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新しい出会い〜初めての実習へ

実習へ向かう馬車の中には、六人の生徒。

「それでさ、急にこのグループに入ることになってさ・・・」

「・・・・・・」

「確かに、そのミロスって奴、いつも具合悪そうだからな」

「・・・・・・」

「まあ、俺もできることは少ないし、どこのグループに入っても一緒だろうし」

「・・・・・・」

「でも、やるからには真剣にやるからな。期待しててくれ、少しだけ」

「・・・・・・」

「なあ、聞いてるか?」

「なぜ、僕に話しかける!?」

バベルは、向かい側に座っているユリウスに話しかけていた。

ユリウスからしてみれば、因縁の相手が話しかけてくるものだから、怒りも湧いてくる。

「他に知ってる奴がいないしさ」

クラスメイトのセリーヌは馬車酔いをしてしまい、話すどころではなかった。

窓際で景色を見ながら、うんうん唸っていて、時々バベルが背中をさすっていた。

「・・・ごめんねぇ」

「なにが、そんなに苦しいんだ?」

乗り物酔いの経験がないバベルは心底疑問だった。

「そうじゃないだろ!!散々に、僕に恥をかかせておきながら、謝罪の一つもないのか!?」

「ドゥゲッツァしたやんけ」

「したけどな!」

その後に、担任教師に目を付けられ、日々厳しい指導を受けていること。実家に早々と面談を取り付けられ、父に厳重に注意されたことはバベルも知る由はなかった。

「まあまあ、過去のことはとりあえず水に流して、今はこの実習にお互いに全力を尽くそう!実際に、俺はお前のことも、ドゥゲッツァのことも忘れかけてたし」

「貴様は忘れるなよ!?」

バベルの態度に、ユリウスは大声を上げる。

ガン!!

そんな二人に苛立つように、黒髪の髪を束ねた少女が『それ』を床に打ち付けて、バベルとユリウスを睨みつける。

「おまえたち、少しは静かに出来ないのか」

「ああ、ごめん、ごめん。初めての実習で、つい・・・」

なあ?とユリウスを見るが、

「す、すまなかった。気をつけよう・・・」

明らかに怯えた表情で黙り込む。

「なあ、あれ、誰だ?」

青ざめた顔をするユリウスに尋ねる。

「お前、知らないのか?・・・後、聞くならもう少し小声で話せ」

バベルはこくこくと頷く。

「彼女は、ロゼル1のスミレ・スタークラウドだ。剣術の名門、スタークラウド家の令嬢だ。彼女自身も剣の腕は確かなもの。僕たちの学年において、最強の剣士だ」

バベルは改めて、スミレを方を見る。

背筋を伸ばし、姿勢正しく座り、目を瞑って集中している。凛とした表情で話しかけにくい雰囲気だった。

「なあなあ、それって・・・」

が、バベルには関係のないことだった。

話しかけられたスミレは眉を釣り上げてバベルを見る。

「『フウリンカザン』って、書いてるのか?」

スミレの持つ『それ』、刀を指した。正確には刀の柄に刻まれた文字だった。

「・・・確かに、この刀は我がスタークラウド家に伝わる名刀・風林火山。驚いたな、この文字を読めるものがいたとは」

「昔、習ったことがあってね」

サラッと答えるバベルだが、その話を聞いていた他の生徒たちは怪訝な顔をするも、

「まあ、いい。お前の言うとおり、今回は今年度の最初の実習だ。浮かれすぎて、我々の足を引っ張らないでもらいたい」

スミレは学園の最底辺と言われる、リリクルー4の二人を見る。

一人はうるさい落ちこぼれ。一人は馬車酔いをしている落ちこぼれ。

スミレにはそう写っていた。

「ああ、大丈夫、大丈夫。俺、《ヒール》とか使えないから、ポーションを配るだけ。みんなの実習の手伝いとかするつもりはないから。だから、成功とか失敗の影響はないよ」

「ん?・・・そうなのか?いや、それはそれで、お前は大丈夫なのか?」

思っている以上のポンコツ具合にスミレは呆れを通り越して同情した。

「まあ、良いじゃないか」

スミレの隣に座る栗色の髪の少女が口を出す。

「ルアン」

スミレにルアンと呼ばれた少女は続ける。

「今回の実習は、下級モンスターの討伐。ロゼル1の私達がいれば、事足りるさ。《ヒール》もポーションも出番はないさ」

ルアンの見下した瞳は、暗に「お前たちは必要ない」と言っていた。

「我々は、役に立つぞ!」

デルフィン2のユリウスはアピールを開始する。

「わかっているさ。後衛は任せた。やはりリリクルー4の出番はなさそうだな」

ルアンの言葉に同調するように、勝ち誇った顔をするユリウス。

しかし、バベルの言葉は、

「あ、本当!?それ、助かるな〜!出来ることが少ないから、そう言ってもらえると心強いわ」

その言葉に、「こいつマジか」の空気が流れる。

「て、事は、実習が失敗すれば、全部お前らのせいってことか。じゃあ、しっかり、頑張ってくれよな!」

また空気が変わる。怒りの空気に。

ちなみにメンバー最後の一人は、ユリウスの取り巻きの一人、シュレン・ガーランド。

バベルのネクタイを整えた良いところの貴族の令息だ。

彼はずっと、ユリウスの言葉に頷いていただけだった。


「それでは、今回の実習の概要を渡しておこう。どのようにこの実習に取り組むかは君たちの自由だ。今日中に作戦、陣形などを各々で話し合って決めるように。実習開始は明日朝の9時からだ。私は、近くに待機しておくので何かあれば、フェザーレターを飛ばすように」

引率していた教師は、数束の書類と数枚のフェザーレターを、グループの代表となったスミレに手渡した。

教師は、用が済むと来たときと同じように馬車の御者の隣に座り、去っていった。

残された生徒たちと、各自の荷物。

目の前には、学校が手配した宿屋。

今日はここに一泊し、明朝実習に赴くことになっていた。

実習に向けてのミーティング及び、生徒同士の交流を目的とし、割と余裕のある日程となっていた。

「ずいぶんと貧乏くさいホテルだな。シャワーはあるんだろうな」

ユリウスは宿屋を一瞥し、フンと鼻をならす。

「宿の規模など、些細な問題だ。十分に休息ができればそれでいい」

「あ、そ、そうだな・・・」

スミレにそうたしなめられ、あっさり同意する。

「おい、リリクルー4」

ユリウスはバベルとセリーヌに声をかける。

「最初の仕事だ。荷物を運べ」

ユリウスが指を指す先には全員の荷物とポーションや食料などの備品が入ったリュック。

「え・・・、そんな・・・」

セリーヌはその言葉に驚愕する。

サポート役として、備品のリュックを担当するのはわかるが他のメンバーの私物を運ぶのは違う。

奴隷じゃないんだから。

「まかせろ!仕事じゃい!!」

しかし、バベルは何故かやる気満々だ。

備品入りのリュックを背負い、両手で全員分の荷物を持ち上げた。

雑に。

「お、おい!もっと丁寧に扱え!」

「そ、そうだ!貴重な魔道具も入っているんだぞ!」

「わたしの獲物も入っているんだ!壊れたらどうするんだ!」

「もちろんだ!ポーションとか割れたら困るもんな!」

リュックは丁寧に背負ったが、両手に持ったユリウスとシュレンの荷物は両脇に抱えられ、ミシミシと音を立てている。ルアンの荷物に至っては、頭頂部に器用に乗せて運ぼうとしている。

ちなみに、スミレの荷物はスミレ自身が早々に持ち運んでいる。

「よし!チェックインだ!」

三人の抗議をものともせず、意気揚々と軽やかなステップで宿に向かう。超スピードで。

「あれ?入口が狭いな」

両脇の荷物がつっかえて入れないでいた。

バベルは強引に入ろうとするので、両脇の荷物はダメージを受ける。

ルアンの荷物はとっくに頭から落ちて、ルアン自身がナイスキャッチを見せる。

デルフィンの二人は何とかバベルから荷物を奪い取る。

「おい、早くしろ」

と、全員分のチェックインを済ませてくれていたスミレが顔を出す。

その光景を少し後ろからセリーヌが見つめ、

「大丈夫かなぁ・・・」

不安のを口にする。

だが、誰かの予想通りにセリーヌの不安は的中する。

実習はもちろんのこと、実習に至る前にもひと悶着が起こる。


続く

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