第二章 『魔法の存在』
「おーい、星夜!帰るぞー!」
「ん。グラタン頼むよ。」
「はぁ?手伝ってよね。言ってたじゃん?」
「そんな〜。だってテスト二週間前だぜ!?」
「それは私も一緒です。」
「あっそうだった。」
「え!?今私何歳だと思われてた?」
「ごめんごめん。」
私たちはこんな会話をしながら学校から歩いて10分ほどの家まで歩いていた。
「ねぇ、私の目がおかしいのかな?こんな道あった?」
「ないよ。だってこんな青々とした草が生えてるところなんてなかった。」
いつのまにか私たちは草原を歩いていた。道を間違えたかな?いやもう何十年も住んでいるんだから間違えるわけがない。じゃあここはどこだ?
「ここはどこ?」
「さぁ、わかんない。」
どうしてだろうか。何かがおかしい。
「せ、星夜。なんか変な感じがする。」
「どうした。気持ち悪いのか?」
何だろうか。前にもこういう感じになったことがある。
「違う。体の中が騒がしいの。本を読んでる時になる感覚に似てる…ッ…。」
「はぁ?大丈夫かお前?俺はそんな感じしないけどな。叫んで済むなら叫べよ。」
あ、叫ぶっていう手があったか。
「はあぁぁぁー!」
叫んだときに私は衝撃的なものを見た。私の手から「何か」出たのだ。
「おまっ、えぇ!?なんかしたか?」
「えっ、何もしてないよ?叫んだだけで…」
「でも火が出たぞ……」
「出てたねぇ……」
正直びっくりしててまだ何が起きたか理解してないし、ここがどこかもわからないままだ。何もわからない土地、もしかしたら全く違う世界に来てしまったかもしれない。たったの子供二人で。
これからどうしたらいいのだろうか。
「おい、なんか音がしないか?」
「えっ、……本当だ、なんの音…?」
「よくゲームで聞くような」
「詠唱?だっけ」
「そんなんだな。ってかやばくないか!?」
「朝日のうちにすまわる光
翡翠の涙
水の使い手スイラルカーよ
我に力を与え給え。
チャージ!」
「うわぁぁー!なんか詠唱きたー!」
私たちは、一目散に逃げた。これでもかってぐらいの速さで。
「うわぁっ!?」
「うおっ!?」
ただし逃げた先は崖だったんだよねぇ。要するに私たちは追い詰められたんです。はい。
こんな定番な展開ある!?酷くない!?クエスト来るならなんか武器ちょうだいよ!
「どうしよう星夜。終わったね。」
私は崖から下を覗いて顔を青ざめながら言った。
「だな。せめて後から来る人と言葉が通じればいいけどな。」
星夜はこともなげにそう言った。
「なんでそんなに落ち着いてられんの!?」
「いやもう騒いでもしょうがなくね?」
「そう言われればそうだけど……」
そう私が言ったとき私のすぐそばを水色?の光がかすめていった。
「ヒャァ!?」
「おぁ!?」
何だったのだろうあれ。…あ!さっきの詠唱のやつか。私の知識から言うとあれは水属性だ。賭けてもいい。
「おい!そこに誰かいるのか?いるのなら出てこい。こっちは五十人だ。こちらはクルシャニカ聖王国
である!」
誰かが私たちに向かって怒鳴ってきた。聞こえてくる言語は日本語だ。まぁなんか私たちの知らない国なのかな?まぁ話し合いはできるみたいだ。
「あの、ここです。ここに二人います。あー、闘う気はありません。なので話し合いできませんか?」
星夜は、そう大人びた返答をした。私なんてもうパニックでいっぱいいっぱいだったのに。
…なんか恥ずかしい。自分の馬鹿さ加減をもう一度実感したわ。
「二人だと!?どう見てもあの火属性の魔法は10人がかりのものだったぞ!きちんと出てこい!嘘ついてたらわかってるな?」
ヒィィ。やっぱり私のなんかやっちゃったやつが原因じゃん!
……ちょまって今このおじさん(今おじさんが目の前に立っています)魔法って言った?それも火属性の。言ったよね?
「本当に二人です。なんなら調べてくださいよ。なんなんですか?」
星夜そう怒るなって。今私の機嫌は最高潮なんだから。だって今このおじさん魔法って言ったんだよ?夢の魔法、憧れてた魔法!
「…そこまで言うなら嘘ではないのだろう。とりあえず手を縛れ。おい!クルース。縄でこいつらの手を縛れ。」
なんだと〜。そこまでのことなのか?わたしゃ犯罪者扱いかよ。
…うっわ、すごい目で星夜が睨んでくる。ごめんって。
「その、なにかしてしまったならごめんなさい。私たちは、ただのコウコウセイで……」
ん?なんか高校生が変な響きになったぞ?カタカナみたいな……
「コウコウセイ?そりゃなんだ?新しい犯罪組織か?」
やばい。やった。どうしよう。
「あの、ここはどこでしょう?一体。」
とりあえず話をそらそう。
「はぁ?大丈夫か?ここはクルシャニカ聖王国。今は、セザンカ女王様が治めてらっしゃる。それより
なんでお前らみたいな年頃のやつが二人でほっつき歩いてんだ?旅人か?」
「その……親が旅人で私たちもそれについて行ってたんですけど、先日亡くなって。で、ちょっと知り合いがいるとか聞いてたこの国に向かおうとしてたんですけど…」
するりと星夜が嘘をついた。私は何も言わないでおこう。魔法のことを考えていよう。うん。
「そうなのか。まぁそういう奴もいるとは聞いてるが。しっかし、旅人であそこまで魔法が使えるとは。どんな生活してたんだ?普通、魔法は習わないとできないものだし個人差が大きくでる。正直怖いぞ。」
「あれって、魔法なんですか?初めてで、」
あ!思わず口挟んじゃったじゃん。ダメだってさっき自分に言い聞かせてたのに。あー本当私ってバカ。
「魔法だ。小さな魔法なら誰にでも使えるが、あんな攻撃魔法は使えるやつなんてそうそういない。」
「そうなんですか。ちょっと知れて良かったです。…あの、今私たちは親なしの孤児なんですけど、どうすればいいでしょうか。その、知り合いって言ってた人も旅人だって聞いてたんです。」
「あー…お前ら今何歳だ?」
「15です。」
「そうか…丁度魔法学習院の入学年齢だな…。さっきの魔法ってどっちが出したんだ?」
「私です。」
私は食い気味に答えた。
「そっちか…。あー、俺の独断じゃなんともできないが、女王様に頼んでみるか。おい名はなんという?ちなみに俺はイチラス。イチラス・ラン・ザールだ。」
ど、どうしよう西洋風の名前だったよ。私の勝手な中二病知識でつけていいかな?
「私は、サリナ、こっちのはスルイロ。」
ごめん勝手に名前つけて。でもかっこいいからいいでしょ。ちゃんと由来も本名からにしてるから!
「そうか。いい名前だな。ちなみに下の名前はあるか?旅人だとないもんなのか?」
し、下の名前だと〜!?つけてしまったほうが楽なのかな。どうだろうか。
「下の名前、あの、あまり言われてなかったから分からないけれど、多分ヒャヤルサ。俺たち兄妹だから。」
「カッケー名前だな。まあいいや。おいクルース。こいつらの手の縄取ってやれ。」
お!取ってくれるのか有難い。