少し昔の夢〜思い出の雑談①
「ダンジョンの〜♪中か〜ら♫、」
バベルは右手をグーパーさせながら、草介の前で歌う。
「ドラゴン出たよ♬。ピッピッ(ボワッ)♪」
「うわ!」
「ファイヤードラ〜ゴン〜♬」
歌とともに親指を突き出し、そこから小さな炎を出すバベル。
それに驚く草介を気にせず、続ける。
「ダンジョンの〜♪中か〜ら♫、ドラゴン出たよ♬。ピッピッ(ピチョン)♪」
「わ〜」
「ウォータードラ〜ゴン〜♬」
続いて人差し指を突き出し、小さな水の玉を発生させる。
「ダンジョンの〜♪中か〜ら♫、・・・」
今度の水の玉には驚くものの危険度は低そうなのでただ見ているだけの草介。
「ドラゴン出たよ♬。ピッピッ(ヒュルルル)♪」
「・・・・・・」
「ウィンドドラ〜ゴン〜♬」
中指から旋風が起こる。
そうして、次は薬指から石塊が発生し、「グランドドラ〜ゴン〜♬」。
次は、小指から稲妻が発生し、「サンダードラ〜ゴン〜♪」と続き、締めくくりに入る。
「ダンジョンの〜♪中か〜ら♫、ドラゴン出たよ♬。ピッ(ボワ)ピッ(ピチョン)ピッ(ヒュルルル)ピッ(ゴロッ)ピッ(ビリリ)♪」
それぞれの指に炎などを宿し、五本の指が開かれた。
「全滅しました〜♬」
「悲しい歌だったの!?」
最後の歌詞が物騒だったので、そう言わざるを得なかった。
「歌詞はどうでも良いんだよ。で、どうだ?魔法が使えそうか?」
「え?」
「え?じゃなくてさ」
バベルはなぜこんなことをしているかと言うと、草介から魔法について教えてくれと言われたからだ。
自分の中に秘められている能力を調べるために、バベルに「なんかしてくれ」とアバウトな発注をした。
「これは、魔法の属性を楽しく調べたり鍛えたりする手遊びなの。基本属性が火、水、風、土だから、とりあえず最初の四本指の魔法の出具合で得意な属性がわかったりする」
「五本目は?」
「・・・好きなやつ?かな」
そのあたりは何でも良いみたいだ。
「お前はどの属性が得意なんだ?」
「俺は、逆に苦手な属性がないんだよな〜」
バベルの言葉に、草介は先程の手遊びの光景を思い出す。
確かに、バベルはどの属性の魔法も淀みなく発生させていた。
草介はこの世界の常識にはまだ疎いが、目の前の子どもはとんでもない才能を持っているのかもしれないと感じてしまった。
ここで、草介は一つ思いついたことがあった。
「なぁ、雷の魔法はどれだけ弱く出せる?」
「は?」
「『これ』で、背中を触ればいいんだな」
「そう。俺が離せって言ったら、すぐ手を離せよ」
「命令口調が腹立つな」
草介は背中を露出させて寝転がっていた。
バベルは言われたとおりに手を背中につける。
すると、
「お!あ〜!ちょうどいい!ピリピリ来てる!」
「?」
歓喜の声を上げる草介に、眉をひそめるバベル。
バベルは雷魔法を付与させた両手で触っているだけだった。
普段の威力なら、生物は一瞬にして感電死するレベルだが、そのレベルを極限までに下げている。
丁寧に丁寧に手加減をした。
近くにいる小動物で実験を繰り返し、ようやく草介が触れることができるレベルにまで弱くすることができた。三回くらい激しい火花が散った。
要するに、バベルを低周波治療機代わりにしようと思いついたのだった。
連日、麓の村でマッサージをしていたので草介自身も披露が溜まっていたのだ。
心地良い電気に血行が良くなっていくのを感じる草介。
「う〜ん・・・」
破顔してリラックスをする草介とは対象的に顔を歪ませるバベル。
「なんか・・・、魔法を『弱く』出すって、結構難しいな・・・」
ずっと、力加減を意識しなければいけないことの難しさを感じていた。
「がんばれよ〜。自分の力をコントロールすることは大事だぞ〜」
すごく適当な返しをする草介。制御を失った雷魔法を喰らう未来が見える。
「で、なんか、魔法に目覚めそうか?」
「う〜ん・・・、どうだろ・・・」
バベルの問にそれだけ応えると、またも「あ〜」と脱力した声を出す。
その姿を見て、バベルは少しだけ魔法の威力を上げた。気づかれない程度に。
「草介は・・・、あれだな『防御魔法』が得意そうだな」
「へ?」
ポロっとでた呟きに反応する草介。
「え?何?どういうこと?」
「臆病だし、面倒くさがりだし、能天気だし」
「ほっとけ。え、性格でなんか決まるの?」
「いや、根拠はないみたいだけど、『得意魔法占い』ってやつがあってさ、攻撃魔法、防御魔法、回復魔法、結界魔法、隷属魔法、付与魔法とか色々あるけど、そいつの性格から得意な魔法がわかるってやつ。その逆のパターンもある」
バベルの話をふむふむと聞く。
「防御魔法が得意なやつは、臆病で面倒くさがりだったりとか。結界魔法だと、内向的だけど自分の世界をしっかり持っているとか。付与魔法は、思い込みが激しいとか・・・。色々ある」
その話を聞き、
「だったら、さっきの手遊びより、そっちの話を詳しく聞きたかったんだが」
確実にこの占いの話のほうが興味を惹かれていた。
「おまえは、攻撃魔法が得意だろ?なんか、物騒だし」
「回復魔法以外は、全部得意だ」
「自慢かよ」
そう駄弁りながら、時間はゆったりと過ぎていった。
そんな、何事もない只々会話を楽しんだ思い出だった。
続く




