第五章『仲間』
「今からその、セザンカ様のところに行くんですよね?なんか知っといたほうがいいこととかありますか?」
「そうだなぁ。スルイロお前は多分大丈夫だと思うが、サリナ、お前は黙って笑っとけ。」
えっちょと待って、やっぱりイチラスさん優しくない!
「イチラスさん!ちょっと今のはひどいですよ!ねぇ、せ、、スルイロもそう思う…でしょ?!」
なんで星夜まで笑い堪えた顔してんのよ!
「ごめん。サリナ。俺もイチラスさんの言ってることには否定が入れられないっ、ククッ。」
あー、はいほんとすいません。黙ってます、黙ってます。笑顔でいますよ!魔法のことを考えれば大丈夫なはずだもん。
「あーぁ、拗ねちまったよ。スルイロどうするんだよ。」
「サリナ。な、ごめんって。笑って。後でなんかするからさ。」
むぅ、ずるい。その顔でその言葉は。許したくなるじゃん。まぁいいやゆるそう。
「もういいですよ。私にも非はあるの自覚してますから。それよりこの城大きすぎませんか?」
今お城の前にいるのだが、端から端までお城。それも真っ白な城壁でそれだけで立派だっていうのに、所々キラキラしてるんですけど。絶対あれなんか鉱石埋め込んでるでしょ。
「そうだろ。この国の治めてるセザンカ様が住んでるんだからな。俺たちの誇りだよ。」
そうイチラスさんは見上げながら私たちに言った。
「それじゃ、入るぞー。ちゃんと後ついてこいよ?迷子になったらしらねぇぞ?」
脅し文句通りお城の中は迷路のようでそれでいて広かった。もう何回階段上がったかも覚えてないし、どんだけ曲がり角曲がったかも覚えてない。とりあえず広い。
「おわっ」
イチラスさんが急に止まってよそ見してた私は見事に背中に突っ込んだ。痛い。
「ごめん、サリナ。痛くねぇか?後、ついたぞ。」
ちゃんと心配してくれた。やっぱり根はいい人なんだね。
「着いた?ってここ?」
目の前には木製の大きな扉と兵士さん。やばい。緊張する。はぁーはぁー。うん。黙って笑顔にしてよう。そうじゃないと口から心臓が出てきそうだ。
「失礼いたします。イチラス・ラン・ザール、入室の許可いただけませんでしょうか?」
「…お入りください。」
扉の向こうから聞こえたのは幼い女の子の声だった。扉の中に入ると、そこは日光がよく入る大きな部屋で、奥に一つ椅子がありそこに女の子が座っていた。多分12歳ぐらい。可愛かった。白く透き通る肌にライトグリーンの目。でもその表情は大人のものだった。でも、少し疲れ?寂しさ?の色もあった。
「イチラス・ラン・ザールです。お元気ですか?セザンカ王女様。」
「顔を上げていいですよ。お元気そうで何よりです。それで…そちらのお二人は?」
私たちのことかな?喋り方も大人びてる。
「こちらの子供たちは、王女様が確認された荒野での爆発場所にいたものたちです。こちらの少女の方、名前をサリナ・ヒャルサヤといい、この者がその魔法を発生させた張本人で、悪意もなくまたとてつもない威力なので学院のほうに入学できないかと。そして少年は、魔法はそこそこのなんですか、頭がとても良く政治の方に使えるかと思いまして。」
すごい。イチラスさんすらすらと説明した。私が自己紹介する間もなかった。
「そうですか。サリナさん、あなたは本当に悪意はないのですね?あれば今ここで打ち殺します。どうですか?」
ヒェェ。殺すって12歳ぐらいの子がっ!
「な、ないです!全くもって!」
「…そうですか。で、そちらの方の名前は?」
そちらの方…だから星夜か。
「お、僕はスルイロ・ヒャヤルサと言います。」
「…スルイロさん。あなたは王政に関わる覚悟はありますか?」
「…あります。」
今星夜がすごく緊張してる。あと、とてつもなく大きな覚悟もしたことも。だってたかだか15歳の向こう世界で高校生、ようするに成人もしてないし政治だって関わったこともない年で異世界の政治に関わるんだから。それに私はまだ学院に入るから同年代がいっぱいいるだろうけど、政界だったら大人だらけだよ?ほんと尊敬する。
「そうですか。イチラス、」
「はい。」
「ご苦労でした。少しの間下がってなさい。私はこの者たちと話があります。後に呼ぶので扉の外で待っていてください。」
「は。」
まって〜。イチラスさんがいないと私たち何もできないよ。あー行っちゃった。どうしよう…。
「サリナ、スルイロ、私はセザンカ。この国の王女なんだけれど、本当は違うのです。」
「えっ?」
まって今すごく崩れたものの言い方になったよ?
「その髪の色と目の色、この世界では珍しいのです。あなた達は日本人ですね?」
えぇ?!なんで分かるの?
「セザンカさん。俺たちはあなたのことをどれほど信頼していいかわかりません。でも、あなたが言ったことは肯定します。それで貴方は何人で?」
星夜も、なんでそう冷静なの!
「私も日本人です。3年前にここに来ました。いや…三年かどうかは定かではないのです。私は今13 歳。日本名は増山 桜子。いまは髪の色も目の色も変えていますが本当は黒髪、黒目です。ここの世界では黒髪黒目は悪魔の子らしいので。サリナさんスルイロさんたちは黒というより紺ですし、目は茶色なので多分大丈夫だとは思います。」
増山…増山、なんか聞いたことのある名字だ。
「増山って!確か5年前に行方不明ですごい探された子だよね?そうだよね星夜?」
あ、今星夜って言っちゃった。いい加減スルイロって覚えないと。
「確かにそうだ。うちらの近所だったからすごかったよな。でも5年前ってここの時間の経過の仕方って向こうと違うんだな。」
そう言われれば、そうだね。でもなんで増山さんが王女に?
「なぜ、王女に?私たちみたいなことになったのですか?」
セザンカ改め桜子ちゃんは少し悩んで
「すいません。それを今話してしまうととても長くなってしまうため、後で手紙を書かせていただきます。あ、それと本名を教えてもらってもよろしいですか?」
そう言われれば名乗ってなかったね。
「私は、百鬼 沙夜香。15 歳だよ。」
「俺は、八木山 星夜。15 歳だ。」
そういうと桜子ちゃんはふっと笑った。すごく可愛いんですけど、なんなんですか?
「心細くて、寂しかったんです。今は何か心が仲間がいてとてもポカポカしてます。あ、それとですね、話を戻すんですが、沙夜香さん。魔法学習院に入るには試験があります。ペーパテストと実力テストなんですが、後二日なんですねそれが行われるまで。なので後で庭園にいらしてください。そこで実力を見ます。それで星夜さん。明日から王政の方の助手、私の補佐役できますか?あ、補佐役と言っても私が言ったことを皆さんに発表してもらうだけですので。」
後二日!?あ、でも庭園に招いてくれるってことはそれで合否が決まるんだよね。って!私何の呪文も知らないよ!?
「私何の呪文も知らないよ…?」
「それは大丈夫です。まあ来てからのおたのしです!」
えー。これやばいよ!
「俺、そんな大役でいいですか?」
あ。星夜のことすっかり忘れてた。何だっけ補佐役だっけ。
「大丈夫だよ。星夜ならできるさ。私より頭いいだし。周り見えるし。」
あれ、今私星夜のことベタ褒めしたよね。あーすごい顔赤くしちゃった。まぁでも多分やる気になったでしょう。
「増山さん、いやセザンカ様。こんなんでいいならよろしくお願いします。」
「こちらこそ。スルイロさん。よろしくお願いします。」
はぁ一件落着?した感じ。
「じゃぁ、イチラスさんを呼びますね。後で庭園に来てください。後休憩するお部屋も用意しておきます。」
ありがたい。本当に疲れたところだったんだ。スルイロもほっとしているみたいだ。