リリクルー4〜クラスメイトたち
クラスメイトが登場します。名前を間違えないようにしないとね。
レイニーは道中こんな話をした。
「通常、各コースは3クラスまでしかないの。それぞれのコースは特徴があるのは知ってるでしょ?ロゼルは剣術や武術の鍛錬に特化、デルフィンは魔法、ダリアスはその2つを複合的に学べる難関コース、リリクルーは回復魔法、支援魔法でしょ?」
「ああ、だから俺はリリクルーに入ったんだ?」
その答えにやや眉をひそめつつも、レイニーは続けた。
「ここは王国きっての名門校。たくさんの貴族の令息、令嬢がその門をくぐるわ。そんな中、リリクルーを志望するのはどんな生徒が多いと思う?」
「そりゃ、俺みたいに回復魔法を覚えたいやつだろ?」
「あなたがどこまで本気で言っているのかわからないけど・・・」
呆れたようにため息をついてから続ける。
「正解は貴族の令嬢たちよ。他のコースと比べて、危険で過酷な授業もないし、実習も希望制。正直、この学園を卒業したという実績のために通っているといってもいいわ」
そこまで話したあと、二人の目の前にみすぼらしい納屋が。
「ここが私達の教室」
蔦や苔に覆われたレンガ造りの少々大きめな納屋を見つめた。
ガチャとドアを開けるとそこはまさに教室。
机と椅子が並び、前方には黒板と教卓。最低限のものしかない作りだった
そして、そこには6人の生徒が。
「レイニー!」
その中の一人の少女がレイニーに駆け寄る。
「ユリウスのやつになにかされなかったか?なんで、あたしを頼らねえんだ!」
「いいの。私の家の問題だから。それに、このバベルくんが助けてくれたから」
「「えぇ!?」」
びっくりした声が2つ重なる。
「なんで、お前が驚くんだよ!?」
「助けた記憶がないからかな」
「なんだそりゃ」
バベルの返答に呆れた声を上げる。
少女はバベルよりも明るい赤髪が特徴で、レイニーよりも背が高く、体つきも格闘技の心得があるのか同年代の女子よりも逞しかった。
「まあ、いいや。あたしは、ハンナ・リバーマン。レイニーとは幼馴染なんだ」
「俺はバベル・キル・・・、じゃなくて、バベル・ロクハラ。よろしく」
気を抜くと本名を言いそうになる。
が、レイニーもハンナも特に気にする様子もなかった。
「は〜い、席に〜、ついてくださいね〜」
柔らかい声とともに小柄でメガネをかけた女性が入室する。
制服ではなくフォーマルなスーツを着用し、大きな眼鏡が特徴的だ。
「座席に〜、名前が〜、書いていますので〜、その席についてくださいね〜」
ずいぶんとのんびりとした口調だ。
バベル、レイニー、ハンナも着席をする。
バベルは真ん中の列の一番後ろの席だ。
レイニーは右の列の一番前、ハンナはその後ろだった。
全員が着席したのを確認してから、教卓に立った女性が言った。
「皆さん〜、はじめまして〜。わたしは〜、一年間〜、このリリクルー4の担任になる〜、メリル・ゼルバーグです〜。このクラスは〜、落ちこぼれの〜、方たちが〜、在籍することになってますので〜、この学園の〜、最底辺クラスという〜、ことになります〜」
メリルののんびりとした毒舌発言に一斉にギョッとした。
「あ、でもでも〜、みなさんには〜、ほかのリリクルーの生徒たちの〜、補充〜要員〜という〜、重大な〜、役目もあるので〜、めげずに〜、勉強〜しましょう〜ね〜」
補充要員?
そういえばとバベルは思い出した。
そう、リリクルーは退学者が多いという話なので、その生徒数を維持するためにこのクラスが存在するということだ。
先程から落ちこぼれだの、補充要員だの、散々なことを言われているが、バベルにとって入口などどうでもよかった。
彼にとって一番大事なのは、回復魔法を覚えること。
それだけだった。
「さ〜、さ〜、入学式の前に〜、出席を〜取りますね〜。いくら〜、落ちこぼれの〜、ろくでなしの〜、みなさんでも〜、わたしの〜大事な〜生徒さんなので〜、まずは〜、名前を〜、確認させて〜くださいね〜」
教卓から生徒たちに微笑みかける。
「あ〜、特に〜、自己紹介の〜、時間とか〜、めんどくさいので〜、取らないので〜、皆さんは〜、この時間を利用したり〜、後で聞くなりして〜、地道に〜、覚えましょうね〜」
言わなくていいことを言わないといけない教師なのかな?
バベルを含め、生徒8人は思った。
さて、そんな8人の生徒たちとは、
「レイニー・クリスタリアさん〜」
「はい」
先ほどバベルと出会った青髪の少女。
「ハンナ・リバーマンさん〜」
「は、はい・・・」
レイニーの幼馴染と名乗る、赤髪の少女。教師の言葉に、一番引いている。
「ミリー・シュガーさん〜」
「はい」
黒髪のメガネの少女。姿勢が正しく、能面のような無表情。
以上、右列の女子三名。
「ミロス・リグレッターくん〜」
「は、はい。ごほ、ごほ・・・」
顔の半分をマスクで覆う、黒髪の小柄な少年。返事とともに咳き込んでいる。
「バット・ウェルズくん〜」
「は〜い」
逆だった金髪が特徴的な少年。やる気がないのか気だるそうだ。
「バベル・ロクハラくん〜」
「はい!!」
赤髪のイカれた少年。やる気いっぱい。
真ん中の列、男子三名。
「アンヴィアン・コルネオさん〜」
「はい」
小柄で紫髪をツインテールの少女。体格の割には、発育の良い胸が特徴的だ。
「セリーヌ・アップルさん〜」
「はい」
緑色の前髪がきれいに切りそろえられたタレ目の少女。特徴があまりないのが特徴。
「本来なら〜、もう一人〜、いるのですが〜、諸事情により〜、遅れて〜、入学しますので〜。現時点では〜、リリクルー4は〜、これで、全員です〜」
左列が終わる。
「さ〜、まずは〜、この8人で、くじけることなく〜、お勉強を〜、頑張って〜、人並みになりましょう〜」
なんとも、「はい!」と言いづらい言葉だったが、
「はい!!!!」
手を上げて、己のみなぎるやる気を溢れ出させていた少年がいた。
そう、バベルだった。
本来なら、心が折れてもおかしくない教師の言葉だったが、そんなものは彼にとってなんてことはない。
なぜなら、事実だから。すでに、思い知っていたからだ。
自分には、まったく回復魔法の才能がないということに。
続く
最高傑作バベルや生まれながらの殺人兵器などとあらすじで書いてますが、未だにその描写が中々できなくて悩んでます。じわじわ、彼の頭がおかしいということを感じていただくのが、一番なのかもしれません。