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僕のパーティ編成(3)

ヤバい。ウーラさんにセクハラしてたことに気付かれた。


「酒も入ってとらんでこの所業。先が思いやられるのぅ…」


ベレンの眼と、言葉が痛い。


ヤバい。どこから聞かれてたんだろう。


思いだす。


確か終盤に『おだいじに指が』どうこうとか言ってた気がする。


致命的だな。


最後はウーラさんもちょっと会話を楽しんでくれていた。表面上は。

他人の部下に接待させてるとか、そんな絵だったろうか。

普通にイチャイチャしてるように見えたかもしれない。


それはそれでヤバいな。


スーミィがいなくて良かった…と思いたいところだが、

僕がスーミィのパンチで失神してる間に、スーミィと女性陣は親睦を深めている可能性がある。

要するに僕のアダルティな会話内容がスーミィに筒抜けになるということだ。


やってしまったことは仕方ない。

ここは下手に弁明するよりも、流してしまった方が良いだろう。

セクハラの印象を薄くする作戦だ。



「あ、注文決まったの?」


僕は気付かなかったフリをするフリをして、会話のステージを先に進める。



「ワザとらしいのぅ…」


「ワザとらしいですわ…」


「ワザとらしい…」


お前ら、3人そろってジト目とか止めろよ。

いつスーミィに習ったんだよ。

あとベレン、オッサンがジト目とかマスターしてどうするんだ。


「じゃ、注文かな」


僕は小さく手を挙げて女給さんを呼ぶ


うむ。完璧だ。

セクハラ疑惑は流せたな。

ウーラさんへのセクハラをほじくり返して得をする人間は一人も居ない。


僕は、非難されたら面倒だから嫌。


リコとヴィーも敬愛する僕を非難しなきゃならないから嫌。


ベレンは、男だしセクハラしたくなる気持ちが分かるから素直に僕を非難できない。

でも擁護すると二人に怒られるから立ち位置が難しい。なので嫌。


ウーラさんは護衛モードの顔に戻っているが、僕に見せる表情は段違いに和らいだ。


『姫様が獲得しようとする人材』から『人材かつ見知った異性』にステップアップできた感じかな。

ヴィーやリコと違い、真剣に会話したし、僕の下ネタがただのセクハラじゃないって分かってくれたんだと思う。


さっきのは一見セクハラだが、強度の高い会話で相手の心に届くための技術だ。(ハル視点)

先ず好感度の有無が分かる。ウーラさんは特に僕のことが嫌いじゃ無かったらしい。

まぁ子供だしね。あとは戦う技術はあるから、一応相手にしてくれている。

話に乗ってくれたのは男性への免疫が少ないか、身の回りに楽しい男性が少なかったからだろう。

とか勝手に分析するのはダメだな。根拠無いし。


「僕はカーヴェでいいかな。ウーラさん甘いの大丈夫?」


「苦手ではありませんよ。」


「じゃ。砂糖入り2つ。みんなは?」


「カフィーですわ」


「カーヴェ。砂糖多めでな。あとトゥルンバ2つじゃ」


「カッフェ」


女給さんはオーダーを取ると静かに歩み去る。


「あれ? ヴィーとリコはコーヒーだけ?」


「いけませんの?」


棘がある人と、


「なんか、食べる気無くなっちゃった」


精神的にダメージ受けてる人。


「儂は疲れたし甘い物じゃ。早く来んかのぉ…」


ベレンは虫歯にならないか心配だ…。




「では、改めまして。自己紹介でもしようか」


注文が来る前に自己紹介だ!

流石パーティリーダー。時間の使い方が抜け目ない。


「ヴィクトリア・フォン・アインハイトですわ。統一帝国の第4皇女で剣と魔法が使えます。特技はありませんわ」


ヴィーが少しだけ自信のある表情を見せる。

剣と魔法全般の力量に自信があるのだろう。


ウーラさんが続く


「ウーラと申します。短剣と探索魔法,付与魔法など。特技は護衛です。」


軽く顎を引いて目礼するウーラさん。

護衛、と発音する時空気がピリッと張りつめた。

具体的に何ができるのか判らないけど…。


「ベレンじゃ。帝国の貿易都市から来た。実家は工房でな。専門は機工じゃ。鍛冶、魔工、錬金はそれなりかのぅ。

戦闘は前衛じゃな。銃も使えるが重い得物でぶん殴る方が性に合っとる。爆弾は好きじゃ。なので射撃が苦手な駆逐戦士と思ってもらえば良い。」


ドワーフだけあって背が低いから、後ろから撃ったり魔法飛ばしたりするには射線が通って便利だな。

盾にならないってデメリットもあるけど。



「リコです!リコ・セラーノです!」


お、リコちょっと元気になった。自己紹介が気分転換になったか。


「前衛です!重鎧と盾です!身体強化と回復魔法には自信があります!」


多分、この5人の中で最強なのはリコだ。


リコが魔法を弾く装備か技術を手に入れたら僕も勝てない気がする。


彼女は回復魔法の中でも習得が困難な再生魔法が使える。

先程、僕の内臓を破壊し、元通りに治して見せた。

あんなこと普通はできない。

そんな特殊な回復魔法を使っておきながら、特に疲弊した様子も無い。


壊れない盾。彼女を一言で形容すればそうなる。

あの様子だと身体強化の腕前も高いハズだ。

高機動する重装甲で壊れない盾か。凄いな。


「先程の拳と回復魔法は素晴らしかった。

あの夜、リコに会えて本当に良かったと思う。

僕も期待に応えられるよう励みます。よろしくお願いするね」


リコの腕を褒め、素直に謝意を表してみた。

彼女には濁りが無い。信頼できると思う。


「あ…ありがとうございましゅ……」


リコは褒められてカ~~っと頬を染める。

もにゅもにゅと言い淀み、そのまま俯いてしまった。


可愛いなぁ。


うまく返事ができなくて、僕が呆れてるんじゃないか?とチラチラ上目遣いでこちらを見るのもたまらない。


よしよし、と少し強めに栗毛のポニーテール頭を撫でてやる。


「うぅー……」


ますます赤くなって縮こまりながら、撫でられるのを拒否しないリコ。

いやぁ、可愛いな。

なんか愛玩動物っぽいし、いつまででも撫でられていられそうだ。


だが。いつまでも撫でてはいられない。

自己紹介は一巡し僕を残すのみとなった。

ふふふ。


撫でる手を止めて、僕は口を開く。


「では、最後になりましたが…」


待たせたな!


パーティリーダーである僕の自己紹介!


色んな意味でドン引きさせてやる!覚悟は良いか!


皆が注視しているのを確認し、僕が…


「僕はシャ… 「お待たせいたしました」」



僕が自己紹介を始めようとしたその時。


女給さんが絶妙に割って入り、コーヒーを配り始めた。















お読みいただきありがとうございます。


コーヒーって各地で飲み方が違うので興味深いです。

皆さんには思い出に残っているコーヒーってありますか?


私の思い出のコーヒーは、学生時代のスペイン旅行で。

マドリッドの、どこか小さな広場のバルで、深夜に飲んだカフェです。

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