30.チャーチタウン包囲戦 その4
3連休連日投稿です
間合いが縮まり 俺の張った防護障壁と彼女たちの防護障壁が
ぶつかり、ブーンという摩擦音が鳴る
おそらく俺の防護障壁の方が防御力も耐久力も高いが
手数はオールランダーの向こうの方が上だろう
クロエが「魔弾十二連撃」と叫び、エリーが「炎華十連撃」と
叫び剣を打ち込んでくる
確かに剣捌きは異常に早く残像が見えるくらいだ
一撃一撃に魔術攻撃が込められており、剣の物理攻撃力の
ダメージが乗っかって俺が張った防護障壁の耐久力を削る
壁の耐久力は10分の1程度だが目に見える形で目盛りが
減った
魔法剣攻撃なのでおそらく何らかの付加効果、例えば防御力
減少、知力減少などの効果があるはずだが、壁の中の本体に
当てない限り何の意味も無い
対する俺と神獣様だが
電撃ライトニングを織り交ぜながら 俺は剣を振るい 神獣様
は鉤づめで彼女たちの防護障壁の耐久力を削っていく
俺達の攻撃は威力は確かなものがあるが見た目が地味なので、
恥ずかしげも無く自らの術の名前を叫び、見た目が派手な剣舞
を披露する彼女たちに軽い嫉妬を覚える
術の名前を叫ぶのは相手に重要な情報をタダで与えているような
ものだ 従者のエリーはともかく 無詠唱で術を発動できる
勇者クロエはこの点だけに限ればおまぬけと言ってよい
彼女たちは名前を覚えるのがめんどくさくなる程
いろいろな魔法剣攻撃を行ってくる
お陰で、こちらの防護障壁の耐久力は50%までに減ってしまった
「ねえ、まだぁ、待ちくたびれたよ」
後列の髪の青いサマンサが不満を口にする
「わかった、わかった、相手していいよ」
クロエの許可を得たサマンサとケイトは跳躍したかと思うと
俺達の頭上を遥かに超え、アベルとミーシャの後ろに降り立つ
フロート(空中浮揚魔術)も使えるのか
サマンサがアベルのケイトがミーシャの相手となった
アベルとミーシャは魔術攻撃ができない剣撃のみだ
時間をかけると不利になるかもしれない
そんな折 神獣様の再三のアタックによりエリーの防護障壁
が決壊した 即座に神獣様がエリーのレガース(脛あて)に
喰らいつく
レガースは金属性だが牙が食い込み血が流れ
エリーの顔が苦悶に歪む
普通の剣士なら膝から下を持っていかれるだろう
さすが勇者の従者というところか 防御力がそれなりに
高いらしい
他の3人が 「 エリー 」と悲痛な声で叫ぶ
その時彼女達に向け大量の矢が飛んでくる
周囲を見渡すと すでに残っていた敵の攻城塔と梯子は
全て撤去され 城壁上に侵入してきた敵兵も全て
討ち取られていたようで
彼女達だけがとり残されている状況になっていた
「 ここまでのようね みんな撤収するよ 」
4人は空中浮揚で城門前に降り立ち
魔術攻撃で内側から城門を打ち破った
「おじさん 今度は痛い目に会わせてあげるからね」
そう言い残し 城門から堂々と走り去っていった
彼女たちが出て行った直後に長いロープを持った一人の男が
後を追う。ラタンだった。ラタンは投石紐を持っていた
投石紐を上空で廻して遠投する
投石紐は彼女たちの一人の足に命中し2つの脚を縛り上げた
ラタンは投石紐に結び付けているロープの端に位置する存在
である一頭の馬の尻を叩く
馬は街の真ん中を目指して駆けてゆき
ロープに繋がれたエリーが地面を物凄い勢いで引きずられながら
城壁内へと戻ってくる
エリーが城門を通過したのを確認した俺は ガラ空きとなった
城門前に新たな防護障壁を展開する
残された2人は戻ろうとするがクロエが制した
「 エリーを返しやがれ くそじじい 」
サマンサが悪態をつくが
やがて3人は去っていった
『 ラタン、グッドジョブだ 』
俺はラタンを褒めた後
エリーを回収しにいく
発見されたエリーは身体は大丈夫の様だが
引きずられたショックで気絶している
駐屯基地だった建物の一室のベッドに運び込む
魔法剣を奪い ハイヒールで治療した後に
外面を内側にした プロテクションの壁の檻で
閉じ込めた
彼女のステータスを閲覧する
想定通り オールラウンダーのそれだった
目だった弱点もない代わり 飛びぬけた数値もない
ただ魔術攻撃の種類の多さだけは特筆に値する
スキルの中で気になるものを見つけた
連携スキル〔 不死鳥の舞 〕
ヘルプを見ると、術者のMPの残り全部とHPの半分、
寿命10年を費消して、全方向に回避不能な高出力の
エネルギーを放出する。防護障壁無効。全物質貫通。
発動条件:勇者と3人の従者の同時術発動
彼女たちの言っていた「あれ」とはこれの事か
代償から言って禁じ手だな
寿命10年は若い彼女達でも嫌だろう 使用は2の足を
踏むはずだ
彼女達を追い込むのは回避するのが得策のようだ
いずれにせよ一人足りない今は発動できないが