表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/27

団欒のひと時


 夕食時、椿さんと作ったスゴイ量の食事が並ぶ。

 夕食後は体作りのため、そんなにハードな稽古はしないそうだ。

 団欒のひと時である。


「ルルちゃんな、家事何でも出来んねん。

 ルルちゃん家は、代々、子供に家事教えてるんやて」


「それは良い心がけだ。

 身分が高くとも、自分の身の回りの事は出来た方が良い」


「あの、前から不思議に思ってたんですけど、あんなお城のような所に住んでいて、どうやって家事を教わるんですか?」


「普通にですよ。両親から教わったり、時間を取ってもらった使用人に教わったり。

 強いて言えば、野営出来るようになるのが目標だったり、誘拐訓練に組み込んでるのが変わってるくらいかしら?」


「野営?」

「誘拐訓練?」


 結構気軽に世界をフラフラしたりすることのある私の一族だけれど、誘拐されやすい条件が四つばかり揃っている。


 一、金持ち。差はあるけど、貧乏ということはない。


 ニ、見た目が良い。悪役顔のインパクトの方が大きくて分かりづらいが。


 三、希少で重要な称号持ち。まだ持ってない場合でも取得可能性高し。


 四、ステータスではない魔法が使える。しかも魔術師の塔に所属していない。

  

 闇魔法は、ステータスとは関係なく使える。

 私達は気楽に使ってるが、世界的にはかなり希少。


 クレストの光魔法もそう。


 資質が赤ん坊の時に分かるのも稀。

 教会がクレストに過保護だったり、平民の両親からやや強引に引き取ってきたのも、誘拐などを懸念してのことだと思ってる。

 こんな繊細な話題に切り込んでいったことないから、予想だけど。


 肝心の魔法はというと、

「まだ、光を灯すのしか出来ないよ。

 ルルーシェ達みたいに、同系統の魔法使いに教えてもらえるの、スッゴイ恵まれてるんだからね?」


 資質はあっても、どういう魔法が使えるかは、自然には分からないらしい。

 たまに流れ着いてくる闇属性の人達が、教えてあげるまで闇魔法使えないの、そういうことなんだ。


「で、誘拐訓練て何?」


「誘拐されてしまった後に、自力で脱出できるようになる訓練のことを省略してるんですのよ」


 食いつかれてしまったので、訓練内容を説明した。


 縄で縛られて、相手の拠点からスタート。


 見張りをスリープで眠らせる。 


 収納魔法からナイフを出して縄を切る。


 脱出して、森に逃げ込む。


 食材を調達、火を熾して料理、一晩野営、でゴール。


「逃げるとこまでだけやと、あかんの?」


「逃げる訓練とは別に、必要最低限の物資で野営する訓練があって、いつの間にか一緒になったみたいですね」


「そんなアホな」


「実際に行っていると色々ありまして。

 トレヴィス伯爵領のように運動会になってしまったところもありますし。

 チェスター侯爵領みたいに、芋煮会みたいになってしまったところもあります」


「運動会?」

「芋煮会?」


 大体、領民に見つかると話がおかしくなってしまうんだよね。


 訓練、という事が分かりにくいらしく、犯人役を攻撃してしまったり、野営の準備を一人でやらなきゃいけないのに、手伝ってくれたり、食べ物くれたり。


 仕方ないので、最初から知らせて、一緒にやることにして、形が変わってしまう。


 逃亡までを障害物競走みたいにして、他の競技も足して運動会化したり。

 野営訓練が、皆でやるBBQや芋煮会みたいになってしまったり。


 芋煮会は、東北の人達が個々人で楽しんでるのよりは、東京とかで開いてくれるイベントの方が近い。

 領主一族が巨大な鍋で料理して、領民に振舞う。

 運動会化してるところも、多かれ少なかれ似たようなことをやってる。


 楽しみにしてくれるので、毎年恒例になってしまう。


「外でやらないといけない訓練なのに、見つからないようにするのが難しいんですのよ」


「このうちが、ツッコミきれへんとは」

 ずっと笑ってたからね。


 領民達は、私達の顔を全部知ってるわけではないのだが、何せ分かりやすいもんで。

 犯人役なんかも、誤解の無いように、貴族側がやる。

 悪役と誤解されないように、悪役顔を配置する、とか意味の分からない事になっている。


 領民達の、悪役顔認識は結構ひどいことになっていて、演劇主体の旅芸人一座を呼んで失敗したことがある。

 領民の反応を、起承転結で言うと、以下。


 起、美形で無能な王族のせいなのか、正統派美形主人公の登場でいまいち沸かない。


 承、悪役顔の悪役が出てくると、何故か応援し始める。


 転、しかし、演劇のストーリーは、美形主人公による勧善懲悪である。


 結、領民達はストーリーがピンと来ない。

 

 旅芸人達は、悪役と主人公役を交換したものも演じてくれたのだが。

 素人目にも卓越した演技を披露してくれた元悪役達に対し、元主人公達は、悪役に必要なほどの演技力が……

 領民達は喜んでくれたが、毒の湖沼で棺状態になってまで来てもらった旅芸人一座には、悪いことをしたと思っている。

 演技力を高めての再演を誓ってくれたが、本業に支障の無いようにしてもらいたいところだ。


「あはははは、はぁはぁ。ルルちゃんおもろいなぁ。

 持ちネタいっぱいあるやん」


 ……持ちネタではないつもりだけどね。



 順調なノエルの稽古だが、熱が入りすぎて、まだ王宮に行けてない。


 私がメッセンジャーやってるから、礼儀とか報連相的な意味での問題は無い。

 帰国前に一度行っておけばいい。 


 問題は、仲間になるはずのキャラが加わってない。

 せっかくここまで、クエストとかも省略して急いできたのに。

 オリエント王国に交渉して、キャラだけ来てもらおうかな。



<現在の聖女ノエルのステータス>


名称:ノエル

年齢:16歳

称号:聖女、女力士見習い

状態:正常

Lv  30

HP 3450/3450

MP 2120/2120

攻撃  354

防御  346

魔攻  226

魔防  238

命中  286

回避  288



 ……迅雷親方スゴイ。


読んで下さってありがとうございます。

辞書を見ていて、団欒が必ずしも家族とは限らない、と知ってこのタイトルにしました。


最後までお付き合い下さると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ