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ここからゲームスタート、のはず

 

 この世界は、女神が創世した地球ならざる世界。


 女神の御力によって、人々の過度な悪意は瘴気となって排出される。


 瘴気がある程度以上になってしまうと、魔物になってしまい、人間を襲うようになる。


 魔物を倒して瘴気を浄化すること、特に大量の瘴気から成る魔王を倒すべく選ばれる勇者や聖女を助けることが、人々の義務とされる。


 今日は教会がこの国で見出した今代の聖女が国王に謁見する日であり、この聖女ノエルをプレイヤーキャラのヒロインとしたゲームのオープニングとなる日。


 申し遅れました、わたくし、この国ホープランドを建国から支える公爵家の長女ルルーシェ・サザーランドと申します。


 なんて、今世の話し方にしてみたけど、モノローグは前世の言葉遣いのままの私。

 物心ついた頃には日本での記憶があった。


 とある理由で、この世界がゲームか何かの世界じゃないかとは幼い時から疑ってた。


 今世のことを教わって、きっとこのゲームなんじゃないか、と確信した。


 ゲームは基本RPG派の前世の私が、唯一手を出した乙女ゲーム。

 大手制作のRPG型乙女ゲームでありながら、同じ周回で乙女ゲーム要素とRPG要素を両方楽しむのはほぼ不可能、という評価で、安売りワゴンに積まれてた。


 特徴的なのは、私が転生した、ルルーシェ・サザーランド。


 公爵令嬢。第二王子の婚約者候補。黒髪ドリル。紅いつり目。

 ザ・悪役令嬢、な見た目。

 そして、第二王子に蛇蝎の如く嫌われている。

 しかし、ルルーシェ自身は攻略の邪魔はしてこない。


 乙女ゲーム要素では、ルルーシェと仲良くなると、その分、メイン攻略対象の第二王子と、その側近の攻略対象二人の好感度が下がる。パーティーに入れると、ルルーシェよりはマシなお前で我慢してやると言って、第二王子が他の攻略対象との仲を邪魔しにくる、という話をネットで見た。


 RPGとして楽しもうとすると、ルルーシェのサポート能力の性質上、絶対にパーティーに入れる必要があるし、仲良くしておかないとイベントもうまく進まない。


 そのせいで、同じ周回で乙女ゲーム要素とRPG要素を両方楽しむのはほぼ不可能、という訳だ。

 

 乙女ゲーム要素だけ楽しむ場合どうするの?というと、戦闘場面を全てスキップ出来る。

 経験値も何ももらえないが、ラスボスまで含めて、何とか勝利できた、という体で話が進むそうな。

 そりゃあ売れないわ。


 とは言え、転生してしまった身としては、このストーリーで助かった、に尽きる。

 処刑や追放、実家ごとの没落、みたいな心配はしなくて済む。

 第二王子のことも別に何とも思わない。


 それよりも、聖女一行が魔王討伐に失敗した場合の方が大変。

  

 ならば、準備万端整えて、サポートキャラに徹して見せましょう!


 ここ、謁見の間には、扉から玉座までレッドカーペット。最奥に王族、レッドカーペットのサイドに今は貴族が並んでいる。私も今ここ。


 そろそろ扉が開いて、オープニング通りなら、聖女が、神官の先導、美形の近衛二人に左右付き添われて、平民のみすぼらしい身なりながらも堂々と入ってくる、はず。


 扉が開いた。


 ?ヒロインの様子がおかしい?

 ゲームではアニメ絵でデフォルメされてたツギハギや汚れがリアルで、本当にみすぼらしい。

 衣服から覗く手足は、ガリガリで棒のよう。

 髪はパサついて、艶が無い。

 俯いた顔は、血の気が薄い。

 ……やせ細ってて今にも飢え死にしそう!?


 力の入らない様子で、左右の近衛に支えられながら進んでいくヒロイン。

 思わぬ光景に、ざわつく貴族たち。


 先導の天才少年神官がチラチラ振り返って、時々、回復魔法をかけてるが、そうじゃない……

 アイツ、箱入りで非常識なところがあるから、もしかして分かってないのか?


 一行が謁見の所定位置に着く。

「神官クレスト、聖女ノエル様をお連れしました」

「うむ、ご苦労。皆の者、この者が今代の聖女ノエルである」


 悪辣極まりない面相ながら人一倍正義感の強いペネロペ男爵が、聖女の様子に耐えかねたらしい。

「国王陛下にお尋ね申し上げる。

 ノエル殿が聖女だと仰るならば、何故、斯様なみすぼらしい身なりをしておられるのか?

(ホープランド宮廷語訳:なんで、聖女様を休ませて食事させたり、もっと良い服着せたりしてから連れてこなかったんですか?)」


 不敬と取られかねないペネロペ男爵の言葉に、貴族たちの心の声が一つになった。

(無理しないで、高位貴族に任せておけって、いつも言ってるだろ!)

 ……この国の貴族、皆仲いいんだよね。


「うむ。今代の聖女は孤児院育ちでな、見つかった当時よりこのような格好をしておったそうだ。

 しかし、聖女なのは間違いないと聞いておる。

 そうだな?クレスト殿」

「このノエルが聖女であること、間違いありません」


 ……通じてない。

 何故かこの国の貴族は、緊張したりすると、ツンデレっぽい言動になったりする癖があって、それが習慣化してしまったあまりマナー化しつつあるが、国王はそれを理解していない。


「国王陛下、聖女様がお疲れの様子だと言いたかったのでは?

 早いですが、お披露目をお開きにして休んでいただきましょう」


「王妃!王妃の言うことに間違いはない。そうするとしよう。

 聖女ノエルよ、魔王討伐の任、頼んだぞ」


 王妃様は、無能な国王のために、貴族たちが総力を結集して探して来た優秀な人材。

 元は二つ隣の国の王女様だった。

 国王の唯一の長所は、自分を無能だと理解していることだ。

 王妃様がいないと、この国回んないよ。


 王族が退出の後、普段なら、高位貴族から順に退出するところだが、今は、ヒロインのところに皆集まっている。


 アイスブルーの瞳で酷薄そうに見えるが、心優しいチェスター侯爵夫人が、自身の収納魔法から取り出した、蜂蜜入りホットミルクをヒロインに差し出している。

 悪巧みが良く似合う顔立ちだが、誠実なイースター公爵が、同じく収納魔法でマントを取り出して、ヒロインの肩に掛けている。

 女たらしに相応しい容姿をしているが、一途なトレヴィス伯爵令息が、ヒロインを安全に運べるように、収納から担架を取り出している。


 私も、今世の両親と、ヒロインの近くに行く。


<現在の聖女ノエルのステータス>


名称:ノエル

年齢:16歳

称号:聖女

状態:状態異常(飢餓)

Lv  1

HP  5/100(瀕死)

MP 100/100

攻撃  5

防御  6

魔攻  8

魔防 10

命中  9

回避  7


 ここからスタート!?



読んで下さってありがとうございます。


ステータスは雰囲気でお楽しみ下さい。


ブクマして下さった方、ポイント下さった方、いいねして下さった方、ありがとうございます。

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