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悪意の策略〜場違いなモンスター『達』


「お前ら、とんでもねえ事してくれたな!!」


「あ〜、そう言いたかったんだな・・・」

「え〜、絶対干物って言ったわよ!!」

「全然、わからなかったわ」

クイズ『アレンくんはなんと言っているでしょうか!?』は全員不正解で終わった。

アレンはヒリヒリする口内と捻れてしまった体の痛みに耐えながら己の誇りを保とうとしている。

「覚えてろよ!こんなことしてで済むと思うなよ!!」

屈強な部下たちを引き連れておいて無様に敗北したのにこの言い様。

三人は哀れみな目を向けていた。

「俺のバックに誰が付いてると・・・」

「覚えてて良いんだな?」

「「「え?」」」

アレンが渾身の恫喝を決めこもうとしているのを遮って冷たく言い放つバベル。

実は少しイライラしていた。

実習の邪魔をされ、変なクイズに付き合わされ、理由がわからない口上を聞かされているのだ。

「覚えてて良いんだよな?今後、俺の成績が悪くてムカついた時、お前の顔を思い出して良いんだな?学食で好きなカレーが食えなくてすべてを滅ぼしたいと思った時、お前のことを思い出して良いんだな?馬鹿な冒険者たちに絡まれてぶん殴る時、お前の顔を思い浮かべながらぶん殴って良いんだな?道の真ん中でモンスターの糞を見つけて処理をする時、お前の名前を心の中で唱えて良いんだな?」

つらつらと述べるバベルに対し、

「どういう脅しだそれは!!」と言いたかったアレンだが・・・、

「え・・・、いや・・・、あ・・・」

至って真面目な目。堂々たる佇まい。怒気をはらんだ口調。

それらに怖気づいてしまうアレン。と、いつの間にか意識を取り戻していた部下たち。

「アレン・ウォーカー」

「は、はい!?」

「覚えたぜ・・・」

「い、いや、ほどほどに・・・」

名前を覚えられることがこんなにも恐ろしいこととは。

「いや、怖!!」

「・・・陰険ね」

ピリピリのバベルとガクブルのアレン一行を尻目に、女子たちは素直な感想を述べた。

先程まで、嫌悪の対象だったアレンたちが不憫に思えた。

・・・いや、やっぱりアレンたちが可哀想と思うのは違うなと思い直した。


「な、なに、やってんだよ、あいつ等・・・」

洞窟の騒動をこっそり監視していたものがいた。

バットだった。

解体屋『ウォーカー』の新入りとして潜入し、この仕事に参加していた。

バベルが暴れ出して、早い段階で応援を呼んでくると良い、さっさと離脱していた。

「さて、これから、どうするかな・・・」

『あの男』と接触があったので、一応今日は真面目に監視しようと授業をサボってやってきたのだが、ひとしきりバベルの暴行奇行も確認できたし、このまま帰ろうかと思ったのだが、

「おい、新入り」

後ろから小声で話しかけられた。

ウォーカーの人間だった。

バットと同様、見つからないように身を屈ませていた。

「くそ、あのガキ、舐めやがって!」

「そうですね〜」

バベルを睨みつけるその男に適当に返すバット。

早く帰って、寝ようと思っているので。

「安心しろ。さっき、ゾロモンさんに応援のブルーレターを送っておいたからよ」

「え?ゾロモン・・・さん?」

不穏な名前が出てきた。何かと評判が悪いゾロモン家が関わっているということなのか。

嫌な予感がしてきた。


「ブオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


洞窟内を震わせる雄叫びが響く。

「なんだ?」

「ひっ!!」

「!?」

バベルたちもその雄叫びを聞き、何事かと当たりを見渡す。

「な、なんだ?なんだ?」

アレンもその雄叫びに身を震わせる。

間もなく、アンヴィアンが出てきた洞穴から、男が出てきた。

先程、アンヴィアンに暴行を働こうとした男だった。

アンヴィアンは一瞬嫌悪の表情を見せるが、それどころではない。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

血塗れだった。

「た、助けて・・・」

それだけ残して、全員の目の前で倒れ込んだ。

異様な状況にもかかわらず、ミリーは男の容態を見に駆け寄った。

「気絶しただけ・・・、でも危険な状態よ」

出血と打撲で男はボロボロだった。

「へ〜・・・、お前のスライムってこんなこともできるんだな」

「そんなわけ無いでしょ!ウチのスライムたちはか弱いのよ!」

バベルの言葉に否定するアンヴィアン。

「な、なんだよこれ!?」

アレンは血塗れの部下に声を震わせるだけだった。

そして、ズシン!ズシン!という地響きを耳にする。

音は大きな洞穴から聞こえてくる。

一同が注目していると、その大きな姿を表した。

「な!?」

「こ、こいつは・・・!?」

それは、全身緑色の体毛で覆われていた。

太い両腕と敏捷性を感じさせるしなやかな両脚。屈強な胸板を見せつけるかのように堂々と歩き、その姿を表した。

「メ、メイプルリーフコング・・・!?なんでこんなところに・・・」

アレンはその姿を見て驚く。

このモンスターの生息地域はここよりも遠方の森の中であり、こんな洞窟の奥にいるハズがなかった。

アレンは家の仕事柄、モンスターの知識はあったので間違いなかった。

「ま、まてよ・・・」

アレンは最近、このモンスターについての話を聞いたことがあったことを思い出した。

餌を求めて、メイプルリーフコングが近くの農場を襲ったこと。

冒険者ギルドでそのモンスターを捕獲し、元の森に返す案がでていたこと。

そのクエストに『あの男』が参加していたこと。

そして、

『奥の手を用意しといてやる』

と、言われたことを。

「〜〜〜〜〜〜!!あ、あの野郎・・・!!」

本来ならば敬語を使うべき男の顔を思い浮かべながら、顔を歪ませる。

ワインズ・ゾロモン。

あの男の仕業だとわかった途端、怒りがこみ上げてきた。

どんな方法でこのモンスターをつれてきたのかわからないが、自分たちにも危険が及ぶ可能性があるのにこんな危険なモンスターを解き放つなんて正気の沙汰ではないとアレンは怒った。

姿を表したメイプルリーフコングは、広い空洞でたくさんの視線に晒されていることに特に不快感を示すことなく周りを見渡した。

ギロリと赤い瞳がアンヴィアンの姿を捉える。

「ひっ!」

その目に身が竦み体をこわばらせたその瞬間、両足に力を込め、一気に彼女の傍まで飛びかかり、大きな両腕を振るう。

「・・・がっ!?」

その腕はアンヴィアンを捉え、うめき声を挙げさせ、その小さな体は弾き飛ばされる。

「!!」

あまりにも一瞬のことであり、ミリーはいきなり吹き飛んだアンヴィアンを視界に捉えることはできなかった。

だが、

壁に激突寸前の少女の体を受け止める少年。

「大丈夫か?」

バベルだった。

「かは、かは・・・」

吐血し、体が痙攣しているアンヴィアン。

「やばそうだ。ミリー!」

バベルは同じく目にも止まらないスピードでミリーの傍による。

「とりあえず、どこか洞穴に!ここじゃよく見れない!」

ミリーの言葉に頷くバベル。そして、ミリーにアンヴィアンを預ける。

「先に行ってろ!」

背後から迫っていたメイプルリーフコングの拳が迫っていた。

それを片手で受け止める。

「あのさ!通じるかわからないけど、一応言うぞ。連れが大怪我したから処置しなけりゃいけない。ミリーがどんな処置するか興味があるからさ。ちょっと待っててくれない?」

「ブオオオオオオオ!!」

「やっぱ駄目か」

メイプルリーフコングの拳が次々襲ってくるが、バベルはいずれもそれらを捌いていく。

その光景にあっけにとられていたウォーカーの面々。

そんな彼らにバベルは声を掛ける。

「おい!お前らもさっさと隠れとけ!」

「た、助けてくれるのか・・・?」

「せっかく、治療したんだ!ミリーが教えてくたことが効果あるのか、しっかり見ときたいから、余計な怪我すんな!」

モルモット扱いだが、その言葉に素直に頷き、それぞれが洞穴に隠れていく。


「アンヴィアン!アンヴィアン!」

ミリーは声を掛け続けるが反応はない。

「!!・・・いけない!心肺停止・・・!?」

呼吸音も心音もしないことに青ざめるミリー。

ポーションも先程の手当ですべて使い切っていた。

この洞穴にいるのは自分たちだけなので他の人たちは頼れない。

自分の回復魔法では効果が期待できない。

どうすれば良いのか?

考えが纏まらず頭の中で思考がグルグルしている。

目の前が真っ暗になろうとした時、

「おい!ミリー!!」

呼ばれた方に顔を向ける。

光が見えた気がした。


続く

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