第六章『テスト!』
イチラスさんと合流してセザンカさんに用意してもらった部屋についた。めっちゃ豪華で落ち着けない。うろうろしてたら机の上に乗ってる本を見つけた。すっごいぶ厚い。
「スルイロー。これなんだと思う?」
「ん〜?どれ?」
「これこれ。すっごくページ数あるよ。」
スルイロは私の手からその本を取って数ページ読むと私の返して、
「それ、多分魔術書。サリナだったら読み解けるのかもしれないよ。多分それ持ってる魔力の量によって出てくる文字の量が違うようになってるんだ。だから俺には魔法円しか見えない。読んでみなよ?」
そう言われたので、数ページめくるとびっしり文字が詰まったところがあった。
「スッゴ。何か書いてあるよ。えーっとね、光の呪文…?だって。ってかスルイロ!私たちこっちの文字読めてるよ?!」
そうなのだ。文字が羅列してるだけのなのだが、読めるのだ。日本語ではない。どちらかというと中国語に似た感じだ。
「そういえば、そうだな。何でだろうか…。」
「分からないね…」
だけどすごいものを見つけたような気がする。
「とりあえず、これ読んでみる。スルイロは何してる?」
「んー。やることがないんだよなぁ。とりあえずサリナがそれ読んでるの見てる。」
そういうと私が座っていた椅子の隣にあった机に腰を下ろした。いやいやいや!まって集中できない!そんな近くにいないで!やばいやばい!
「ス、スルイロ!ちょっと離れて…?」
「…何で?」
首を傾げないでっ!可愛すぎるってば!
「ちょっとだけ集中したいから…?」
「何で、疑問形なんだよw。」
そう言いながらも少し退いてくれた。少し心に余裕ができた私は本の内容に集中した。
「…サリナ?」
「…左手を前にかざして…左から円を書いて…?」
「おーい。サーリーナー。」
「…っは!何?なんかしてた?」
やばい全然気がつかなかった。初めてこんなに集中した。それにしても面白い!魔力の引き出し方から呪文の唱え方までのってる。
「いや、すっごい集中してて邪魔しちゃ悪いかなって思ってたけど、迎えの人が来たよ。」
「そんなに集中してた?!マジ?っと、迎え?」
迎えってなんかあったっけ?
「…はぁ。いつも通りだなぁ。なんか安心した。さっきセザンカさんが庭園に来いって言ってただろ?」
あーそういえばそうでした。
「って、テストって言ってたじゃん!」
やばい。何にもしてないよ!どーしよ。これで私落ちちゃったらほんと用無しだよね。
「…何にもしてなくないだろ?本読んでたじゃないか。」
そうだけどさ…。まぁ、行くしかないか…。
「まぁ、うん。行くよ。テストねぇ…。」
とぼとぼと部屋から出て迎えの人の後について行った。
ついた先は広い庭。上をアーチで覆われていて、鳥の囀りも聞こえる。のどかだなぁ。
「サリナさん。こっちです。」
向こうでセザンカさんが呼んでいる。にしても、可愛いなぁ。…ってどこの婆ちゃんだよ…。
「おまたせしました。サリナさん、こちらの本を開いて、書いてあること通りのことをやっていただけないでしょうか。」
そんなんでいいの?まぁいいか。渡されたのは、さっき見てたのよりもっと分厚い古そうな本。恐る恐る受け取って中を開いてみた。どこかしこにもびっちり文字が敷き詰められている。とりあえず、ここのページに書かれてることをやってみよう。何々、人差し指と中指を合わせて、円を右から書き、真ん中に手を置いて…
『光の中にすまわる精よ
琥珀の煌き
光の精 カリランよ
我に力を与たまえ!
デスチャージ!』
私の右手の人差し指と中指は緑色の光を帯びて円を書き、手を置いたその場所から周りに文字が羅列していった。そして真ん中から光の光線が出ていった。わお。天井のガラスのアーチを割っちゃった。
「ご、ごめんなさい!!」
振り向いて謝るとみんなが目を見開いてこっちをみていた。スルイロだけが笑いを堪えているみたいだったが。
「…えっと、私は合格ですか…?」
「……っはい。いや、イチラスさんの話は聞いてましたがここまでとは…。では、サリナさん。貴方を魔法学習
院への入学を許可します。」
やったー!合格できたよ!セザンカさんから今、入学許可証と制服と寮生だよって話を聞いてる。教科書とかは向こうが準備してくれるらしい。ほんと金がなくてすいません。この渡された制服。かわいいんです。ワイシャツにワンピースがついててそのワンピースの色を自分で決められるんだけど、紫色、ラベンダー色、赤色、紺、蒼、緑色があるの。どれがいいと思う?
「スルイロー。どれがいいと思う?」
私一人じゃ決められない。これは絶対一人だと1週間悩むやつ。
「え、俺に聞いていいの?」
「決められないから聞いてるんだよ。」
「……ラベンダー色。」
「ほーう。参考にさせていただきまーす。」
「参考ですか…。」
「参考だよ?あれ、なんか拗ねてる?」
「拗ねてないし!なんで!」
ホーン。こりゃ拗ねてますね。耳が赤い。図星だったんでしょう。まぁ参考程度とか言っときながら私は、星夜が選んでくれたやつにするつもりだったけどね。ラベンダーね。意外だわ。
「セザンカ様。この色に決めました。それと、天井のことすいません!」
「ふふ、大丈夫よ。あれぐらい魔法で直せますので。じゃぁ、この色でワンピースの仕上げしますね。」
さて、仕上げとは…?もう十分仕上がってると思うのですけど。と思いながらも口にすることはなく、ただみていた。すると、胸の部分にエンブレムとクラス?の模様かな?が入った。カッコいい!着るのが待ち遠しいぐらいにかっこいい。
「イチラス。このものたちは、王都はまだ見学してないのですよね?」
「はい。そうですね。」
「じゃあ、案内してあげてください。王都は見るところがいっぱいですから。」
「そうですね。じゃあ、失礼します。」
「はい。お二人も、いってらっしゃい。」
「はい。セザンカ様行ってまいります。」
私たちは、セザンカ様に勧められ王都の見学?に行ってきた。もう大通りは馬車だったり商店街だったり宿だったりもういっぱいあってそのどれもが、本で読んだ世界そのものだった。そして着いたのは魔法学習院。めっちゃでかい。お城には全然及ばないけど、それでも大きい。一階が一年用、二階が二、三年生用。三階がそれ以上の学年の人用。学年が上がるのはテストで決めるらしい。年に二回あってその日は学校中が悲鳴や、爆音やで埋まるらしい。クラスも出来具合で分けるらしい。えー。私それだったらクラス一番下じゃん…。
「これって1クラス何名なんですか?」
「そうだねぁ、俺の時は5〜10だったような気がするな。」
「えぇ、すくな!」
「そうか?サリナなんてあの魔力じゃ一番上だから4人ぐらいになると思うぞ?」
「なーんとー。」
そんなに少ないの?!マシかぁ…仲良くやってけるかなぁ…。
「まぁ、サリナだったらその能天気さはみんなに好かれるだろうから心配入らないだろうけどね。」
いやそれが問題なんだって!この能天気が!
「イチラスさん…。サリナが傷ついたって顔しちゃいましたよ。」
スルイロよ。それは言わないでよろしいことなんだがな…。少し空気を読んでくれ。
「能天気ですよっ。どうせ!」
「ゴメンって。褒めたつもりなんだけど…。能天気っていう言い方が悪かったな。元気で屈託がなくていいってことよ。」
「今更弁解なんて聞きたくないでーす。」
すっごい隣でスルイロが笑ってるんですけど…。こっちの方が傷付いたわ…。
「ほれ、これがあんたの教室になるところだ。」
言い合いをしながら学習院の中を進んでいたのでここまで来る道は知らないけど…ヤバイ今度一人で来れるかな…。まぁうん。どうにかなるだろう。にしても教室4人ぐらいしか入らないっていうのに大きくね?
「広すぎません…?」
「そうか?俺の部屋と同じぐらいだぞ?」
いやどんだけイチラスさんの部屋大きいんだよ!多分30畳以上ある…。それに豪華なんだよ。なんで学校なのに豪華なの…。
「豪華すぎません…?」
「サリナ、さっきから疑問だらけだなw豪華なのは俺も認めるけどここには貴族の息子や娘も来るからなぁ。こんぐらい豪華じゃないとあいつ…ゴホンウホン…あーあの人たちは落ち着けないんだよ。」
あいつって言ってたよな気がするけど目を瞑っとこう。
「庶民は逆に落ち着きませんけどね…。それとスルイロ、ブツブツ何言ってるの?」
「こんなところにこんなに金を使ってるってのは……はいなんでしょう?」
「そろそろこっちの会をに加わっていただきたいんだけど」
「…ゴメン。んで?豪華すぎるって?」
「そうそう。これじゃぁ私落ち着けないって」
「どうせこのままだと寮も豪華だろうから、そのうち治るよ…」
なんかすっごい圧を感じたんだけど…。星夜怒ってる?…あ、そっか。星夜の家って質素な生活だったもんね。こんなところにお金を使うのは想像がつかないのか。
「イチラスさん。私…こんな貴族の中でミスしないでやっていけるような気がしないです…。」
だってこんなに豪華でちゃんとしてて庶民の私なんて…。馬鹿にされるに決まってる。どんだけ私の魔力がすごいって他の人から言われたって自信なんか付きやしない。
「サリナ。この学校はどんだけ身分が高くとも、魔力で及ばなければ見下されるんだ。実力主義なんだ。身分な
んて気にするな。俺だって男爵家の長男だが、馬鹿にされるんだよ。だから魔力で、こうなってるんだ。俺の仲間の中には俺より身分の高い家柄のやつだっている。けど、したがってたろ?」
そうだけど…。
「サリナ。俺も不安だよ…。いつもサリナと一緒にいたからな。でも、俺らは頑張らないと。母さんも父さんも今はいないんだから。」
そうだよね。私だけこんなに弱虫。みんなに迷惑かけるのは必ず私。星夜はいつも私を励ましてくれてる。星夜だって怖いだろうに。
「ありがと。頑張ってみる。」
私は笑った。心配かけないって決めてたもんね。
「そうだ。サリナは笑っていた方がいい。」
そうイチラスさんはそう望んでたと言って私の頭を撫でた。ちょっと嬉しかった。