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第一話

少年は旅をした。旅をしながら機甲兵団に襲われている町を救う。いつからか彼は救世主と呼ばれるようになっていた。今日もまた機甲兵団を屠り、凱旋の帰路に就いていた。町に戻ると莫大な歓声に迎えられた。

「あぁ、なんと雄々しき方か。この御恩は必ず忘れません」

町長から感謝の言葉を受ける。しかし少年の心には響かない。

「なぁ町長」

「はい、なんでしょう」

「ヴァルツ兵団について何か知らないか?」

「いえ、この大陸を支配している兵団のことですから名前は知っています。しかしどこを狙っているかなどは・・・」

「そうか、つまらんことを聞いたな。すまない。」

「いえいえあなた様はこの町の救世主。あなたの行いは万民の助けなのです。誇ってください」

そう言われて少年は町を去った。再び機甲兵団を求めて放浪の旅に出る。路銀は感謝のしるしといていくらかもらっているのがある。不足すれば機甲兵団を狩って集めればいい。機甲車は誰もが欲しがるものだから。

少年は鹵獲した機甲車を操り別の町を目指す。地図によれば北東に進んだところに同じような町があるらしい。そこに行けば何か情報が得られるだろうか。

(それにしても機甲車を憎む俺が機甲車に乗るとはね・・・)

それはいつも少年が機甲車に乗っているときに思っていることだった。

少年の乗る機甲車は特殊だった。形はバイクのようで身を守る装甲は無かった。

そしてバイクを走らせること十数分、前方に砂煙が見える。あれは機甲車が走るときに起こる砂煙に似ていた。

バイクのスピードを上げ、その集団に追いつく。

「おい、ヴァルツ兵団のことを知らないか?」

「はぁ?なんで俺らが上役のことを知ってると思うんだよ」

その答えで少年の心は決まった。この兵団はヴァルツ兵団の麾下にある。ならば屠るのみ。

少年は手に槍斧を生み出しそして狩りを開始する。まずは手始めに近くの機甲車に飛び移りエンジン部分を突き刺す。エンジンをやられた機甲車はスピンしながら止まる。そして操縦主を殺す。

「な、なにしやがてんだこのガキ!!」

止まっている車で攻撃に気づいたのか周りの機甲車が攻撃態勢に入る。銃座に人が乗り照準を定める。しかし照準の先の少年は一瞬で別の機甲車の上に移動した。そしてまたもエンジンを抉る。そして銃撃を避けるために車の陰に入る。銃撃が止むと陰から出て別の機甲車に張り付く。走る機甲車に対して歩行の速度で対抗する。その速度は機甲車と並走するほどであった。

そして再び装甲を抉り中に乗っている人を殺す。操縦主がいなくなった機甲車はスリップしながら止まる。周りの機甲車はこの少年に対して止まった車を中心に包囲の陣形を取る。そして銃座で攻撃、しようとしたがすでに少年は消えていた。包囲している一台の機甲車に肉薄し、運転席を操縦主ごと抉る。操縦主は絶命し助手席に座っている人も同じく絶命する。

「まだ、まだ足りない」

血を吸ってか少年の持つ槍斧が妖しく輝いているように見えた。それはまさに死神が持つ鎌のようだった。

それでも攻撃を止めない兵団。それに対して少年は陰から蔭へ移動しながら一台ずつ屠っていく。

次第に動いている数が減っていく機甲車。焦りを覚えたのか退却の姿勢を取ろうとする。しかしそれを少年が許すはずもなかった。すでに操縦主を失った機甲車に槍斧を刺し、そして投げるように機甲車を飛ばす。およそ少年の細腕ではできない行動だった。少年の常識を逸した行動は槍斧が支えている。飛ばされた機甲車は逃げようとしていた機甲車に当たる。そしてその機甲車に少年が追い付く。

「ひ、お願いだから命だけはっ」

その車の操縦主が命乞いをする。そう言われても何も聞かなかったように残酷に操縦主を殺す。

そして平原に機甲車の残骸が散らばった。

『ふぅむ。これだけの魂では足りぬな』

「お前との契約は魂を捧げることだ。しかし俺は兵団以外の人を殺すつもりはない」

『まぁよい。そう言う契約なのだからな』

アスタロトは不満げに告げる。しかし少年はアスタロトのために兵団以外に属する人を殺すつもりはない。

「さて、動きそうなものは奪うか」

死んだ操縦主をどかし機甲車に乗る。当然乗っていたバイクを忘れずに車上に括り付けて出発する。

そしてはしること十数分、町が見えてくる。しかし門は閉まったままだった。

「おーい開けてくれ。俺は兵団の者じゃない」

門番は迷ったか伝令を出し上層部の判断を仰ぐ。そして到着から数分後、町長らしき人が出てくる。

「この町は今兵団に狙われている。それもヴァルツ兵団の麾下の兵団にだ」

「それなら俺がさっき殺してきた。心配はいらない。何ならこの機甲車に乗って確かめてくると良い」

そう言われて町長は思案した上で開門の指図を出す。

「ようやく町に入れたな」

そして町長と面と向かって会う。

「本当にあなたは機甲兵団を討ち果たしたのか?」

「あれがその証拠だ」

そう言って血濡れた機甲車を指差す。そう言うと町の兵士たちから歓声が沸き上がる。襲われるはずが助かったのだ。これを喜ばんとしてなんとする。

「どうやらあなたはうわさで聞く救世主にそっくりだ。もしやあなたが・・・」

「多分、その救世主とやらだろうな」

「これは良い。おい、機甲車を出して残骸を回収させて来い。動くものがあったら回収を忘れるな」

指示を出してこちらに向き直る町長。

「あなた様はこの町を救った英雄だ。ぜひ我が屋敷に招きたい」

「それは構わないが・・・」

「よし、屋敷に伝令を出せ。もてなしの準備をせよとな」

そう言われて伝令が飛び出していく。

「んでこの機甲車だが、いるか?」

「おぉ、譲ってくださるのですか?もちろんタダとはう言いません。これくらいで買い取らせてもらいたい」

「あぁその額で言い。あ、上に載せているのは勘弁な」

「ではそのように」

町長は指示を出し機甲車を移動させる。そして町長の屋敷に案内される。

「いやはやあの英雄様を招待できるとは我が家の誇りですな」

もてはやすように言う町長。

「それで町長。ヴァルツ兵団について何か知らないか?」

「恐れながら詳しいことは何も知りませぬ。麾下の兵団が町を狙っているということは風の噂で聞いていましたが、それ以上のことは・・・」

「そうか、わかった」

今夜は町長の屋敷の世話になり、少年は眠りについた。

ありがとうございました。

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