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呪いがかかったように見える解呪

短いですが、分けたかったので。


「呪いを放置した場合の危険性が高いので、今日、この場で解呪を行う事を提案します」

 

「我々も手伝いますぞ」

 枢機卿が立ち上がったが、お付きの者がテキパキと動くだけだ。別にいいけど。


 床に用意された大きな魔法陣の内側に、まずは国王とザカリー王太子が入る。


 魔法陣の外に、ノエルとクレスト、そして枢機卿が等間隔に並ぶ。

 枢機卿、解呪に加われるの?


 三人が杖を高く掲げて、詠唱に入る。


 やがて、ノエルとクレストの掲げた杖から、白い光の粉があふれ始めた。

 魔法陣の中の二人を包み込んでいく。

 解呪に相応しい神々しい光だ。


「「おおぉ……」」

 感嘆の声が上がるが、


 重要な場面のハズなのに、一本だけ光らない杖が気になって、集中出来ない……


 他の面々も心配顔で魔法陣を見守りつつ、光らない杖をチラ見している。

 カークライトが平気そうなのだけが頼りだ。

 

 あふれた光で中の二人は見えなくなっている。


 やがて、光が収まりだすと、


「「……ぉお?」」 

 感嘆の声が困惑に変わっていった。


 魔法陣の中で国王と王太子は、

 それまでの穏やかそうだったり、優しげだったりする、完璧な美貌から、

 どことなく、意地悪そうな、冷たそうな印象を持つ面立ちに変わっていった。


 話の流れからそうなるのは予想してたけど、いざ目の当たりにすると、なんか受け入れられない……


「き、君。

 これは解呪だったのでは無いのかね?

 逆に呪いがかかっていったように見えたぞ」

 ペネロペ男爵がカークライトに詰め寄っている。


「え?ええと、そのハズ?です。

 儀式の手順には問題ありませんでした」

 カークライト、戸惑わないで。私達も不安なんだから。


「ずっと頭にかかっていた靄が晴れたようだ」

 ザカリー王太子が、魔法陣から出てきた。


 一応、金髪碧眼のままだけど、温かみのあった金髪が少し銀髪に近い冴え冴えした色味に、瞳も少し暗い色になっている。

 何より、優しそうだった面立ちが、何処か思いやりに欠けた印象を与えるようになっている。


「王妃。

 心配をかけたな」

 王妃様に寄り添おうと近寄る国王。


 国王の変化も、息子とよく似ている。

 その言動は、思いやりのあるものなのに、顔立ちの印象は真逆のものになっている。


「う、うう~ん」


「王妃!」

「王妃様!」

「ジョセフィーヌ様!」

「母上!」


 ジョセフィーヌ様が倒れてしまった。

 ……仕方ない気がする。


 王族の呪いをまだ解いていなかったのは、ジョセフィーヌ様が戸惑いを表したから。

 まぁ、長年連れ添った夫と子供に呪いがかかっていて、解けば、顔立ちと能力が激変する。

 能力が激変すれば、性格にも多少影響があるだろう、と聞けばねぇ。


 顔立ちと性格が違うとか、ただの別人じゃん?


「少し人手を借りよう。

 儂らが王妃に付き添うので、皆はこのまま続けてくれ」

 アーロン国王が、呪いが解ける前とは打って変わって、テキパキと動き出す。


 確かにこの後、アーノルドの元側近二人の解呪を試してもらう予定はあったけど。


 取り残される私達。

 ザカリー王太子も王妃様について行ってしまった。


 でも、やっぱり呪いを解いて良かったかな。


「大丈夫なんでしょうか?」


「国王と王太子の顔が変わったのが衝撃で倒れたんなら、その二人が付き添ってたら悪化しない?」


 は、そう言えば。

「呪いは?

 確かに解けたんですのよね?」

 思わず、私もカークライトに詰め寄ってしまう。


「そ、そのハズ。そのハズです」



<よくぞ、呪いを解いてくれました。

 嬉しく思います>


 何、この声?


読んで下さってありがとうございます。

良ければ最後までお付き合い下さい。

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