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102/110

101.再度の転移



白いモヤが消え視界が広がると、そこは巨大な工場のような場所だった。



「 駆動システム最終チェック ダン、可動出力70%まで上昇 」

「 推進システム最終チェック ダン、可動出力80%まで上昇 」

 何やら体にぴったりの薄手のボディスーツを着た人間があちこちで忙しそうに

動き回っている。この星の言語も俺は理解できている。



「 急げ、時間がないぞ。敵は待ってくれないぞ。ウェポンシステム

  チェックどうなっている?早くしろっ 」

 工場の親方みたいな体格のいいおっさんが怒鳴りつける。

 敵? どうやらこの星でも戦争は行われているようだ。


 周囲と同様に体にぴったりの薄手のスーツを着た女性が近づいてくる。

「 大佐、こんなところにいたんですか。何ですかその格好は。

  仮装趣味は御自分の部屋でだけにしてください 」

 彼女は俺の腕を掴んで強引に引っ張っていく。どこかに連れて行こうと

しているようだ。


 俺は一つの部屋に連れていかれると、着てる鎧やら、甲冑やら、エルト

リア王から拝領した魔剣やら、背中に背負ってる神器である盾やらを

手慣れた手順で、どんどん脱がされ、彼らと同じようなボディスーツ

を着せられた。


「 あら、大佐、随分ダイエットされたのですね。これじゃ合わないわ。」

 別のスーツを取り出し俺に着させた彼女は俺の手をまたぐいぐい引っ張

って元の場所に戻っていく。


 さっきは対象に近すぎてわからなかったが、俺の前にあるものは例の

あれだった。日本でモビルスーツとか言われていた巨大な人型ロボットだ。


 彼女はあろうことか、俺をロボットの胸部にあるコックピットと思わし

き場所へ思い切り突き落した。

「 今日で200機撃墜記録達成 決めちゃってくださいよ 

  祝勝会の準備をやっときますから 」

『 違うんだ、あの、俺は。。。。 』

 最後まで言い切る前にハッチが閉まる


『 おい、出してくれ。お前らはひどい間違いをしてるぞ 』

 喚きながらハッチを叩くが、外には聞こえないようだ。

「 全システムチェック最終確認 ダン、最大可動出力100%、

  強襲型ウエイブライダー出撃準備完了 」

 非情にもロボのナビが告げる。

 その後、たぶんカタパルトのようなもので、思いっきりのスピードで

射出される。


 射出直後に前面の景色が現れる。無数に星が輝く宇宙空間だった。

宇宙基地か宇宙戦艦から俺は射出されたようだ。

「 敵遭遇まで10分 」前面のパネルに赤丸で敵の位置が示される。

 射出後もロボは自動で動くようだ。

 こいつ、もしかしてパイロット操縦補助システムとか搭載されてるんじゃね

 俺は頭の中でコースから右にずれるように念じた。

 するとコースは右にずれた。念じるのを止めると元のコースに戻る。

 どうも思考リンク系の操作システムが搭載されているようだ。


 敵が、といっても俺にとって敵かは不明だが、まもなく視認できた

 案の上、敵もロボだった。3体いやがる。

 俺の乗っているロボ目掛けてビームが飛んでくるが、俺のロボ、たしか

機体名はウェイブライダーだったっけ、は自動で回避してくれる。頭で

こちらの武器が作動するイメージをするが、発動はしなかった。

『 武器のスイッチはどれなんだ 』

と独り言をいいつつ、前面パネルの中央部のレバーを握る。指先に何かの

スイッチがひかかり押してみると、ビームが発射された。

前面パネルのターゲットがロックオンした瞬間にビームを発射するが

敵も自動回避システムでジグザグに移動し、なかなか当たらない。


 このままだと、そのうち俺のロボに直撃が来るのは必至だ。俺はこの

ロボの操縦は初日で圧倒的に不利だ。自分のステータスを確認すると

星2個の勇者になっていた。だめもとでロボの前面に無限の壁を展開

し、敵のビームの射線上と直角になるようにロボをイメージで操作する。

無限の壁は緩く凸面になるようカーブをかける。


 自動回避をやめた俺のロボは直撃を受けるが、無限の壁がビームを

広角に弾き返し敵をとらえた。3体とも反射ビームで片付けた俺は

ロボに母艦への自動帰還を命じた。


 コックピットのハッチが開くと、先ほど俺を突き飛ばした女性が

立っていた。

「 大佐、何ですか今日の戦いぶりは、まあいいです。200機撃墜

 おめでとうございます。 」


 身の上話を正直に話していいものか迷ったが、気狂い扱いされて

病院送りになるのは嫌である。ここは調子を合わせて様子を窺うこと

にした。


『 えーと君は誰だっけ、すまんがコックピットで頭を打ち付けた

 せいか何も思い出せないんだ 』

 俺は病室に連れられて、体中くまなく検査され、何時間も質問を

受け続けた。結果、長年にわたる戦闘によるストレスの蓄積による

心的記憶障害という診断になった。



「 本当に何も覚えていないのですね。あなたは、月軌道外縁防衛

 艦隊リックアーチャーズの伝説的メタルコフィン乗り、ザイオン

 東郷です。そして私はあなたの直属の部下のナターシャ・エルク」

 そう言って涙目で俺に抱きつく。

 どうやらただの直属の部下というだけの関係ではなさそうだ。

 どうりで平気で裸にしたり、突き飛ばしたりできる訳だ。

 彼女の気持ちを考え俺も軽くハグする。



 俺は次の日からリハビリ名目で休職扱いとなった。幸いな事に彼ら

の言語体系はエルトリア語にかなり近く、初見でなんとなく彼らの

文字は理解はできた。彼らの端末から彼らの世界の情報を学んでいく。


 彼らの母星の名前は惑星シルフィー、ジェイコブヤコブが言っていた

アケメネス人の強敵認定候補の最前列に名前が挙がっていた星だ。

惑星シルフィーは100年前に画期的なプロント動力装置が発明され

彼らの太陽系の一番遠い星まで1年ほどで航行できるようになり、

各惑星でレアメタルやエネルギー資源を求めて植民地化が進められて

いる。水や酸素は惑星冠部の氷を溶かし供給するテラフォーミング

技術が使用されているようだ。


 惑星シルフィーはいくつかの国家群に分かれており、30年前に大きな

世界大戦があった。大戦後、セブンアイズと呼ばれる7人の有力

な軍閥が協力してこの世界の平和維持に努めている。セブンアイズで

一番有力な軍閥の指導者エルナン・ピサロ、俺の直属の上司らしい

のだが、という人物が掌握しているのが、母星防衛を目的とするシルフィー

最強の艦隊である月軌道外縁防衛艦隊リックアーチャーズである。


 前世界大戦の混乱で母星の統制が弱体化したため、各惑星は大幅な

自治権を獲得するに至った。中でも惑星メタニウスはほぼ治外法権化

し、セブンアイズがすでに介入できなくなっている。逆に、一番埋蔵

資源が豊富な惑星マルニウスはセブンアイズの締め付けが厳しく、

現地自治政府との対立が激化している。これらの混乱に乗じ宇宙航路

に出没する海賊どもを退治するのがザイオン東郷の任務だったらしい。


 


 2か月間のリハビリ休養という名目の情報収集を終え、俺は情報局

への転属願いを提出した。


 俺の部屋の外で、ナターシャと俺のお目付け役のピサロの部下が

話しているのが聞こえて来た。


「 ええ、あの時刻大佐の機体はビームライフルを発射していませんで

  した。それに自動回避システムも停止していたようです。」


「 では、どうして敵が倒されたのです? 」


「 結局のところ、解析は最終的に不能ということになりました。

  もしかしたら、大佐は頭を強打した事により、能力者、つまり

  アーキテクチャーになった可能性があります。今後、大佐には

  常時監視がつくことになるでしょう 」


「 わかりました。私も注意しておきましょう 」




  



 





 

 

 





 


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