第三章『孤独』
「ここはもう地球じゃないのかな…」
私は少し弱音を吐いてしまった。
「多分な。なんで俺らがここに来たのかの理由が知りたいな。」
「それは…私も思う。もう家族にも会えないのかな。戻る方法ってないのかな…。」
「それも調べたいな。さやかは学校に行けるみたいだからそこで調べてみるか?きちんと授業を受けて
いればそういう類のものも受けられるだろ。」
「うん。ちゃんと受ける。だってすっごく今嬉しいもの。得意で好きなものを習えるならきちんと受けるさ!」
星夜は強いな。憧れるわ。一緒にいて本当頼もしい。
「そういえば、勝手に名前作っちゃったけどいい?」
「まぁ響きがかっこいいから良しとするよ。こっちも勝手に苗字作ったし。二人の名字からとってきた。」
「うん。それはわかった。それより勝手に血のつながりを作ったね?」
「そっちの方が説明が楽で…」
「…まあいいや。」
この時星夜が赤くなってたことは言わずにおこう。ちょっと私も嬉しかったし。
そろそろ大きな建物?いや城壁みたいなのが見えてきた。
「ここが王都のサザルキアだ。お前らは、身分証明書なんてものは…持ってなさそうだな。」
「はい…」
「待ってろ今紹介状を書いてやる。ちょ、もう一回名前言ってくれ。フルネームで。」
「サリナ・ヒャヤルサ。」
「スルイロ・ヒャヤルサ。」
「ありがとう。
我ここに誓う。我の言う音を記したまへ。サリナ・ヒャヤルサ、スルイロ・ヒャヤルサ」
私の目の前で魔法使ったよイチラスさん!かっけー!私もやりたい!おぉお、文字が羊用紙に刻まれてく!ペンがなくても書けるのね!
「ほい。これがお前らのだ。無くすなよ。今の時期はあんまり商人が来てないから並んでないが冬とかになるとひどいんだからな。まぁお前らに愚痴っても仕方ねぇか。」
あのー、今はそんなにとか言ってるけどよゆーで20人以上並んでますよ?イチラスさん。冬どうなってるんですか。
「きちんと俺の後をついてこいよ。人さらいなんてごめんだぞ。」
「えっ、イチラスさんここ人さらい出るんすか?!」
「おう、スルイロ。出るぞ?お前なんて特に美少年なんだから気をつけろよ。」
「ねぇ、私も気をつけたほうがいいの?」
「サリナは、まぁ強いから大丈夫だろうな。それに、まずもってさらおうとは思われないだろうし…」
「エェー。ちょっとイチラスさん今私の事ブスだって言いましたね?」
「いや言ってはないが…。…あぁ!ごめんよ本当ごめんて!そんなつもりじゃなかったからさ!な?」
「うわーん。酷いよ〜。せ、スルイロ、イチラスさん私のこといじめてきたよ。」
「まぁしょうがないんじゃ?外見はともかく中身はお前はいいからそこまで凹むなって。」
「あぁ〜こっちもひどかった!」
ちょっと今すっごく傷ついた。だって、だって好きかもと思ってた人に外見はそんなに良くないって言われたんだよ!ほんとにもう。ずっと好きで、可愛い子を演じようと頑張ってた私の努力は無駄だったの?小学校からずっと一緒で好きだったのに。私が魔法とかそこらへんのものが好きだって言っても引かなかった唯一の人で、優しくて……。本当はこっちの世界にこれてよかったと思ってるの。星夜と二人きりだし、私の好きな魔法も使えるし。そりゃしーちゃんにも会えないしお母さんにもお父さんにも会えないから少し寂しいけど……。
「おい、さやか。大丈夫か?」
星夜がひそっときいてきた。いつの間にか私の目の淵に涙が溜まっていた。それに気づくともう流れるのが止まらなくなって、ボロボロとこぼれ落ちてしまった。本当に情けない……。
「お、おい?!本当大丈夫か?」
「ごめん、寂しくなっちゃって。不安だし…。」
「……そうだよな。」
星夜は私のことを私が好きなその瞳で真っ直ぐ優しく見つめてくれた。もう…本当に…何でこんなに優しいのよ。背中もさすってくれるし。…もう、これで泣くのは最後にしよう。だから今思いっきり泣いてやろう。他のイチラスさんたちも気遣わしてしまってるし。
「……ごめん。もう大丈夫。ありがとう。」
私は今出来る精一杯の笑顔で笑った。もう星夜を困らせたくないから。笑った時星夜がホッとしたような痛ましいような顔をしたのは私は気がつかなかった。