エスケープ
本日二話目です。
龍鳴のデビュー戦から一週間が経った。
色々試してみたが、コイツ自体はとてもシンプルだということが分かってきた。
というのも、何かを斬る以外の用途はなく、ただ淡々と起動と停止を繰り返している。
しかし、出力そのものに関してはこの世のものかどうかを疑うレベルだった。
最近は部活をサボってアトラクションに入り浸っている。
キョウにはまだこのことは伝えていない。
今日も学校が終わり次第、アトラクションに行く予定だ。
§§§
長い学校がやっと放課を迎える。
バスは放課後ギリギリなのですぐさま準備し、学校を走って出る。
「ハア、ハア、間に合った………」
バスが到着した。
と。
見慣れた顔がバスに乗ってきた。
「アイン、最近変だぞ?」
「キョウ、何で………」
「俺も行く。」
二人席に並んで座る。
今週起こったことをキョウに伝えた。
龍鳴の適合試験のこと、アトラクションに入り浸っていたことーーーーーー
「なんだそれ。なぜここまでして隠す必要があった?」
「危険なんだ。とても。」
適合試験で死人が何人も出たことも伝えた。
「そうか。まあ、今日は黙ってソイツを見せてもらうぞ。」
そうこうしている内に、アトラクションに着いた。
【空歪】を使って中層域に入る。
「マジか、ここって前死にかけた場所じゃ……。」
「そうだ。」
早速禁罪者を見つける。
「起きろ」
龍鳴を起動。
光の刃が唸りを上げる。
砂嵐に手を入れ、禁罪者に肉薄する。
一振り。
禁罪者は青いシールドを展開させたが、龍鳴はそれすらも容易く切り裂いた。
青い筋に宿る光は消え、その場に倒れる。
「アイン、とんでもないものを手に入れたようだな。」
「まあな。コレを使うと…………ゴフッ」
ん?
ゲホゲホッ、ガハッ!
慌てて手で口を押さえる。
生暖かい、感触。
手を見ると、真紅に染まっていた。
血。
眩暈が急に頭を揺らし、堪らず膝をつく。
龍鳴の光が荒々しくなったように見えた。
「ね、ネ………寝ろっ…………ゲフッ、ゴホゴホ……」
ゴボッ
血痰を吐いた。
この失血はヤバいぞ。
『アイン!?』
キョウが何か言っている、が、靄がかかったように聞き取りづらい。
ああ、分かった。
そう言うことか。
適合しようがしまいが。
龍鳴の餌は命だ。
§§§
何が起こったかわからない。
アインが突然血反吐を吐いて倒れた。
今は意識を失っている。
中層域のど真ん中でぶっ倒れた友人と二人取り残された。
アインの使う固有スキルでテレポートすることも出来ない。
先程途轍もない戦闘力を見せた龍鳴とやらも俺が使ったら秒も持たずに死んでしまうだろう。
まず、確認事項。
周りに生体反応があるか。
「【銀ノ感覚】」
最細の銀線を自らの身体に巡らせ、神経同調をする。
その銀線を今度は地中に広く張り巡らせる。
(とりあえず半径10メートル内には何も無さそうだ。)
銀線を無数に生やし、アインを包む。
「まずは、脱出最優先で。」