第五話 騎士団と自分の書
姫君であり騎士団の団長であるリップルの元にソルはやってきた。ある決意を胸に秘め書斎の机に座り込んで作業をしている彼女に、宣言をおこなう。
「オレは、騎士団を脱退しようと思います」
「何言ってるの?」
訝しまれた。どんなに能力不足な自分でもこれから頑張ろうとレイラに思わされ、昨晩妹である幻影の魔女、シャイニーにも話をして了承は得ている。
「様々な理由はありますが、主な要因としてオレは嫌われ者で軍の評価や指揮を下げていると考えています。自分を鍛え直してから、姫様が了承してくれるか分かりませんが1から下っ端として……」
机をバン! と音を立てて何冊か書物が崩れ落ちながらも立ち上がった。
「許されない! 500年以上続く戦争を終焉させる鍵なのよ! 貴方とファイアという男は!」
姫君という立場上仕方ないのかなと思いつつ、ここは自分の意見を通したいと心を鬼に。
しばらくの睨み合いが続き、一生騎士団に入らなくてもいいと覚悟さえ思う。
「とにかく結果なんていい。辞める」
「お尋ね者にするわよ?」
「やってみろ」
無駄に戦闘が強いのは自分も他人も周知の事実で、お尋ね者にした所でスカイスペースという国に大きな傷跡が残るのは明白だ。
やや不穏な空気が残りつつも書斎を後にしたソルは、再びファイアの自宅を訪ねるべく田舎の地域に向かう。
レイラは今日はシャイニーに任せているので気遣う人はいなく、浮遊する魔法を使い滑空しながらものの15分ほどで着く。
赤毛の男が汗水垂らしながら穴の空いた一軒家の屋根を修復している。時々水分を挟みつつやっている様子。
「よ」
声に気づいたファイアは「よー!」と大きく手を振り思いっきり飛び降りてはギリギリで浮遊の魔法を使い衝撃を受けないように徐々に着地する。
話を切り出したのはソルから。
「昨日はその、災難だったな」
およ! と妙な反応をされ珍しい話され方に爆笑されてしまう。
「オレはさっきお前のように騎士団を辞めた。やっとファイアの気持ちが分かった」
「俺もこっそり見てたけどよ、あのフードの男が言う通り戦争なんて終わってしまえばいい。ただし一方的な侵略は『終わったと言わない』」
頷いて共感する。穏やかで生暖かい気候がよりふんわりした雰囲気を生み出す。
より話し込みたいと、二人近くの木陰に座った。
その頃、スカイスペースの城下町にあるソルの自宅でレイラはシャイニーと一緒にソルに対する何かを準備していた。
「アイツ(ソル)もやればできるんだね! 見直したよ。さ、頑張ろうね、レイラ!」
「はい! 飛びっきりのいい物用意しましょう!」