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【6】冬の日の恋人たち【完結】  作者: ホズミロザスケ
第一章  First step/君彦
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第四話 First step

 週が明け、月曜日が訪れ、新しい一週間が始まった。あと数日で冬期休暇に入ることもあり、授業も年明け提出の課題が出されるようになってきた。それに伴い、また生徒全体の出席率が上がっているように思う。みな、なぜ真面目に出席出来ないものなのだろうか。慌てて出席したところでどうにもならんと思うのだが……その感覚だけは未だにわからん。食堂もまた活気が戻ってきていて、座席は着々と埋まり始めている。先に授業が終わった俺が四人掛けの席に座り、残りの三人を待つ。


「おはようございます」

「おはよー」

 数分も経たないうちに、駿河と桂が二人揃って到着した。

「神楽小路くん、その……日曜日はどうでしたか?」

「ああ。なんとかうまくいった」

 昨日の夕方、佐野家へお邪魔した。ご両親は真綾のように優しく接してくれ、しっかりとご挨拶は済ませることが出来た。弟の悠太には少し気にいられなかったが。まあ、俺が少し余計な口を出してしまったから仕方ない。

「総一郎がデパ地下のお菓子屋訊いてくるなんてなーんか変だと思ったけど、真綾から神楽小路が佐野家に挨拶しに来るって話聞いて、なんとなぁく察したぜ」

「勘が良すぎて怖かったです」

「女の勘ってヤツだよ。でもさぁ、そのあとの総一郎、ずっと『神楽小路くんは大丈夫だったでしょうか』って心ここにあらずで」

「え、咲さん……!」

「今日会うから連絡は良いかと思ったんだが、心配かけてすまん」

「神楽小路くんだから何の問題もなく進むだろうとは思いましたが、やはり友人がそういう一世一代の場に行くのは僕まで緊張してしまいました」

 本当にどこまでも思いやりのある奴だ。今度からは心配させないように結果はすぐに報告せねばならんなと心に刻み込む。


「そういや真綾はまだなんだ?」

「本買ってからこちらへ来ると言っていた」

「そっかそっか。じゃあ、食べる準備だけしとくかー」

 各々鞄から昼食を取り出し、机に並べるが、俺はあるものを手にすると、駿河の目の前に差し出した。

「駿河これを」

「えっ? なんでしょうか」

「早いがクリスマスプレゼントだ」

「ええっ!」

「こないだ買い物に付き合ってもらったお礼も兼ねてだが」

「ありがとうございます。開けてもいいですか?」

「もちろん」

 駿河はセロテープを慎重に剥がし、包装紙を優しく開く。

「これは……!」

「シャープペンシルだ。毎日使うものがいいかと思ってな」

 駿河と別れた後に、文具店に寄った際に見つけたものだ。自分もボディがメタリックレッドタイプを愛用していて、手に馴染んで非常に使いやすく気に入っている。

「とても嬉しいです。早速次の授業から使います」

 微笑みながら、駿河は箱の中からメタリックブルーに輝くボディを指の腹で撫でた。

「喜んでくれて良かった。……あと、桂にはこれを」

「え? ワタシにも?」

「お前にも渡さないとうるさいだろう」

「わかってんじゃん。ありがとな」

 そう言うと、包装紙の隙間に指を差し込み、勢いよく破っていく。中から出て来た牛乳パックを模した箱を持つと、嬉しそうに天に掲げた。

「おっ! 今、限定販売してるいちごミルクチョコ!」

「あの時、手土産候補に挙がってたやつですね」

「そうだ」

「まだこれ買いに行けてなかったからマジ嬉しい。食べよ食べよー」

 箱の中から個包装されたチョコを取り出し、口に運ぶ。

「うまぁ~! めっちゃイチゴの味がする! 雑誌で見たことはあったけど、東京しか店舗がないし、通販もないからなかなか食べれなくてさぁ……。ほら、総一郎も口開けろ」

「はいはい」

「うまい?」

 口に放りこまれたチョコを咀嚼する駿河を見つめながら桂は問う。

「美味しいです」

「期間終了する前に、買い足しに行くぞ!」

「わかりました、行きましょうね」

 微笑む駿河に俺は「なあ、駿河」と声をかける。

「また……俺ともどこかへ出かけないか?」

「もちろんです! 僕もお誘いしていいですか? 神楽小路くんが興味ありそうな美術館の特別展示が来年行われるのを見つけまして」

「ああ、行こう」

「おいおい、知らない間にさらに仲良くなりやがってよ~」

 そう言って桂が笑うと、俺と駿河は目を見合わせ、お互いに頬を緩めた。

「おまたせ!」

「おー! 真綾待ってたぞ~」

 真綾は小走りでやって来ると、俺の隣に座った。俺たちの顔を見渡すとなにかを察したのだろう。

「え? なになに? みんなどんな楽しい話してたの?」


<第一章 君彦/了>

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