深夜のコンビニバイト番外編 エイプリルフールのコンビニバイト
エイプリルフールは過ぎました。
番外編を二話書いたと言っても信じてくれるはずですね。活動報告してきます。
4月1日、エイプリルフール。
この日はなんでも嘘をついていい日だ。
副店長となった僕は店長の代わりに夜担当。店長の張山さんは昼を担当している。
張山さんよく店長のこと諦めたな。
「やだやだ!いくいく!俺もいく!やだやだ!店長行かないでくれ!やだやだ!」
店長は、張山さんの肩に両手をずしっと置いた。
「張山君にしか頼めないんだよ。こんな事を頼めるのは副店長の張山君しか...いないんだ」
「俺にしか頼めない...って事は、俺は店長の一番の...親友?俺が店長の一番の大事な人?...そんなの、やるしかないじゃないか。そんな事...言われたら。帰ってきたら、ベッドを温めて待ってるからさ。その硬く男らしい腕で俺を抱きしめてくれよな」
ゆかりさんに聞いた話だけど、後後半酷く捏造されてる気がするけどこういうわけで張山さんは折れていつか店長が帰ってくると信じて店長の座を守っている。
ピロリロピロリロ。
「いらっしゃいま...あぁ、魔王さん、お久しぶりです」
「おう!お久しぶりだなムラオ!...じゃなくて坊主」
「何やってんだマック」
思いっきり墓穴を掘ったマックは、魔王がいつもつけている仮面を取り微笑んだ。
「おいおいおい!ムラオ何言ってんだよ?今日はエイプリルフールだぜ!プププ!そんな事も知らねえのかよ。軽いジョークだよジョーク」
こいつはエイプリルフールをハロウィンか何かと勘違いしてんじゃないのか。
魔王の格好をして現れたマックは、俺を馬鹿にするように口に手を当てて笑っていた。
「今何時か確認してみろよ」
「へぇ?何時ってそりゃ」
コンビニの時計を見て愕然とするマック。
現在深夜0時15分。
昨日のエイプリルフールはとっくに終わっていたのだった。
「嘘だと言って...俺めちゃくちゃ恥ずかしい奴じゃん...ただのコスプレしてきた奴じゃん...1日に必死に鉄工所でこれ作ってワクワクして現れたっていうのに」
「相変わらず馬鹿すぎるな」
ピロリロピロリロ。
「よぉ、坊主」
おっと、今度は本物が来たようだ。
いや...本物だよな。
「久々ですね魔王さん」
「お、なんだ勇者も来ていたと言うのか。今日はカツサンドを買いに来たのだ」
カツサンドか。本物だった。
「シェリィさんはいないんですか?」
「今日は仕事だ。それより坊主」
ウキウキしながら魔王はカツサンドを大量にカゴに詰め、おいおい、お金そんなにないだろと呆れる俺の前に大量の札束をバンと置いた。
「な、どこでこんな札束を...」
驚く俺を尻目に腰に手を当てて、
「フハハハハハフハハハハハ!フーッハハハ」
いかにも魔王らしく高笑いをする魔王。
なんだと...嘘だろこのお金。
ペラっとめくってみると、1枚目の一万円札以外は全部新聞紙だった。
本当に嘘だった。
というか、犯罪だった普通に。
おい今日魔王をこんなになるまで放っておいた奴は誰だ。保護者がいないととんでもないことするなこの人。
「バレてしまっては仕方ないな!ネタバラシと行こうか...プププ実は今日はエイプリルフールと言ってな!嘘をついても良い日なのだ!」
「あんたもかい」
「魔王...時間を見てみろ」
マック、お前はシリアスな顔でそのセリフを言えるような奴じゃないだろ。
「む、時間...」
「とっくに四月一日は過ぎているんだよ馬鹿め!!」
そっくりそのまま自分に言い聞かせろ馬鹿め。
「なんだと...」
ガシャンと魔王は膝をついた。
「我は四月一日の朝、山田にエイプリルフールの事を聞いた。我も何か坊主に仕掛けたいと思ってな。そこで、自動販売機の下に落ちてきた一万円札を手にした際にこの計画を思いつき、ゴミ箱から新聞紙をかき集め、公園の砂場に埋まっていた錆びたハサミで本日ちょきちょき頑張ったのだ」
心意気は買うが、偽札で物を買おうとしないでくれ。冷や汗が出たぞ。
魔王も勇者も相変わらず、僕に絡んでくる深夜のコンビニバイト。頭が痛いよ。
「俺は大親友のムラオがびっくりすると思ってだな!」
「貴様、我の格好で現れて坊主の我に対する評価を下げようとしたんじゃないのか。汚いぞ!」
2人は顔を付き合わせて喧嘩をしていた。
全くこの2人は相変わらずだな...。
「...あははは!何してんだよ2人して...馬鹿だなぁ」
だが俺は、たまに遊びに来るこの2人に、毎回笑わせてもらっている。四月馬鹿とはこの事だ。
魔王と勇者は顔を見合わせた後俺につられたように笑い始めた。
深夜のコンビニは、相変わらず賑やかだ。
「ムラオ、変わったな」
勇者マックは、静かに微笑んだ。
本日も読んで下さりありがとうございます。
村松君元気にやってんなぁって思いながら見てください。