第一話 身寄りの無い少女の書
「やっぱりポンコツ魔導士じゃん!」
姫君はとりあえず怒っていた。わけでもなくどっちかと言うと落胆している。
場所は氷海の空から少し離れた空域にある『スカイスペース』という一つの国がある。その中で聳え立つ大きなお城の中でコントのような発言が飛び出す。威厳とは。
目の前で言われた悪口は華麗に流して、ソルは必死に弁明。
「確かにこの『レイラ』とやらの少女は誤操作で出してしまったと仰りますが、そもそも普通の少女は飛行機を操作できません。実際にこのオレが操作出来ないくらいですし……」
「ポンコツは出来るわけないでしょ! 罰としてレイラちゃんの身寄り探して」
「い、いいんですか。国の上のお方に身寄りを探してもらうなんて」
ソルよりも相当に丁寧な仕草でリップルに受け答え、えらい! と頭も撫でてもらう。
「分かりましたよ。探します」
めんどくさそうにレイラと手を繋いで姫の個室を後にした。
レイラは金髪で10歳付近だろうか、ソルの言うとおり飛行機を操縦するほど頭の回転は早く、何よりこの魔導士より言葉の使い方も上手い。
幼さ故の失敗は所々あってもそれをかき消すほどであった。
「ソル魔導士さんは、なんやかんやでいい人ですよね!」
「ああ、そうかい。悪かったな」
嬉しそうだが気づいていない。通行人や外に物を置いて販売してる人達からは生暖かい視線が集まる。
途中で一緒に食事したり洋服を買ってあげたり。
「この服かわいいです! ソル魔導士さん買ってください!」
「恥ずかしいからソルでいい」
財布がどんどん身軽になる。疲れて体は重くなるが。
結局身寄りは見つからなかったので自宅に招き入れた。ソルの妹である『シャイニー フォース』という名前の魔女がいて、幻影の魔女という通り名があるが主に使う魔法は光と影である。
「かわいいー! お人形さんみたい! ソルとかいうよく分かんないやつよりこの子と暮らしたい!」
「うるせぇ」
お人形さんみたいにレイラを抱きしめると、想像以上のパワーがあるらしく軽々しく抱き上げる。
食事を取った後に散々歩き色んな女性になじられたソルは疲れたので、軽く体を洗い自分の部屋のベッドに潜り込む。
シャイニーはレイラを自分の部屋に誘い、女子会みたいな感じで丸テーブル付近に座り込み、魔力で部屋を明るくした。
写真立てには幼い頃のソルやシャイニー、若い時の両親が写っている。色褪せているが色合いは認識できるぐらいか。
「名前は?」
「レイラです」
「レイラちゃんはどこから来たの?」
「地上の騎士団から飛行機盗んで、ここに迷い込みました」
とてもびっくりされ、照れ臭そうにえへへと声を漏らす。
今宵は夜更けそこそこ遅い時間まで話は盛り上がる。