一夜漬け君
作者は英語が苦手でした。なので間違っている奴があるかもしれません。
今日は駅のホームにやってきました。地縛霊です。(きっと、忘れられているであろう設定)
で、朝のさわやかな駅のホーム、様々な人がいて退屈しそうにないって思い、気分も高揚してふわついてたのです。その結果、どこかで見たような制服に身を包み、陰鬱な空気を醸し出しながら何やらぶつぶつ言っている男子を見つけました。
さわやかな空気が台無しだよ!
目には隈ができ、うつむき加減に顔を伏せているので黒いオーラがすごい。こんなさわやかな空気の中でこんなに暗くなれるのはもはや才能なんじゃあなかろうか……
よく見たらこの男子が来ている制服、真面目君とその友人のものと同じだなぁ、なんてことを考えながら僕はそいつに近づいて行った。
「小テスト……英単語……覚えたはず……一夜漬けで」
そのオーラは一夜漬けのせいかよっ!
……でも一夜漬けでここまで追い込まれるとか面白いな。よし、命名! 一夜漬け君!
「ああ、でも不安だ……復習……しとこう」
一夜漬け君が復習を始めるようなので電車が来るまで見ておこうと思います。
「guilty……罪……罪……罪を裁く呪文」
違うっ! どうしてそうなった!? 確かに漫画とかでギルティって言って断罪するようなものも見かけるけども、意味としては違う!
「quote……は……四分の一」
それはクオーター!
「harassは……変態」
言いたいことは分かるけど違っ!
「……変態……変態行為……変態行為をして悩ます……悩ます」
と思ったらまさかの正解!? 『悩ます』はあってるけどそこに至る過程が最悪かあああ!!
「adapt…………なんだっけ?」
忘れてんじゃあねぇーかぁああ!
「こんなだから英語には……適応できない……あっ! 適応する、だ」
思い出し方ぇ……
「passion……パッション……パッション……パッション…パッション……パッション」
何!? 急に同じ言葉繰り返し出したよ、怖い!
「もっと、もっとだ! 熱くなれ! 情・熱!」
覚え方それでいいのか……? あと急なテンションの上昇についていけないよ……
「fare……fee……money……fine……」
テンション急に戻ったな、オイ!
料金、お金、罰金、のように少し意味に違いのある単語が並んだな……間違えそうだ。
「…………………金」
まとめたあああああ!? ざっくりしすぎだろうがああああ!
「summon……召喚……ファンタジー……ゲーム……怪物……はっ! 違う違う」
連想ゲームで変な方に逸れかかってるよ? まあ、持ち直したけれど……
「召喚……呼び出し……」
そう! それだ!
「職員室……濡れ衣……生徒指導室……冤罪……校長室……孤立無援」
ちょっと待てどうなってるの? 一夜漬け君の学校生活! 連想ゲームが不穏なんだけども……そしてどんどん状況が悪くなってるけども……
「はっ………夢オチ」
寝てたぁああ!?
「summonは……夢オチ」
変なとこに着地したぁーー
「arbitrary……」
うわっ、難しい単語が出るもんだなぁ……
「恣意的な」
それが分かるならほかの単語も分かるだろうが!!
「絶対……使わない……だから逆に頭に入ったやつ」
あ る あ る だけども!!
「surrender……」
うーん発音微妙だなぁ……
「細身の」
やっぱりか……つづり違うから! 別の単語だから!
「細い人が……屈する……オークなどに……」
ア ウ ト ォ !!
ダメすぎるだろその覚え方はぁ!!!
「だから……エロくはならない」
失礼すぎるだろ!! 覚え方最悪じゃねーか!!
様々な衝撃を残して電車に乗り込んでいった一夜漬け君を見送り僕は思う……
一夜漬けすると逆に脳が変な覚え方するんじゃあないのか? だからあんなことを口走るようになるのか……恐ろしい!!
生前一夜漬けをしていなかった過去の自分に拍手を送るのだった。
一夜漬け、ダメ、ゼッタイ