り込んだ。


「バベル・・・」

「また、貴様か!!」

朝のこともあり、ユリウスはバベルの顔を睨みつけた。

「お前には関係のないことだ!さっさと失せろ!」

「関係ないって言われても、こんな通り道でクラスメイトが言い争いしてたら、気にもなるだろ?それに、邪魔されたくなかったら、人気のないところでやれよ。この場所を選んだのはお前だろ?俺だけのせいで、邪魔されたと思われるのは心外なんだけど」

バベルがつらつらと反論すると、ユリウスの顔はみるみる内に赤くなっていった。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

声にならない怒りの声がユリウスから漏れる。

この瞬間、怒りの矛先はバベルへと変わった。

それを見逃さなかったのは、

「行こう、レイニー」

「え!?でも・・・」

「どうせ、何言っても、今は話にならねえよ」

そう言って、ハンナはレイニーの手を引いてその場から離れた。

レイニーは心の中で「ごめんなさい」とだけ唱えた。

「どこで何をしようと、お前のような落ちこぼれに非難される覚えはない!」

「落ちこぼれ?」

「ああ、そうだ!!リリクルー4など、この学園において最底辺ではないか!」

そういえば、そんなことを教師も言っていたなとバベルも思い出していた。

「別に、俺はどう思われてもいいさ。実際、俺は回復魔法を使うことができないわけだし」

「回復魔法が使えないだと?初級中の初級魔法だぞ!?本物の落ちこぼれだな!子どもでさえ使える魔法だぞ!」

「はっきり言うなよ」

流石にバベルもズバッと言われてムッとした。

「貴様のような落ちこぼれはこの名門にはふさわしくない!今からでも、遅くない!早々にこの学園を去ったほうが懸命なのではないのか!?家族ともども己の身の程をしれ!!」

ユリウスはバベルを嘲笑と侮蔑の目を向け言い放った。

「うるせえな」

言い放ったと同時に、ユリウスはバベルにがっしりと体をロックされた。

バベルは少しだけムカついた。

「回復魔法が使えないが何だってんだよ!!」

「え?」

その言葉とともに、ユリウスはバベルの肩に担がれそのまま上半身と下半身が逃げられないようにバベルの両腕に捕らえられて、

「な、あの技は・・・、伝説の巨人族が大木を担ぎ上げてそのまま真っ二つにおる姿を模して作られたという『タイタニア・バックブリーカー』!!」

ユリウスの取り巻きの一人が、バベルの技の解説をした。

「ここは、名門だろ!?名門なんだろ!?だったら、俺のような落ちこぼれも立派な回復術師に育ててみろよ!!自力でもどうにもならねえからこの学校に来てんだよ!できないことを習いに来るのがそんなに悪いことなのか!!あぁん!!」

落ちこぼれと言われるのはいいが、勉強の場を奪おうとすることにムカついているみたいだった。

タイタニア・バックブリーカーで締め上げながら、バベルはユサユサと振動も加え地味なダメージを与える。

「ああああああああああああああ!!」

ユリウスは苦悶の表情を浮かべる。

「俺はなぁ、自分の才能のなさは自覚してんだよ!家族もそれを承知でここに通うことを許可してくれたんだよ!こっちの事情も知らないくせに、好き勝手なこと言ってんじゃねぇよ!!」

「ああああああああああああああ!!」

バベルの言葉が耳に入らないほどにユリウスが痛みで悲鳴を上げる。

「以上!」

ポイ。

言いたいことを言ってスッキリしたのか、バベルはユリウスを雑に放り投げる。

ドサァ・・・、と、地面に転がされたユリウスはピクピクと痙攣している。

「行くか、バット」

「え、この状況で・・・」

「もう、用はないだろ?いつの間にか、レイニーたちもいないし」

「ま、そうだな・・・」

あっけにとられるユリウスの取り巻きたちを尻目に、二人は教室に戻る。

「え・・・」

「あ、おい・・・」

バベルに何か抗議をしようとするが言葉も出ず、痙攣するユリウスを交互に見て、どうするか迷っている。

「・・・・・・だ、」

バベルはなにか引き止められたと思い、振り向く。

「・・・決闘だ、貴様ぁ!!」

痛みに耐え、起き上がろうとするユリウスを取り巻きたちが支える。

「もう、我慢ならん!」

「お前がなにか我慢してたのか?」

「うるさい!ここまで、愚弄されたとあってはナジェータ家の名折れ!この僕が、直々に貴様の立場というものを教えてやる!」

「別にいいよ」

「いいのかよ!」

快諾するバベルに、バットは呆れた表情をする。

「メリットないだろう」

「暇だし」

ユリウスは取り巻きたちに肩を担がれながら立ち上がる。

「二時間後、学園の野外実習場に来い!そこで決着つけてやる!!」

「なんで二時間後なの?」

疑問を口にすると、

「我々はこのあと、履修科目についてのガイダンスがある!」

真面目な回答だった。

「へ〜。あれ、俺達は?そんな話合ったっけ・・・」

バベルはバットに聞くと、

「いや、俺等は教室に戻って、もらった教材を持って帰るだけ。メリル先生ももう帰ったらしいぞ」

「あ、そうなの」

バベルは格差というものを、わずかだが感じた。

「ふん!これが我々との差だ!学園から受ける期待の差というものだ!」

勝ち誇った顔をするが、肩を借りている姿はなんとも情けないものだった。

何はともあれ、決闘が成立してしまった。

両者とも、その時間が来るのを待つだけとなった。


続く

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