第八話 エッジ・ノイズ
氷海の空がある方角、朝焼けの太陽が絶妙な紫色を作っていた。
様々な人が眠りについている朝早い時間帯にシャイニーは、一人そよ風を浴びている。
ある意味この国の宿命を背負っている兄を、やる気が無いと恨み続けて影の魔法まで生み出してしまったのに、いざ丸くなってきている姿を見ていると自分の事がもどかしくてしょうがない。
今日も騎士達は命の危険と隣り合わせに曝されながら地上の騎士と戦っている。兄と違って実力不足なので騎士団に入る事も出来ず、ちょっと強い一般市民として日々を暮らす。
気持ちの中で光が擦り減り影が濃くなるような感じだ。
元はと言えば、リップル姫が自ら騎士団を統率すると宣言したあの日から入団したいと志し、頑張ってきた。兄ほどにはなれないと分かっていながらも国の力になりたいと思っていた。
そんな日々だった。
以前の事を考えてもしょうがないと自分を諭し、そよ風に流した。
そろそろ大体の国民が朝食を取る時間帯だけど、寝坊助のソルはまだイビキをかきながら眠っている。
必死にレイラが体を揺すって起こそうとしているも意味を成していない。
「やれやれ……」
フライパンをおたまで叩いて音を鳴らしても起きない事をよく知っているので、フライパンで額を思いっきり叩く。
「いてぇ!」
「寝坊助なのが悪いんでしょ! 早く行かないと姫様に本当にクビされるよ!」
「そんないつも乱暴にしなくても……」
怠さを超えて鈍痛に耐えながら朝食を取り、支度を済ませてから今日は姫様がレイラに用事があるらしいのでソルが脇に抱えながら、低空浮遊で飛び出す。
見送ってから一息つく。
「わたしも、あんなセンスがあったらいいのに」
ふと、少し前に考えていた事を思い出してしまう。
よくある展開なら『力をくれる悪役が現れる』だろうが、運命宿命は残酷で何かしら展開を与えてくれるわけでもない。
問題を起こせるほどの実力も持ち合わせおらず、考えるか或いは思考を放棄する以外なく気分転換に買い物へと出た。
その先で八百屋の前、謎のフードをかぶっている若いような人と店主が言い争っている。