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15.男の決意


俺達がダイダラと格闘した夜


ラタンの部下の男兄弟の片割れカインが俺のテントに一人訪ねて


きた。話があるそうだ


俺はラタンの部下とはじっくり話をした事はない


そもそもラタンとその部下はエルトリア王家の家臣であり


今は俺についてるだけの陪臣である


また3人の上司はラタンであり 育成監督はラタンの仕事で


俺はそれに口をはさむべきではない


カインはそれは理解してるはずだろうから


わざわざここに来たのにはそれなりの理由があるのだろう





「勇者様、俺に魔法を教えてほしいんです」


彼が突然こう言いだすことに 俺は幾分察しがついているが


一応聞いてみる


『どうしてかね、カインは剣士のはずだが』


「俺はもっと強くなりたいんです。剣士として俺は才能が


 ないと思います。俺は勇者様のように人を守れる強い


 魔法使いになりたいんです。」


『君はどうして自分の事を剣士の才能がないと思ってるんだね?』


「それは。。。。。」


原因は弟のアベルだった。旅を始めた頃は二人の剣技の差は


ほとんど無かった。しかし、最近アベルは才能が開花しだしたのか


めきめきと頭角を現した。一方カインは伸び悩み今では格下だった


ミーシャにまで後れをとるようになっていた


 俺が観察している限りカインはミーシャにほの字らしい。視線が


ミーシャの挙動を追っているのをよく見かける。一方のミーシャ


だが、ステアに聞いたらどうも、ミーシャはアベルに好意を抱いて


いるようだ。だが、俺の見たところアベルはそんな事は全く関心を


示しておらず、ひたすら剣の道を究めようとしているようだ。


 典型的な三角関係だった。


 今日のダイダラとの闘いで自分より剣技で先んじてしまった


ミーシャが怪我をしたのにシヨックを受け彼女を守るには


どうすればいいか悩んだ末の決意なのだろう


 俺は彼の決意を立派に思う 


 しかし彼のためにこういう


 『君には魔術師の才能はないよ』


 実際彼だけではなく3人とも魔術師としての才能はゼロに近い


 と俺は思っている。ステアも同じ意見だった。


 「そんなのやってみないとわからないじゃないですか」 


 彼は怒ったように反論する


 『たしかに、どんな事でも結果はやってみないとわからない』


 『でもそれは君が今進んでいる剣の道についても同じことが言える


  んじゃないかな』


 『今君は剣の道で伸び悩んでる。それは目の前に壁ができたから


  君はその壁を乗り越えられないと思ったんだよね


  でもホントに乗り越えられないのかな?』


 『もしかしたら明日には乗り越えてるかもしれないよね


  1日の努力で乗り越えられなかったら1ヵ月


  1ヵ月の努力で乗り換えられなかったら1年


  1年の努力で乗り越えられなかったら10年で


  乗り越えられるかもしれないじゃない?』


 『ね、やってみないとわからないでしょ』


 『古代から剣の道を目指した人って何百万人っていた訳じゃない


  その中で有名な剣士ってさ 今君が乗り越えられないと思った


  壁と同じような壁を何百、何千って乗り越えて力をつけた


  人だと思うのよ』


 『伝記や伝承のようにみんな生まれた時から剣の天才だなんて


  嘘っぱち そんなの信じているのは俺は努力してもそんな奴に


  はなれないって 自分が努力しないで楽したい奴の言い訳に


  すぎないわよ』


 俺は慣れない説教をしているせいか、何故かおねえ言葉になって


 いる 俺は実用主義者だ 内容が伝わればいい 気にせず続ける


 『君は剣の道を目指したのには理由があるんでしょ。もう一度


  思い出して見て。わたしは君は剣の道を目指した方がいいと


  思う』


 『君が望むなら、私が知り合いの剣豪に紹介状書いてあげる


  きっと学ぶところがあるはずよ そこで強くなったら


  私が雇ってあげるわ』


 『カイン・リシュリー あなたわ壁を何万枚も越えて


  最強の戦士になるのよ! そしてミーシャのハートを


  射貫きなさい!』


 『今から1週間で行くかどうか決めなさい、行かなくても


  今の1枚くらい自分で越えられるはずだから 決めるのは


  あなたの自由よ』


  そう言って彼を下がらせた





 思いっきり彼の人生設計を勝手に設定してしまった


 決めるのは自由といいつつ、その前に半強制みたいに言ってるし


 いつの時代も若い男子を動かすエネルギーは女の子


 絡みである


 好きなあの子に好意をもってほしい、認めてほしい、仲良く


 なりたい そんなエネルギーは時として爆発的に偉大な事を


 成し遂げさせることもある


 このまま三角関係で悩み続ければカインの剣技は低迷したまま


 のような気がする


 二人と引き離した方がいいとだろう





 知り合いの剣豪とは旅の途中での飲み屋で知り合った


 ギャンブルについての議論で意気投合したのだが


 ただのおっさんかと思ったが 酔っぱらって奴と肩を組んで


 千鳥足で歩いていたら 


 迎えに来たステアは奴の顔を見てびっくり


 したようだ 誰でも知っている有名人らしい


 今は聖ダルタニア教国の首都で道場を開いている


 カインが彼からどれだけ得るものがあるかは彼次第だ





 俺のお供を離れ他国に武者修行にいくとなると自主除隊という


 ことになり軍人恩給などの受給権を失う。彼の両親としては


さぞ心配な事だろう。もし彼が修行にいくなら、彼の両親に


手紙をかくつもりだ


 修行から帰ってものになってなくても俺は彼の人生を引き受ける








 もし彼がものになってすごい剣士として戻ってきても、その時


すでにアベルとミーシャはくっついているかもしれないが


その場合はステアに誰かいい娘がいないか探してもらうつもりだ





 俺は自分の思念がおねえ言葉から元に戻っていることに安心する





 5日後、カインはすっきりした顔で俺に修行に行きたい旨を伝え


に来た。


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