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迷いの消えたステータス


 そろそろ、オリエント王国から戻らねばならない。


「ルルちゃんいなくなんの寂しいわぁ」

「お世話になりました」


 気のせいか、めっちゃ働いた気がする。

 別に文句はないが。


 椿さんは人を雇う事を考えているそうだ。

 良いと思う。


「親方、ありがとうございました」

「良く頑張った。

 今のお前なら、魔王も倒せるだろう。

 ついて行ってやれなくて済まないが」

「いいえ!

 ルルーシェ様がついて来て下さいますから、大丈夫です!!

 親方は椿さん達と一緒にいて下さい」


 ……ノエルの私への絶大な信頼って何処から来てるんだろう?

 ナゾだ。


「お待たせ。

 挨拶してきたよ」

 クレストは、オリエント王国の薬剤師と仲良くなっていた。

 情報交換していたらしい。

 意外と社交的である。

 ついでに料理も教わってくれば良いのに。


「拙者らも準備出来ておる」

「アタシらは先に船に乗ってようかね」

「船で待っている」


 迅雷親方達と最後の別れを交わして、船に乗る。

 ……カークライトがいればなぁ。


 ノエルは私が行きに教えた筋トレや、迅雷親方達に教わった稽古の内、船内で出来そうなものを行っている。

 これにマサムネやホムラも加わったりしてるから、仲は問題なさそう。


 クレストは、オリエント王国で仕入れた、薬学の知識を復習したりしてる。


 私は、サーシャと結構仲良くなった。

「アタシは世界中を回ってみたいんだよ。

 ホープランドは、招いてもらわないとなかなか行けないから、実は楽しみなんだ」


「……毒の湖沼ですけれど、クレスト達に回復されながら渡る方法と、HP0状態で渡ってから回復する方法がありますけれど、どちらがよろしいですか?」


「……出来れば、回復してもらいながらでお願いできるかい?」

 デスヨネー。


 港に着いた。

 シン達と合流する。


 航海の間に話し合ったのだが、サーシャ達とはここで一旦別れる。

「このまま一緒に居ても足手まといにしかなんない。

 他所でレベルを上げてから合流するよ」

 との事。

『女神の使徒』持ちのシンの父に同行してもらっている。


 私達は、というかノエル達には、クエストをこなしながら、帰国してもらう。

 オリエント王国でのようなリアル危険のある高難易度のものはもうない。

 一応、行きとは違うルートを通るけど、いずれにしても、歴代の勇者や聖女が通っているルートになるので、魔物の脅威がオリエント王国のような難易度ではないから。


 サーシャ達にも、低難易度のクエストをこなしなら、ホープランドに向かってもらう。

 レベル上げにちょうど良いはずだ。


 ゲーム内期間が一年近く経過したので、

 この世界的説明では、魔王復活の影響が魔物に徐々に及んでいるので、

 フィールドやダンジョンの雑魚もレベルが上がっている。


 ……一年経ってないのに、体型が激変したノエルの健康が非常に心配である。

 クレストに相談したら、

「女神様の加護があるから大丈夫」

 そんなに万能な加護なら、太らせないでもらいたかった。 


「魔王討伐後に女神様に聞いてみたら」

「やり直しの勇者様の時にしか、女神様のお声を聞けたという話はありませんわ」

「そうなんだ」

「クレストは神託が受けられるという事は、女神様のお声が聞けますの?」

「ノエルの神託を一方的に聞けただけ」

 じゃあ、気軽に女神に聞いたらとか言うなよ。


 クエストは基本的に各国の首脳陣からの依頼である。

 勇者や聖女は断っても構わない。

 そのために、クエストは引き受けられるまでは公にならない。

 

 クエストの受注は、私が仲介している。

 ホープランド王国の宰相公爵家の次期後継の立場で動いている。

 ……ホントは王子のアーノルドの仕事だと思うんだけど、ゲームでもルルーシェの仕事だった。


 このせいで、パーティーメンバーにならない唯一の攻略対象、ザカリー王太子の攻略難易度がおかしなことになっている。

 王太子を攻略するには、クエストをこなしつつ、魔王討伐までのプレイ時間を抑えなくてはならない。


 乙女ゲームをメインに攻略してる人は、ルルーシェを仲間にしてないから、クエストを受けられない。

 王太子の攻略は不可能。


 RPGをメインにしていると、ルルーシェを仲間にしてるし、クエストも普通はこなす。

 プレイ時間の縛りはそれほどきつくないので、自然とザカリー王太子エンディングになる。

 

 つまり、狙っていると不可能な最難関、狙ってないと自然にエンディングゲット。


 リアルのザカリー王太子は、勿論、美形。

 ヤンチャ系の弟と同じ色味だが、少し淡い感じのする穏やか系。

 やはり、賢くはない。

 小心者だが、真面目が取り柄。


 私が、サザーランド公爵家の唯一子でなかったら、この王太子に嫁がないといけない可能性もあった。


 顔も性格も悪くない夫と、悪役顔ではない美形の子供が予想されるが、ジョセフィーヌ様みたいな目に合うのはちょっと……


 サーシャ達には、行きがけに保留しておいたクエストを託した。

 私からも正式な書状をしたためて渡す。

 あらかじめ、話は通してあるので、これで大丈夫なはず。

 何かあれば、シンの父がホープランド王国の父に連絡を取ってくれるだろう。


 クエストのため、港のある都市の隣国に来た。

 着いたのが夕方だったため、宿を取るため街中に来た私達。

 シンは隊商なので、しばらく別行動だ。


 思いもかけず、疲弊した。

 主に精神面である。


 今の私達がどう見えるか、あまり考えてなかった。


 パターン二つ。


 一つ目。

 私が金に飽かせて、美青年と美少年を従えていると捉えられるパターン。

 相変わらず性格悪そうに見えてる私と、男に間違われたノエルに精神ダメージ。

 誤解率六割くらい。


 二つ目。

 美青年が、性格悪そうだけどナイスバディな美人と僕っ娘美少女を両手に花。 

 相変わらず性格悪そうに見えてる私と、男に間違われたノエルに加えて、男の子が男の子の格好してるだけなのに女の子に間違われたクレストに精神ダメージ。

 誤解率四割くらい。


 つまり、十割誤解。


「……失敗しましたわ。

 この国、一夫多妻も一妻多夫もあるんですのよ」

「次からは、シン達と野営にしようよ」

「わたしもそうしたいです」

「明日登城なので、今日だけ我慢してね」


 宿はもちろん、全員個室でとった。

 人相はともかく性別を間違われる事の無い私と、常に男と誤解されるノエルが同室になる訳にはいかない。

 ましてや、三人同室にしてしまったら「昨日はお楽しみでしたね」とか言われる未来しか予想できない。


 さっさとクエストをこなして、この国を後にした。



<現在の勇者ノエルのステータス>


名称:ノエル

年齢:16歳

称号:勇者、グラップラー

状態:正常

Lv  45

HP 4550/4550

MP 2820/2820

攻撃  530

防御  524

魔攻  280

魔防  272

命中  526

回避  540


 

 「やっとノエルの戦闘が称号に反映されたよ。

  変な記号取れたじゃん。良かったね」


 「……」



読んで下さってありがとうございます。


聖女は女性だけだけど、勇者は男女両方あり設定でした。


次はシリアス展開入ります。

最後までお付き合い下さると嬉しいです。

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