気分転換しようと思ったら
1人になって、他にいい方法はなかったのかな、って考えて辛くなってきたから、一旦ホテルの売店にでも行ってお菓子でも買ってこよう。
そう思い、売店に向かって歩いていると、れおとクラスの男の子での話す声が聞こえて、つい立ち止まった。
顔は見えないからちょっと自信はないけど、多分れおと1番仲のいい友達のゆうきくんだ。
「れおー、お前、やることやべぇなー。あんな大々的にゆめフるとか。」
「いやー、おれらが付き合ってるのけっこう有名だったじゃん。だから、別れたことを早く広く伝えたくて悩んだんだよねー。」
「やばぁー。杏奈と修学旅行一緒にいたいからって発想がえぐいわ。」
2人で笑いながら話している。
拳を握りしめて俯く。この話を聞きたい気持ちともう逃げ出したい気持ちとで足も動かない。
「なんで、修学旅行前にゆめをフラんかったん?先に振ればよかったんじゃ?」
「いやー、おれゆめのこと別に嫌いではないからさ。ゆめも修学旅行で彼氏と遊んだって思い出欲しいかなーって。」
そんな2人の声がどんどん遠くなっていく。
こんな風にフラれるなら、修学旅行に彼氏いないくらいどうってこと無いわよ。
いつの間にか2人は居なくなっていたようで、もう声は聞こえなかった。
「なんなのよほんとに。もう。」
声が震える。売店とか行く気力もない。
部屋に帰って、さやかとみさきが帰ってきたら、いっぱい愚痴りたい。けど、2人は楽しい修学旅行中だし、邪魔しちゃうかもしれない。
普段こんなに考えないくせに、今日は考えすぎて、本当に体調悪くなってきたかもしれない。
疲れた。
その場に座り込んでしまう。
こんな所にいるの邪魔だよなー、とりあえず部屋に帰らなきゃと思うも体が動かない。
「大丈夫ですか?」
声をかけられ、その方向を見ると
「杏奈ちゃん?」
「あ、2組の室長さん、だよね。大丈夫?体調悪そうだけど、保健の先生の部屋連れてこうか?」
今は、会いたくなかった。
「あ。うん。ゆめです。
いや、大丈夫。ちょっと精神的に疲れたら力抜けちゃっただけだから。部屋帰れるし。」
と言って何とか立ち上がる。
ここは意地よ、私。頑張れ!
覚束なさは残るものの、何とか立ち上がり歩き出す。
「ごめん、多分ゆめちゃん私の事好きじゃないと思うけど、心配だからせめてゆめちゃんの部屋まで連れて行く。」
そう言って杏奈ちゃんは私の腕を彼女の肩に回させ、歩き始めた。