第二話 炎の書
スカイスペースの中でも特に田舎な地域で、農業や狩猟などが盛んである。
強い紫外線が砂利道を歩くソルとレイラの肌を焼きつけた。
この二人がへんぴは所に来た理由は姫君であるリップルに頼まれて、とある男、の元を尋ねるように命令をされたのだ。
「暑いですね、ソル。少し休憩したいです」
「分かった。あそこにある、木陰で休もうか」
とある男、はソルがよく知っている人間で数少ない交友関係を持つ関係であり、だけど簡単に会える状況でもない。
今回に関しては姫君の頼みもあったので好都合とも言えた。
魔導書の魔法を使い簡単に小さい氷を作っては風の魔法で粉々にしかき氷を作る。妹のシャイニーの根回しで甘いシロップも持ち合わす。
美味しそうに食べる様子を見てどこかほっこり。
「つかぬことをお聞きするのですが! 『ファイア』さんと言うのですよね。どんな人なんでしょうか」
聞かれて思い出が脳裏に浮かぶ。昔から戦い以外ポンコツと言われてきたソルにとっては、よく長い期間付き合ってくれてるなと考え込む。
「うるさいやつだな」
褒めるのも照れ臭かったのか、ついそんな言葉を漏らす。
「ついでに言うと、アイツに魔導書の使い方を教えた。オレ以上に才能はあるが本人が戦わないと決めたんだ。友人として見届けるしかないだろ」
そよ風が木々の葉を揺らす。人の気配もないので穏やかな雰囲気であった。
穏やかなのも束の間、地鳴りと遠くで爆発のような音がする。木々の隙間を縫うように見て黒寄りの灰色な煙が出てるのをソルは目視した。
レイラが疲れているのを気遣っておんぶしながら煙の方へ向かう。さほど遠い距離でもないのでものの数分で着くと近隣住民が既に一軒家の近くに野次馬を作っていて、怪しげな仮面の人もちらほらいる。
いきなり仮面の人の胸ぐらを掴んで、ソルは鬼の形相で問う。
「騎士団の者だ! 何気なく見ているようだが、テメェら何をした」
威圧に慌てふためく事もなく手を振り解いて少し距離を取ってきた。間髪入れず紫色のエネルギー弾を撃ってくる。炎の魔法で壁を作り相殺させた。
ソルの魔導書に記載されてない物でそもそも魔法ではないような何かを感じている。
自分の知らないエネルギー源があるのかと余計にカチンと来てしまい、こっちもと影の魔法で巨人の腕を作り出し今度は握り上げた。
「魔力の源はなんだ! 答えなければ諸共地上に突き落とす!」
そばで両手を弱々しく胸元で拳を握って怯えるレイラ。普段は優しくてどんな事言われても表情をあまり変えない彼が、嵐の如く暴れた、と。
残りの仮面の人は集団で固まってひそひそ話す。怯えているのか落ち着いているのかすら分からない。
「離せば両方答えてやる」
ようやく話したと思えばそんな事を抜かす。信憑性を感じない素振りに解放しようとはしなかった。
「ソル、離してあげてください。とりあえずは」
納得はしていないが意図がありそうなので開放させる。
流石の圧に疲弊していて肩で呼吸をしているような様子だった。
「我々は地上の騎士団だ。ファイア殿を誘拐するように通達を受けたので、行使せざるを得なかった。まさかこのタイミングで空の騎士団の人が来るとは……」
4人ほど固まってブルブル震えている。
地上の民と空の民は根深い争いの関係にあるので、それを疑った結果がソルの怒りを買う結果になってしまったのだ。
レイラは全員が全員ではないと理解していても、ずっと騎士団の戦闘要員として活動してきた彼には分からない。地上の騎士は悪というフィルターが脳にかかっている。
「お願い。わたしも地上の民ですが、この者達を逃がしてあげてほしいです」
「開放して送還した所で、何が変わる。オレ達の深い歴史を考えれば一生牢入りだろうな」
もしわたし自身が姫君だったのなら、平和にできたのかなと悩む。そう考えても年齢、立場で成す術はなく捉えられる地上の騎士をただ見守る事しかできなかった。