女神様からの召喚
もう一つの謎解き回です。
<よくぞ、呪いを解いてくれました。
嬉しく思います>
気が付くと真っ白な空間に居た。
目の前には、美しいが無機質な女性型の人形のような存在。
何故か女神様だと分かる。
異世界転生物だと、転生前に会うのがセオリーな気がするが。
<あの一族の呪いを解いて欲しいと思っていました。
当初は意味があるようでしたが、近年では不利益が目立っていましたから>
脳内に直接声が響く。
無機質で機械的な音声な感じがする。
<そのために、別の世界の所属だった貴女の魂をもらい受けてきました>
「私にゲームの記憶があるのはそのためですか?
ゲームの記憶しか無いんですけど」
<世界を跨ぐ時のみ、時間の逆行が可能になります。
今より後にこの世界に生まれる魂に、人生を全うしてから、貴女の元の世界に転生してもらい、この世界の事を綴ってもらいました。
この世界の予備知識を持った者の中から、この世界に適応できる魂に来てもらいました。
それが、貴女です。
貴方は天寿を全うし、前世に未練の無い状態でした。
この世界の予備知識だけは必要があって、残るようにしました>
逆行転生パターンかぁ。
ゲームを作った人側に、こっちの世界の転生者がいると。
強制力なんて元々無いわけね……
「転生前に、話が聞けなかったのは何故ですか?」
呪いを解くのが目的なら、結構遠回りだったと思う。
正直、私自身が役に立った感は無い。
<転生前では、まだ前の世界の所属でしたから、接触できなかったのです。
ですが、こうして解呪に貢献してもらいました。
お礼に何か聞きましょう>
「あ、悪役顔を!
ああ、いや、え、えっと、私達どうして四種類しかいないのですか?」
ああ、動揺して、上手く言えてない……
<私には、人の顔の美醜は分かりません。
勇者ジョシュアの願いにより、ジョシュアの子供達を、ジョシュアの妻グレースとその両親と兄に似た容姿にしています。
内面については、ジョシュアの願いに沿いやすい魂を選別、加護を与えていますが、それぞれの個性を持っていますよ>
「私達は初代サザーランド公爵家の者のコピーでは無いのですね」
<そのような事はありません>
ちょっと落ち着いて来た。
「呪いを解いたのは私ではないのですが、実際に解呪した者へはどうされるのですか?」
<ノエルとクレストには、既に加護を授けているので、これ以上は影響が大きすぎます。
カークライトには、手配済みです>
「では、女神様にお願い申し上げます。
今は亡き勇者ジョシュア国王の願いによって、私共に困っている事がございます。
畏れ多いことではございますが、どうか女神様の御祝福から、容姿に関する事を外してはいただけないでしょうか?」
今度はちゃんと言えた。
<一度授けた祝福を外すことは出来ません。
ですが、解釈を変えることなら出来るでしょう。
これから生まれる子供は、グレース達にのみ似た容姿ではなく、勇者ジョシュアが『美しい』と思う容姿にすることにしましょう>
「ありがとうございます。女神様」
正直、自分達に適応されないのは残念だが、これからは悪役顔ではない美形も生まれるようになるんだね。ちょっと悔しいが良かった。
<それと、魔王城の結界の解除を知らせておきます>
「魔王城の結界は何のためだったんですか?」
<聖女に託した魔王討伐を阻んだ者が、魔王討伐に関われるようにするためです。
魔王討伐に匹敵するだけの行いをした者を外していますから、もう七人しか残っていません。
さらにその内四人は、今世で条件を満たすと思われます>
女神様が言っている、聖女に託した魔王討伐を阻んだ者とは、
元サザーランド王国の貴族だった者の生まれ変わりで、贖罪のまだ終わらない最後の者達。
枢機卿が言っていた、未だに生まれ変わって贖罪を続けている者達の事。
これが、ノエルとクレストを除くゲームのパーティーメンバーの事だったのだ。
聖女ノエルが外れているのはともかく、クレストが何故と思ったが、前世の功績による加護持ちであるらしい。ノエル以上の主人公要素じゃん。
女神様にゲームの事を聞くのもどうかと思ったが、ゲームでは育ちが悪くて幼く見える十五歳で、攻略対象だったらしい。へぇ。
カークライトの解呪の褒美は、贖罪の達成。いいのかな、と思ってしまうが。
今世で贖罪が終わりそうなのが、マサムネ、サーシャ、ホムラの三人。
魔王討伐に最後まで連れて行けば良かったと思ったが、もう少し魔物を倒せば達成できるらしいので、そんなに無理しなくても今世で終わりそうとの事。良かった。
バーナードは、かなり頑張りが必要だけど、達成見込み。
逆に、今世ではもうどうしようも無かったアーノルドに加えて、元側近二人も今世では厳しいらしい。
アーノルド達三人は、特に贖罪を求められているが故に、ホープランド王国に生まれた。
対して、他の面々はそれほどでもないので他国生まれ、という事らしい。
アーノルド達に私が嫌われていたのも、バーナードとの邂逅がうまくいかなかったのも、贖罪が関係している。
生まれ変わり達は、記憶があったり贖罪の事をはっきり分かっている訳ではないが、何となく感じるものがあるらしい。
女神様からの罰を未だに受けている者にとって、女神様から祝福を得ている者は妬ましく感じる、という事らしい。
不本意ながら、サザーランド家の人間は女神様の祝福を十全に受けているからね。
側近二人は呪われていたのではなく、女神様の祝福を授かっていなかっただけ。
つまり、彼らは一生悪役顔ではない美形のまま。
湧き上がってくるこの思いをどうしたらいいのか、分からない。
祝福を授かってなかったらあれぐらい美形、祝福を授かっているからこれぐらい悪役顔。
ふ~ん、そう。理不尽。
読んで下さってありがとうございます。
今回コメディー要素少なくて済みません。
良ければ最後までお付き合い下さい。




